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3巻
3-2
しおりを挟む「どうかしましたか?」
俺が門の前で立ち尽くしていると門番が怪訝な顔をして尋ねてきた。地図を持って口を開けながら見上げている人が門の前にいたらそりゃ怪しむ。無理もない。
「はい、自由冒険組合から依頼を受けて来ましたフィガロと申します。ご依頼の件で伯爵様に御目通りをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「なるほど。フィガロさんですね……ちょっと待っててください」
門番は門のそばにある小型の箱に向けて何かを喋っている。あれはアルウィン家にもあった箱形の通信用魔道具で、短距離の即時通信を可能にする物だ。原理はウィスパーリングと同じだ。
「お入りください。ご案内いたします」
「はい、お手数おかけしますがよろしくお願いいたします」
中の人物に了承を得たのだろう。門番は門を開け、俺がくぐるとすぐに施錠して元の位置へ戻った。
屋敷の方へ目を向けると、伯爵家の執事が屋敷からこちらに歩いてくるのが見えた。
執事に屋敷の中へと案内され、ラウンジのソファへと通された。
「こちらでお待ちください」
室内は白と茶色で統一されており、家具や階段など、木で出来た物は全て無垢材で構成されていて主人のこだわりを感じさせる。ソファはやや柔らかめに作られており、長く座っていても疲れを感じさせない、上質な一品だという事が分かる。
「お待たせして申し訳ないフィガロ殿! ちょっとバタバタしていたものでな。おい! 何をしている! フィガロ殿にお茶も出さんのか!」
おかしい。
なんだか俺を知っているような口ぶりだ。
伯爵であろう人物はちょび髭を生やした痩躯の男性だが、俺の記憶にはない人物だった。
自由冒険組合の、しかも十等級の相手にここまでするだろうか?
と俺が疑問に思っていたところで、メイドが紅茶を目の前のテーブルへ置いた。ふわりと漂う品のいい香りに思わず笑みがこぼれる。
「これは……カモミールの葉ですね……? とても上質な良い香りです」
「ほう! フィガロ殿は茶葉にもお詳しいか! あれほどの強さに加えてお茶を嗜む教養をお持ちとは……いやはや、うちの者が失礼いたしました」
あれほどの強さ……?
誰かと間違えているのではないだろうか。
「あ、いえ! これはたまたま!」
「ご謙遜を。いやしかしフィガロ殿、メイドの格好とは違って今日はキリッとされておりますなぁ! 本来はそちらが普段のお召し物ですかな?」
「ぶっふぉあ」
伯爵の爆弾発言に、飲もうと口に含んだ紅茶を思い切り噴き出してしまった。
今、なんと言った? メイドと言ったか?
「おやおや、大丈夫ですか? 湯気でむせられたのですか」
吹き出してしまった紅茶をメイドが丁寧に拭き取ってくれるのを見ながら、背中に変な汗が吹き出てくるのを感じた。
「い、いえ……あの、メイド、って」
「祝勝パーティの時ですよ! 我らの危機に颯爽と立ち上がり、悪魔将軍に臆しもせずに挑む勇猛果敢さ。今思い出しても惚れ惚れいたしますなぁ。ぜひうちの息子に、一度会っていただきたいものですよ。今はパートナーはいらっしゃるのですか?」
伯爵の一言一言に、汗が増していくのを感じる。
あの会場にいたのか……。
祝勝パーティには国の重鎮が多く呼ばれている、と俺についてくれたメイドのレミーが言っていたことを思い出す。
もはや、触れないで欲しい黒歴史を鷲掴みされているような気分だ。しかも未だに、俺が女だと思っているらしい。
「あ、あはは……ま、まぁそんな事もあり、ありゃんしたねえ! あははは! ほ、ほら! そんな事より私ゃあジャイアントクインビーの処理が銀貨でそれがアレでございましてですね!?」
冷静に話そうと思えば思うほど、口が離反して訳の分からない事を口走っていく。どうやら結構なメンタルブレイク具合らしい。
