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しおりを挟む「でも特別顧問って……一体何をすればいいのかしら?」
「そうだなぁ……僕に色々と意見したり、夢で見た事を教えてくれたり、とかかな?」
「貴方、思い付きで言ったわね?」
「もちろん、でないと君は普通に話してくれないだろう?」
「当たり前よ。今ですら緊張して口が乾気っぱなしなんですわよ?」
「あはは! いい傾向じゃないか。よろしく頼むよ? 特別顧問さん」
「はいはい。これでいいのかしら?」
「上出来だ。君は服が乾くまでここに居るといい。僕は君の役職を申請する為にちょっと出てくるから」
「分かったわ」
「あ、それと。話が通ったらなんだけど、君にも一緒に炭坑へ来て欲しいんだ。それじゃね!」
「へ!? あちょっと!」
フィエルテは扉をくぐる途中今決めたであろう話を言い放ち、私の返事を聞く前にそのまま外へと出ていってしまった。
「行ってしまいましたわ……本当に強引なお方ね」
あの奔放で強引な気質は、きっと皇子という存在なら誰しも持ち合わせるモノなのだろうと私は一人残された貴賓室で思った。
しかし私の中で、一つの心配事が浮かび上がる。
なぜ彼がそこまで私に目をかけるのかは知らないけれど、共に炭坑へ行く事になれば……。
「お洋服……どうしましょう」
夢で見た炭坑は土が剥き出しの場所だった。
そんな所にドレスを着て行く訳にはいかないだろうし、やはりブリーチズのようなズボンで行くべきなのかしら?
それともタイツかしら?
視察は四日後なので時間的余裕はまだまだある。
フィエルテに色々と聞いてみる事にしましょう。
ドレスが乾くまでまだかかるでしょうし……外は雨で散歩も無理。
「はぁ……暇ですわね」
暖炉の火をじっと眺めていると、泣き喚いた疲れが今頃来たのか急激な眠気の波が押し寄せてきた。
うとうとする瞼を頑張って持ち上げて、手に持っていたティーカップをサイドテーブルに置いてあるソーサーへ乗せた。
そして扉の前に控えている使用人へ声を掛けた。
「あの、少しおやすみさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい、問題ございません。ブランケットをお持ち致しますね」
「ありがとうございます」
私のお願いを快く受け入れてくれた使用人は入口とは別の扉を抜け、数分後に一目で上質と分かるブランケットを手に戻って来た。
ブランケットを受け取った私はその身を包み、静かな眠りへと落ちていったのだった。
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