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第八章 ロンシャン撤退戦ー後編ー
三四五話 カラミティフレア
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「おい! やるならやるって一声くれよ!」
「いくよって言ったじゃないか」
「言ってからのスパンが早すぎる!」
「あはは! ごめんごめん、で、どうだい?」
「イメージは掴んだけどさ……」
広域殲滅用集団魔法【カラミティフレア】。
十人から二十人規模で行う戦略級の魔法であり、直径五百メートルの円状内で数十回の爆発を起こし、それに伴う超高熱の炎で燃やし、溶かし尽くす魔法だ。
最低でも十人分の魔力を喰らうだけあって、威力は絶大。
発動には長々しい詠唱と溜めが必要だが、俺にはそんなものは必要無い。
「ならいいじゃないか。破壊は君に任せる、僕は全力で障壁を張るから遠慮無くやってくれ」
「分かった」
リッチモンドから強制的に送り込まれたカラミティフレアのイメージを脳内で強くイメージする。
【魔】【強】【火】【風】【無】【創】 の文殊が光を発し、両の掌の上に大人の頭部ほどの大きさの紅球が形作られていく。
過去最高の勢いで魔力が減っていくが完全に失う程ではない、これなら持ちそうだ。
「フィガロ様! 此方は全て整いました! 後は宜しく頼みますぞ!」
「は! 状況を開始します!」
アーマライト王の思念が届き、脳内へ緊迫した声が届いた。
「リッチモンド!」
「時間のようだね! 僕も出し惜しみ無くリッチの底力を見せてあげよう! 【ダークネスフォビドゥンサンクチュアリ】!」
リッチモンドが聞いたことも無い魔法を発動すると、全身からドス黒いオーラのようなものが噴き出した。
それと同時に目標区画である部分が漆黒の囲いで一気に覆われていく。
全長一キロメートルにも及ぶ囲いの表面にはいくつもの黒いモヤが渦巻き、それはまるで怨嗟の声を上げる人の顔にも見えた。
「フィガロ!」
「おおおお! いっけええええ! 【カラミティフレア】!」
力を込めて声を上げると同時に、掌を突き出して紅球を解き放った。
紅球は炎の尾を引いてリッチモンドが展開した障壁【ダークネスフォビドゥンサンクチュアリ】の中へ飛び込んで行った。
その直後、空気と大地が同時に振動するほどの轟音が鳴り響き、轟音は数分間続いた。
振動が徐々に弱くなりやがて収まりをみせた頃、リッチモンドが障壁を解除する。
「わーお……凄いなこりゃ……」
「強大な崩壊力を閉鎖空間で解放したからね。逃げ場のないエネルギーが暴れ回ったんだ」
リッチモンドの言う通り、障壁でカラミティフレアの爆発力を凝縮させた結果、建物の名残は皆無であり地面の部分部分で融解してマグマ化している所や、超高熱を浴びてガラス化している所もある。
「目論見通り、だな」
「だね、どんどん行こう」
その後はリッチモンドが等間隔でダークネスフォビドゥンサンクチュアリを張り、その上空を通過しながら俺がカラミティフレアを投げ込んでいくという単純作業になり、作戦はものの三十分程度で完了した。
俺とリッチモンドは更地と化した直線の両サイドの家屋にそれぞれ立ち、目の前にそびえる迷宮管理塔を向いた。
天に伸びる堅牢そうな建物の入口を見れば、キメラルクリーガー隊が突入を開始した所だった。
「陛下、ブラック達が突入しました。シャルルの様子はどうですか?」
「おおフィガロ様、了解です。シャルルヴィル王女殿下は未だ使い魔とのコンタクトを続けておりますぞ。囚われた者達の報はありませんな」
「そうですか……」
「フィガロ様とリッチモンド殿はしばし待機していて下され。もうすぐロンシャンの兵達もそちらへ到着すると思いますのでな」
「分かりました」
「ではまた!」
思念伝達を終えた俺は反対側に立つリッチモンドへ声を掛けた。
「俺達は待機だってさ」
「はいよ。待機って暇なんだよねぇ……やれやれ」
「そう言うなよ。もうすぐロンシャン兵達がこの近くに到着するらしいから、それまでの辛抱だ」
「分かったよ」
リッチモンドはそう言うと、屋根の部分にごろりと寝転がって目を閉じた。
今俺達がいる場所からは迷宮管理塔の様子がよく見える。
管理塔内部は混乱しているようであり、視界に入る窓の内側では何人もの兵士がキメラルクリーガー隊の元へ急行しているのが見える。
この場所から見える所だけ魔法でちょっかいを出そうかとも考えたけど、それだと作戦概要から外れてしまう。
俺達が攻撃を加えるとしたら王城からの魔導砲の斉射時となる。
王城の方を見ればラプターの巨体が空を舞うのが見え、その背にはヘカテーの姿もある。
