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しおりを挟む鉱山都市レイルは人口十五万人ほどの小規模な都市であり、その名の通り鉱山における開発や採掘などを経済の主とする都市である。
鉱石や魔晶石の加工場や、アクセサリー、武器防具などの製造元が多く存在する場所でもある。
そんな都市の中を私達は今進んでいた。
進む先は病院だ。
救助された人達を乗せた幌馬車と救助隊が先頭を行き、後方には私達の乗る馬車と騎士達がいた。
重苦しい雰囲気を纏う救助隊には、道端から家屋から店先から所謂街中から不安げな視線が送られている。
救助隊の最後尾には、死者が出たと知らせる為の旗が掲げられていた。
旗は黒く塗り潰されており、中央には赤い十字架が描かれている。
黒は死の先にある暗黒を示し、赤は血液を表している。
救助した人々を病院に送り届けた後、私達はレイルの代表である都知事に会う為に中央都庁へと向かったのだった。
◇◆◇
中央都庁の中に入ると職員達は私達を待っていたようで、実に迅速な対応を見せてくれた。
本来中央都庁には鉱山を視察した後に立ち寄る予定だったので、この対応は当たり前と言えば当たり前なのだけれど。
私とフィエルテと大臣の三人は応接室へと案内され、中には都知事と二人の男性が緊張した面持ちで立って待っていた。
私達三人がソファへ腰を下ろし、フィエルテが座るように言葉を掛けると都知事ら三人は非常に硬い動きで腰を下ろした。
「こ、こんな雨の中、御足労誠にありがとうございます。そしてご無事で何よりでございます」
「あぁ。楽にしてくれたまえ。こちらの女性はキャロライン・リーブスランド。伯爵にして僕の特別顧問だ、よろしく頼むよ」
「「「は!」」」
手差しで紹介を受けた私は瞼を伏せ、ゆっくりと礼をした。
都知事らは少しだけ怪訝な色を見せたけれど、フィエルテが苦々しく口を開いた為にその色はすぐに掻き消えた。
「来訪の理由は先程起きた地滑りの件だ。あの事故により我らの視察は断念、それは把握しているだろう?」
「はい。殿下が駆け付けて頂き、救助に携わって頂けた事も把握しております……殿下のお手を煩わせてしまい、誠に申し訳ございません……」
「構わないさ。我々があそこ……第八採掘集落に出向いた事は貴殿も知っていたはずだな?」
「は! 勿論把握しておりました! ですので速やかに救助隊を編成し、大臣殿にお預けさせて頂いた次第でございます!」
「なるほど、あれは貴殿の采配によるものか。仕事が早くて結構」
「お褒めに預かり恐悦至極にございます。レイルでは山仕事と山の事故は切っても切れぬ関係ゆえ、常に迅速に救助に向かえるよう訓練しておりました」
「そうか。他の集落の様子を見に行った者はいるか?」
「はい。屈曲な鉱山夫と衛兵を二十人規模で纏め、各集落へ派遣しております。地滑りが起きた第八採掘集落に一番近い第六採掘集落は……崖崩れと落石により壊滅的な被害を受けております……」
「なんだと……!」
「そんな……」
悲痛な面持ちの都知事は視線を膝に落とし、悔しそうに歯を噛み締めている。
フィエルテも他の被害を聞き、愕然としていた。
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