「はっはっは! フィガロ殿は強く可愛らしい上に、教養とユーモアもお持ちの様子。フィガロ殿に、ジャイアントクインビーの始末のような雑務はもったいない。他の冒険者にやらせますので、どうでしょう? 今晩あたりうちの息子も交えてお食事など」
この伯爵はダメだ。自由冒険組合の十等級冒険者としてじゃなく、あの時のフィガロとしか俺を見ていない。
このままでは埒が明かない。
ぐわんぐわんと揺れる視界の中で、必死に断るための言葉と言い訳を探す。
しかし俺の意思から離反した口は話すことも放棄したらしく、ただパクパクと動くのみだった。
「あの! お誘いは大変嬉しいのですが、今晩はドライゼン王に謁見しなければならないので! はい! あと冒険者としての初仕事ですので、出来ればサクッとパパッと終わらせたくですね! はい!」
必死の思いで紡ぎ出した言葉は、ドライゼン王の威を借りたなんとも中身のない言い訳だった。
「なんと……陛下との謁見がおありでしたか……それは残念です。であればぜひ別の機会にでも」
「はい、残念ですね! ははは……」
「分かりました。依頼されたお仕事を完遂しようとするそのお心意気、しかと受け止めました。おい、フィガロ殿をあの場所へご案内するんだ。くれぐれも失礼のないようにな」
なんとか伯爵から解放され、裏庭へと案内された。
裏庭も敷地に比例してかなり広く、大きな池があったり小さな果樹園のような場所も見受けられたりした。
「すごいですね」
「はい、伯爵様は庭いじりがお好きな方でして、果樹の剪定などもご自分で行っているのですよ。先ほどお出ししたハーブティーのハーブも、この庭で栽培されているのですよ?」
「そうなんですか!? 自家栽培とは凝ってますね……」
クインビーの巣まではそれなりに距離があった。無言というのも気まずいので、庭に敷かれた砂利道を歩きながら、メイドと話をしてみる。
庭に植えられた木々や草花には管理が行き届いているようだ。
しっかりとトリミングされ、緻密な計算のもと配置された美しさは、王宮の花壇にも匹敵するのではないかと思う。
「伯爵様の育てるハーブは、王宮から取り立てされるほど高品質なんです。ですがご子息様は以前お見合いの話があった際、伯爵様に庭のことなど庭師に任せればいい、と仰っていましてね。何ぶん園芸に興味のないご子息様ですから……私共としては、この素晴らしい庭を保持していきたいと思っているのですがね……血気盛んなご子息様には、あまり価値のない物と見られているのでしょうか……」
伯爵は息子と折り合いが悪いのだろうか?
王宮に取り立てられるほどのハーブを生み出す庭なら、存続させる価値はあるんじゃないだろうか。
確かに庭いじりは地味だし、若い男がやるようなイメージはない。
農園の息子なら分からないでもないが、国の重鎮とも言える伯爵の息子だ、何か思うところがあるのだろうか?
「こちらです」
世間話に花が咲きかけた頃、目的の場所に着いた。
ジャイアントクインビーの巣の周りは簡易的な柵が設置されており、不用意に立ち入る事がないように対策されていた。
巣の後ろには塀があり、塀に沿って植えられた観葉樹の幹を中心に十メートルほどの横長の巣が形成されている。
依頼を受けた時は炎で燃やしてしまえばいいと考えていたのだが、今はこの愛がこもった庭を少しでも傷付けないようにしたいと思っている。
炎で焼くのは簡単だが、炎の余波で植物がダメになる可能性もある。
ジャイアントクインビーは一メートルほどの大きさの蜂型モンスターであり、比較的どこにでも巣を作る傾向がある。
巣は大きい物で五十メートル規模の物も確認された事がある。
個体が大きいため巣も大きくなるのだが、脅威なのはジャイアントクインビーではなく、クイーンを守るオス蜂で構成される軍隊蜂の存在なのだ。
成虫になったオスの蜂は約七十センチにもなる。
オス蜂は群れでの行動を基本とし、腹部にある鋭い針を武器として敵に襲いかかる。
ただ的が大きい分、剣や盾で充分対処が可能ではある。
