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しおりを挟む大臣が言うには、シェーアがケーニッヒの前に姿を現したのと同じ頃に先王オベイロンが床に伏せたそうだ。
さらにシェーアの周囲で様々な物資の動きがあったり、若い貴族達がシェーアを支持していたりと不可解な動きが多く見られるのだとか。
ドリアム王国に潜伏させている諜報部から上がってきた情報なので、確かな話だと言う。
でもなぜ諜報機関をドリアム王国に潜伏させているのか、私にはそれがとても気になっていた。
「大臣の言う事は分かった。ドリアムに諜報部を送っているのは知っていたが……やはりお前は仕事が出来る男だな」
「は、お褒めに預かり恐悦至極にございます」
「して、どう動く?」
「今は特に。即位したケーニッヒ王とシェーア殿下の動き次第という所でしょうか」
「分かった。だが大臣よ、なぜ先にこの我に報告を上げなかった?」
「は。不確かな情報が多かった為、確定させるまではと密にしておりました。申し訳ございません」
「なるほどな。大臣よ、我はお前を信頼している。戦争を終えたばかりの我が国も穏やかでは無い、不確かな情報を密にするのは良いが扱いには厳重な注意を払うよう、とく留意せよ」
「は、仰せのままに」
皇帝は小さく鼻を鳴らし、鋭い眼光そのままに口を閉ざしてしまった。
場の空気は非常にピリピリとしていて、本当になんでこの私がこの場にいるのかが分かりません。
「シェーア王妃の動向は今後注視していくとして、大臣」
「はい。では次の議題へ。キャロライン特別顧問殿にお伺いしたい」
「は、はいっ、何でしょうか!」
「詳細は伏せますがこの所、ドリアム王国と国境付近にて良くない噂が流れております。もっぱら貴女が話題の中心です」
「え……」
大臣が伏し目がちに話すのは、噂の内容を知っているからで。
先程フィエルテが話す事では無いと言った手前、きちんと伏せてくれているのだろう。
脳裏に舞踏会の光景が浮かび、私は悔しさに唇をキュッと噛み締めた。
「ホーネット辺境伯の尽力でさほど広まってはおりませんが、あまり良い流れではありません。人の噂も七十五日とは言いますが……」
「断言させていただきますが、全て根も葉もないお話でございます」
「疑っているわけではありません。確かなのですね?」
「もちろんです。全てでっち上げられた身も蓋もない事でございます」
「分かりました。であればこの話は内々で処理させていただきます。下手に動けば国交問題になりますので」
「申し訳ございません、ありがとうございます」
「良かったね。キャロライン」
「はい。私の良くない噂が伝播すれば領内の民たちに不安を抱かせてしまいます。それだけは……ごめんこうむりたいですわ」
シェーアが何を考えているのは分かりませんが、彼女のした事は決して許される事ではない。
ただ、彼女の立ち位置の方が上。
大公令嬢から王妃にまで登り詰めたシェーア。
私を蹴落とす事に何の意味があったのか、今でははっきりと分かる。
愚かなケーニッヒを手中に納め、自分が影から国を牛耳り、思うがままにする。
だけどそれが分かった所で……私には何の力もありません。
復讐したいとは微塵も思いませんし、そんな事をしても時間は巻戻りませんし、ね。
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