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しおりを挟むフィエルテに案内されたのは城の一画にあるゲストスペースだった。
ゲストスペースと言っても街中にあるようなものではなく、床に敷かれたカーペットから椅子、アメニティに至るまでが最高級な仕立てであり、豪華の一言に尽きた。
中には皇家が使用しているようなアメニティもあるとフィエルテは言っていた。
「凄いわ……貧乏貴族の我が家とは大違い。当たり前よね、ここは皇族が住まうお城だもの」
食事もこの部屋で取れるらしく、私のお夕飯はフィエルテが給仕に命じて持って来てくれるそうだ。
食事が来るまで手持ち無沙汰なので、せっかくだからバスルームを使わせてもらおうかしら。
脱衣所に移動した私は借りていたローブを脱ぎ、心を踊らせながらバスルームの扉を開けた。
「わぁ……!」
バスルームは大理石のブロックが敷き詰められ、白を基調としたカラーリングで纏められている。
入って正面には珍しい綺麗な姿鏡が据えられていて、私の裸体を映し出していた。
シャワーはお湯と水を混ぜて温度調節をするもので、これは私の屋敷にある物とあまり変わりがない。
シャワーの水栓を捻るとすぐさまお湯が流れ出てくるが、このままでは少し熱すぎるので水を混ぜて適温に調節し、肩口からお湯を掛け流していった。
壁に掛けられている布を手に取り、ボディソープを擦り付けるとキメ細かい泡がモコモコと生まれてくる。
布を肌に擦り合わせて垢を落とし、最後に頭を洗ってから体全体を流していく。
「ふぅ……きもち……」
ソープの香り高い香りに包まれながら、至福の吐息を吐き出してバスルームから脱衣場に出た。
上質なタオルで体に付いた水滴を拭き取り、バスローブを身にまとって室内へと戻る。
すると待っていたかのように扉がノックされ、私が出ると料理の乗ったワゴンを持った給仕が立っていた。
「お待たせ致しました。ご夕食をお持ち致しました」
「ありがとう。中へどうぞ」
バスローブの胸元を押さえながら私は給仕を中に招き入れる。
給仕はテーブルの上に次々と料理を乗せていき、メイン料理と思われる皿の上には純銀で出来たクロッシュが被せられていた。
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