目の前にある巣は出来たばかりのようで、成虫の姿は見受けられるがほんの数匹程度であり、大した問題ではない。
巣の周りには伐採された跡があるので、発見当時は草や木に紛れていたのではないかと思われる。
「ある程度の被害は伯爵様も容認されております。よろしくお願いいたします」
「分かりました、少し後ろに下がっていてください」
巣の全体を視認した後、どうしようかと逡巡する。害虫駆除の基本は薬剤散布や焼却。
もし魔法で対処するのであれば広範囲に効力のある魔法が必要になってくる。虫型モンスターの弱点属性は氷と火、火を使わないのなら氷の魔法一択しかない。
記憶の中の魔法事典から氷属性の魔法を取捨選択していく。
「【フロストミスト】」
結果、選択したのは半径二十メートルに氷の霧を発生させる魔法だった。
これは氷の霧に呑まれたら最後、一気に対象を氷漬けにする魔法なのだが、今回は効果範囲をギリギリまで縮小して使用した。
イメージを強く固めれば範囲を狭める事だって可能なのだ。
霧が晴れるとそこには氷漬けになったクインビーの巣が露わになり、氷の彫像のようになっていた。巣の周辺で動く気配はない、どうやら成功のようだ。
「すごい……こんなあっという間に……」
メイドが感嘆の声を上げパチパチと小さく拍手をしてくれた。処理にかかった時間は一分ほどだが、これでもすごいと言われるのはとても気持ちが良い。
氷漬けになった巣に近寄り、背負っていた剣を巣に突き立てる。途端にそこから数条の亀裂が入り、バキバキと音を立てて巣は崩壊した。
「氷漬けになった時点で生命活動は停止しているはずですが、念のため死骸は焼却炉にでも放り込んでおいてください。あとこれが確認出来た幼虫六十匹全てです。巣が出来たてだった分、小さかったので苦労もなかったですよ」
屋敷に戻り、伯爵へ巣の処理完了の報を入れた。
砕いた巣から出てきた幼虫はメイドから籠を借りてその中に入れてある。
伯爵は床に置いた籠の中を覗き込み、幼虫の数を数えている。
「はい、確かに確認しました。ご苦労様です。しかし出来たてとはいえものの数分で片付けてしまうとは……さすが、としか言いようがありませんなぁ! はっはっは! これが報酬です。幼虫の分の追加報酬も入れてあります。受け取ってください」
「ありがとうございます。ですが氷漬けの幼虫を何に使うのです?」
「はっは! 博識なフィガロ殿でも知らぬでしょうが、蜂型のモンスターの幼虫は栄養満点、疲労回復や滋養強壮の効果があるのですよ。調理して食べたり漢方薬などにも使われたりしておるのですがね。氷漬けにするという発想はありませんでしたなぁ。氷の中に閉じ込めれば腐敗もない、実に画期的だ」
ホクホク顔の伯爵は謝礼の袋を俺に手渡して、実に衝撃的な事を言った。
虫を食べるなんていう発想は思いもよらなかったが、どこかで聞いた事もあったので、愛想笑いだけを返しておいた。
袋を開けて確認すると、依頼料と追加報酬分がしっかりと入っていた。
「よろしければどうです? 今から軽くビーワームの料理など」
「い、いえ! 興味はあるのですがこの後も予定がありますので!」
「そうですな! フィガロ殿は多忙の身、冒険者になりたてゆえ、ですかな? 応援しておりますぞ! 何か困ったことがあればすぐに言ってくだされ、私であればご助力いたしますのでな!」
「はい、ありがとうございます。では失礼します」
非常に残念そうな顔だったが、固い握手を交わすと結構あっさりと解放してくれた。
お腹は空いているが、だからと言って虫を食べる気にはなれない。
俺は伯爵の厚意に複雑な感謝を抱きながら、屋敷を後にした。
◇ ◇ ◇
伯爵家を出てすぐ、腹の虫を黙らせるために串焼き屋さんへと猛ダッシュ。
記憶に残るあの香ばしい味に、知らず知らずのうちにヨダレが出てくる。
太陽は沈みかけ、街は黄昏色に染まっていて、家路につく学生らしき集団や疲れた顔の衛兵達の姿が見受けられる。街灯にも明かりが灯り、夜の帳が降りるのももう少しといったところである。
「すいません! 串焼きください!」
