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しおりを挟む「さてキャロライン。半魔となった人間よ」
「はい?」
「我はしばらく離れる。だが念ずればどこに居ようとお前の声は我に届く。何かあれば呼ぶがいい。ではな」
「あちょっ! ちょっと待って……消えた……はぁ……本当に風のような悪魔ね」
一度瞬きをした瞬間にカスケードは消えてしまった。
契約したはいいものの、事の詳細は殆ど教えて貰えずじまいだった。
私としてみれば胸を揉まれ、心臓を鷲掴みにされて知らず知らずに半魔へと仕立てあげられてしまっただけのように感じる。
これで魔法を多用する魔法士であれば、力の変化に気付いたかもしれません。
しかし私は残念な事に、貴族の嗜み程度の魔法知識と技術しか持ち合わせておりません。
「どうしたものかしら……困ったわ。そうだ! 殿下は夢見の力が強まったとも言っていたわね。試してみましょう!」
半信半疑ではあったけれど、あの悪魔が嘘を言うとは思えないし、何よりやはり好奇心が強く出る。
魔法の方はからっきしですが、夢見の力は私のアイデンティティのようなもの。
「自分の未来でも見てみようかしら」
そう呟くと私は見事な作りの椅子に腰掛け、長い背もたれに身を預けてからそっと目を閉じた。
意識を私自身に集中させていく。
すると——。
『な、何これ……うぐ……』
結論から言うと、私の未来は見えた。
だがしかし今までのような一つの未来では無く、無数の未来が重なって同時進行しているような感覚。
景色が、人が、声が。
全てがダブりごちゃ混ぜになっている。
視界がぐらぐらと揺れ、凄まじい吐き気と頭痛に襲われた。
私自身や人が分裂し、数十人に増えたと思えばその中の一人がまた更に分裂していく様は異様という言葉が相応しい。
そして全体的に薄い霧のようなものが満ちていて、非常に不気味だった。
『も、むり……!』
結局何も分からないままに意識を外側に向けると、無事に戻る事が出来た。
漠然とした思考の中で未来を見た結果、様々な分岐、ルートの私が見えてしまったという感じだろうか。
「いった……!」
こめかみの辺りがズキリと痛み、喉がカラカラに乾いている。
水差しに入っていた水を浴びるように飲み干すと、何度か大きく深呼吸して気持ちを落ち着ける。
酩酊感のようなダルさと気持ち悪さがすこし残るけれど、耐えられないほどじゃありません。
そんな時、客間の扉がノックされ、フィエルテの声が聞こえてきた。
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