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しおりを挟む「こ、これ……は……」
「ひどい……」
命からがら落石から逃れ、地滑りの恐怖に怯えながらも私達は鉱夫達の集落に辿り着いた。
けれど、そこに広がっていたのは集落を形成していた家屋の残骸と、それらを飲み込むかのように流れ出た山肌だった。
私が予想した通り、地滑りは起きた。
私達が助かったのは偶然だ。
崩れた山肌は集落の方向へ流れ出て、そこにあった営みや人々全てを飲み込んでしまったのだった。
「総員直ちに生存者の救出に当たれ! くそっ! 何でこうなる!」
「「「は!」」」
雨風の勢いは未だ健在、そんな中でフィエルテはずぶ濡れになるのを承知で外へ飛びだし、騎士達に指示を飛ばした。
騎士達も威勢の良い返事を発し、散り散りになって生存者を探し始めた。
「私も手伝いますわ!」
「老骨ながら私めも!」
私と大臣もフィエルテの後を追って外へ飛びだして、そのままの足で地面を走った。
家屋は当然ながら全て崩壊してしまっている。
根っこごと流された木々が至る所に乱立し、大小の岩や茂みに紛れて家屋の柱や屋根が点在していた。
「誰か! 返事をして下さいまし! お願いだから! お願い!!」
私は瓦礫の中から手頃な木の板を引き抜き、大声を上げながら瓦礫と土砂を掘り起こしていった。
目元からは大粒の涙が溢れ出すが、顔面に打付ける雨によって洗い流されていく。
「生存者がいたぞー! 手を貸してくれー!」
騎士の一人が手を大きく振りながら大声を上げた。
その声に応じて三人の騎士が集まり、土砂の中から一人の男性が引き上げられた。
ぐったりとして身動きひとつしないけれど、きっと生きているに違いない。
「大臣! 騎士を連れてレイルに行き応援を呼んできてくれ! すぐにだ!」
「しかし! ここは危険です!」
「いいから行くんだ! 頼む!」
「分かりました! では殿下はこれを持っていて下さい!」
大臣は苦渋の表情で頷き、フィエルテの手に小ぶりの魔晶石を手渡した。
「これは?」
「念の為にと持ってきた防御魔法が込められた魔晶石です! 何かあればそれを使って下さい!」
「分かった! 恩に着る! では頼むぞ!」
「は! 殿下もご無事で! そこのお前! 一緒に来るんだ!」
大臣としては、こんな危険な場所にフィエルテを置いていく事など有り得ないという思いなのだろう。
彼の浮かべる表情から、そんな事は安易に想像がつく。
しかし皇太子としての命令に背ける訳もなく、大臣は騎士を連れ、馬に股がって山を駆け下りて行ったのだった。
集落の広さは約五ヘクタールであり、鉱夫や鉱山関係者が少なくとも百人はいると聞いていた。
対してこちらは十人程度であり、採掘道具なども持っていない。
それで救出活動を行っているのだから、どう考えても無茶な話ですれど、手を止めるワケにはいかないのです。
新調した服を泥まみれにしながら、私はひたすら声を出し、手当り次第に掘り返して行ったのだった。
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