「おう、いらっしゃい! 元気いいねぇ! もうすぐ店じまいだ、安くするからいっぱい買ってってくれ」
多くの店は黄昏時を過ぎると店を閉めてしまう。
遅くまでやっている食事処もあるにはあるが、そういった所はお酒処も兼ねていたりするのでイマイチ入りづらかった。
逆にトワイライトのようなお酒処は、黄昏時を過ぎてからお店が開く。
朝から働く人達と、その人達をねぎらう夜の世界。
この二つが上手に噛み合って、ランチアの街は一日中活気づいているのだ。
そして俺は、冒険者となった記念と初依頼達成のお祝いを兼ねて、串焼き屋さんで貝の串焼きと鶏肉の串焼きを一ダースずつと、果実ジュースを購入していた。
串焼き屋さんの店主がおまけとして数種類の串焼きも一本ずつつけてくれたので、代金を支払って小躍りしながら噴水広場へと赴いた。
街には一定間隔で噴水広場が設けられており、住人達の憩いの場となっている。
タルタロス武具店は夜遅くまで店を開けている、と串焼き屋さんの店主に聞いたので、少し休憩することにしたのだ。
噴水広場に辿り着いた俺は空いているベンチに腰かけ、串焼きの詰まった紙袋を広げた。
むわっとした熱気と香ばしい香りが鼻腔いっぱいに広がり、思わず涎が垂れてしまいそうになる。
「いっただっきまーす。あんぐ……んん! やっはりおいひい……染みるうー」
貝の串焼きはピリ辛の味付けになっていてあっという間に一ダースを食べ切ってしまった。
串焼きで渇いた喉を果実ジュースで潤すと、おまけでもらった串焼き達に手を伸ばし、道ゆく人々を眺めながら串焼きを口いっぱいに頬張って、一噛み一噛み堪能していく。
「平和だなぁ……」
子供連れの夫婦は噴水と戯れる子供を微笑ましく見ており、カップルと思しき冒険者はベンチに座り何やら話し込んでいる。
犬の散歩をする老人はひどく腰が曲がっており、犬の方が老人の歩幅に合わせて歩いている。
皆思い思いに道をゆき、思い思いに時間を過ごしている。
ついこの前、悪魔騒動やアンデッドの大襲撃があったとは到底思えない平和さだった。
いずれは俺がこの平和を守っていく立場になるなど、未だに実感が湧かない。
そして道ゆく人々も、噴水広場のベンチに座っている俺がそのような存在だとは、夢にも思わないだろう。
じきにフィガロという名が辺境伯として知れ渡る。
分不相応だとは思うけれど、次期国王となる前準備みたいなものなんだと思う。
「家名かぁ……どんな名前にしよう……剣の名前も決めてないのにな……ていうかそもそもシャルルと結婚したら俺の家名はランチアになるんだよな? 一時的な家名として考えれば気も楽か……どーしよ……」
平和であるのはいい事だ。
だが、戦争や冒険というバイオレンスでスリリングな世界もまた平和の裏に隠れている。
世界中至る所で戦争が起き、冒険者が命を賭してモンスターと戦い、様々な人が命を散らしている。
アルウィンは戦の家系でもあった。
ルシウス兄様やヴァルキュリア姉様だって戦っている。
優れた魔法力や知識は、何も安全なものにだけ使われるわけではないからだ。
ヴァルキュリア姉様が専門としている魔導技巧などの知識や技術は、国を守るため、発展させるだけに留まらず戦争に使われる事もある。
ヴェイロン皇国の至宝とまで言われるルシウス兄様の剣技は、戦闘方面に極振りされた力だ。
父様だって領地を守るために他貴族への牽制や腹芸など様々な争いを経験しているはずだ。
そして俺にも、アルウィン家を追放されたと言ってもその血がなくなるわけではなく、しっかりと引き継がれている。
現に俺は冒険者という、平和とはかけ離れた世界に身を置くことにした。
そしてドライゼン王の跡を継ぐという事は国を守るという事。
それはつまり世界の各国と向き合うという事。
出来る出来ないを考えてしまうが、俺がシャルルと結婚してしまえば出来る出来ないじゃなく、やるしかなくなるのだ。
道ゆく人々を眺めながらそんな事を考える。
気付けば串焼きの袋は空になっており、果実ジュースも底をついていた。
