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しおりを挟む「これは諜報部からの報告なのだが……ドリアム王国では謎の怪死事件が多発している。そしてその被害者は崩御された先王を支持していた国の幹部達だ。不思議な事に一般人には全く被害が無い。驚くべき事に被害者の中にはあの剣豪ライオネル公爵も含まれているそうだ」
「何だと!?」
「単騎で約五百人の蛮族と渡り合ったというあのライオネル公爵がか!」
大臣の報告に居合わせた皆が口々に驚きの言葉を述べ、場は一時騒然となった。
ライオネル公爵の武勇はドリアム王国に留まらず、このヴィーヴィル皇国にも及んでいた。
軍の名誉指南役を拝命し、伸び悩んでいた軍の実力を底上げしたという逸話や、街道を塞いでいた巨大な落石を剣一本で斬り飛ばした、などの逸話が数多く伝え聞かれていた。
そんな人物を亡きものにする手練。
私の中で真っ先に浮かんできたのはシェーアだった。
大悪魔サキュバスクイーンと、悪魔の秘宝をその身に宿しているシェーアならば簡単な事ではないのか。
現に私がカスケードに連れられてお邪魔した屋敷でも、シェーアの足元に公爵と呼ばれる方が首を落とされて転がっておりました。
となれば大臣の言う怪死事件はやはりシェーアが行ったものなのでしょうか。
「怪死事件が起きる直前にはピンク色の靄が発生するとある。立て続けに起きた怪死事件と先王の突然の崩御。これに関係性があると見るのは私だけでありましょうか」
「待ってくれ。怪死事件とシェーア王妃の関係性がまるで分からない。そして二つを結びつけるのは早計ではないのか?」
「ライオネル公爵が亡くなった際、シェーア王妃によく似た笑い声が聞こえた、という証言も取れております。確かにシェーア王妃の姿を見た者はおりませんが……」
「だろう? 声を聞いただけで犯人だと断定するのはいかがなものか。それに先王オベイロン陛下は病を患っていたそうじゃないか。病が悪化して急死したのではないのか?」
「その可能性も捨てきれませんが、シェーア王妃が犯人では無いという明確な判断材料もごさいません。少なくとも多少は噛んでいるのではないか、というのが私の見解でございます」
「しかし!」
大臣とフィエルテがお互いの意見をぶつけ合っていると、ずっと黙していた皇帝陛下がゆっくりと口を開いた。
「大臣よ。一国の王妃を疑うのだ。疑わしき事がそれなりにある、ということで良いのだな?」
「は! 勿論でございます陛下!」
「であれば述べよ」
「ははっ!」
薄く開かれた皇帝陛下の目は眼光鋭く大臣を貫いていた。
しかしそれでも大臣の態度は変わらず、強い意志の込められた瞳の輝きをしていた、
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