日はとっぷりと沈み、街灯が闇を照らしている。
それでも街をゆく人々の様子は変わらず、様々な人々が道を往来している。
「考えても仕方ないな。そろそろ行こう」
空になった紙袋と果実ジュースのカップをゴミ箱に投げ入れて、意識を切り替える。
軽く伸びをして、満腹になった腹を撫でながら、俺はタルタロス武具店へと足を向けた。
◇ ◇ ◇
「はい、ご苦労様です。報酬がこちら銀貨二枚ね」
「ありがとうございます」
翌日、俺は朝から組合に行き、手頃で手軽な依頼を消化していた。
昨日タルタロス武具店に行き、クーガの鞍と鐙の制作依頼を出したところ、鞍と鐙以外の品物、頭絡や手綱などの一式も含めて金貨一枚でやってくれると言ってくれた。
通常の馬具一式を揃えるので大体金貨一枚ぐらいのお値段らしいのだが、やはりクーガの場合サイズの問題があるので特注だそうだ。
なるべく丈夫な素材で作りたいと伝えたところ、それも了承した上でのこのお値段である。
どうして安くしてくれるのかと聞いたら、どうやら俺の品物で新技術を試してデータなどを取りたいのだそうだ。
代金は品物の受け渡し時に払う事になった、数日もあれば出来るそうなのでそれまでに金貨一枚を用意すればいい。
なので俺は金策をするべく、朝から依頼を受けて回っているのである。
夕方には王宮へ赴き、シャルルを迎えに行かないといけないからな。それにいつまでも床で雑魚寝をするわけにもいかないのでベッドや家具、雑貨なども揃えていかねばならない。
屋敷に元々あった家具類も屋敷同様に、なぜか復活を遂げて使える状態にあるのだけど……やっぱり一人暮らしをするなら、自分で家具を揃えたくなるってもんだ。
「これで銀貨十枚だから……金貨に両替しておくか」
組合の受付で報酬を受け取り、素材管理部のカウンターへ赴いた。
受付は依頼の受理や事務系などを主としており、両替は素材管理部の仕事だ。
両替は黄銅貨、青銅貨、銅貨、銀貨、金貨、王金貨のどれも対応してくれ、金貨を銅貨と青銅貨に、などという細かい両替も可能だ。
金貨までは十枚で一枚という比率で両替出来るが、王金貨だけは金貨百枚で一枚となる。
朝一から山の頂上に生えている薬草の採取や、ランチア国領の外れにある村に行って依頼された品物を届けたりと、合計四件の依頼を消化して大忙しだった。
移動は【フライ】で行ったので移動時間の短縮が出来てかなり楽だった。【フライ】がなければ四件も依頼をこなすのは不可能だったろうからな。本当に便利な魔法だよ、【フライ】様様だ。
報酬は合計で、銀貨五枚、銅貨二枚、青銅貨八枚、という感じ。
それに加えて昨日、伯爵家でもらった報酬の残りを含めると、金貨一枚には充分。お金を稼ぐのは大変だ、とつくづく思った。
時刻はもう昼を過ぎて、あと数時間程度で太陽が沈み始める。
疲れはしなくても汗はかく、朝から動き回っていて体中が汗でベトベトである。
一度屋敷に戻り風呂に入ってから出ないと、シャルルに汗臭いと思われてしまう。
「【フライ】」
組合の建物から出て裏手の路地に入って【フライ】を発動、そのまま屋敷へと飛んで帰った。
屋敷に着くと大急ぎで風呂に入り汗を流し、体の火照りもそのままに服を着替えて再び【フライ】で王宮へと向かった。
「え?」
いつも通り橋のたもとからクーガに乗り、橋を越えると、王宮の扉の前には既に馬車が停まっており、兵士達が忙しなく動いていた。
そこにはシャルルの執事であるタウルスの姿もあった。
一体何事だろうか。
「これはこれはフィガロ様」
「こんにちはタウルスさん、これは一体?」
「はて? 私達はシャルル様からフィガロ様と離宮へ赴くと言われているのですが……その準備にございます」
「あー」
なるほど。
シャルルはトワイライトに行くのではなく、離宮に行くと言って外出許可を取ったのだろう。
外に出て途中で行き先を変えるつもりなのだろうか?
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