ラプターは縦横無尽に飛び回り、通過した場所には魔法陣が淡く光り、消えていく。
ヘカテーによるトラップ魔法の設置が順調に進んでいるようだ。
管理塔からは時折爆発音や大きな破壊音が聞こえてくるけど、ブラックからの連絡は無いので苦戦している訳では無いのだろう。
というより、ただでさえ強い強化兵を魔法でさらに強化しているのだから、どちらかと言えば革命軍の方々が可哀想になってきたのは気の所為じゃあないだろう。
「いくよって言ったじゃないか」
「言ってからのスパンが早すぎる!」
「あはは! ごめんごめん、で、どうだい?」
「イメージは掴んだけどさ……」
広域殲滅用集団魔法【カラミティフレア】。
十人から二十人規模で行う戦略級の魔法であり、直径五百メートルの円状内で数十回の爆発を起こし、それに伴う超高熱の炎で燃やし、溶かし尽くす魔法だ。
最低でも十人分の魔力を喰らうだけあって、威力は絶大。
発動には長々しい詠唱と溜めが必要だが、俺にはそんなものは必要無い。
「ならいいじゃないか。破壊は君に任せる、僕は全力で障壁を張るから遠慮無くやってくれ」
「分かった」
リッチモンドから強制的に送り込まれたカラミティフレアのイメージを脳内で強くイメージする。
【魔】【強】【火】【風】【無】【創】 の文殊が光を発し、両の掌の上に大人の頭部ほどの大きさの紅球が形作られていく。
過去最高の勢いで魔力が減っていくが完全に失う程ではない、これなら持ちそうだ。
「フィガロ様! 此方は全て整いました! 後は宜しく頼みますぞ!」
「は! 状況を開始します!」
アーマライト王の思念が届き、脳内へ緊迫した声が届いた。
「リッチモンド!」
「時間のようだね! 僕も出し惜しみ無くリッチの底力を見せてあげよう! 【ダークネスフォビドゥンサンクチュアリ】!」
リッチモンドが聞いたことも無い魔法を発動すると、全身からドス黒いオーラのようなものが噴き出した。
それと同時に目標区画である部分が漆黒の囲いで一気に覆われていく。
全長一キロメートルにも及ぶ囲いの表面にはいくつもの黒いモヤが渦巻き、それはまるで怨嗟の声を上げる人の顔にも見えた。
「フィガロ!」
「おおおお! いっけええええ! 【カラミティフレア】!」
力を込めて声を上げると同時に、掌を突き出して紅球を解き放った。
紅球は炎の尾を引いてリッチモンドが展開した障壁【ダークネスフォビドゥンサンクチュアリ】の中へ飛び込んで行った。
その直後、空気と大地が同時に振動するほどの轟音が鳴り響き、轟音は数分間続いた。
振動が徐々に弱くなりやがて収まりをみせた頃、リッチモンドが障壁を解除する。
「わーお……凄いなこりゃ……」
「強大な崩壊力を閉鎖空間で解放したからね。逃げ場のないエネルギーが暴れ回ったんだ」
リッチモンドの言う通り、障壁でカラミティフレアの爆発力を凝縮させた結果、建物の名残は皆無であり地面の部分部分で融解してマグマ化している所や、超高熱を浴びてガラス化している所もある。
「目論見通り、だな」
「だね、どんどん行こう」
その後はリッチモンドが等間隔でダークネスフォビドゥンサンクチュアリを張り、その上空を通過しながら俺がカラミティフレアを投げ込んでいくという単純作業になり、作戦はものの三十分程度で完了した。
俺とリッチモンドは更地と化した直線の両サイドの家屋にそれぞれ立ち、目の前にそびえる迷宮管理塔を向いた。
天に伸びる堅牢そうな建物の入口を見れば、キメラルクリーガー隊が突入を開始した所だった。
「陛下、ブラック達が突入しました。シャルルの様子はどうですか?」
「おおフィガロ様、了解です。シャルルヴィル王女殿下は未だ使い魔とのコンタクトを続けておりますぞ。囚われた者達の報はありませんな」
「そうですか……」
「フィガロ様とリッチモンド殿はしばし待機していて下され。もうすぐロンシャンの兵達もそちらへ到着すると思いますのでな」
「分かりました」
「ではまた!」
思念伝達を終えた俺は反対側に立つリッチモンドへ声を掛けた。
「俺達は待機だってさ」
「はいよ。待機って暇なんだよねぇ……やれやれ」
「そう言うなよ。もうすぐロンシャン兵達がこの近くに到着するらしいから、それまでの辛抱だ」
「分かったよ」
リッチモンドはそう言うと、屋根の部分にごろりと寝転がって目を閉じた。
今俺達がいる場所からは迷宮管理塔の様子がよく見える。
管理塔内部は混乱しているようであり、視界に入る窓の内側では何人もの兵士がキメラルクリーガー隊の元へ急行しているのが見える。
この場所から見える所だけ魔法でちょっかいを出そうかとも考えたけど、それだと作戦概要から外れてしまう。
俺達が攻撃を加えるとしたら王城からの魔導砲の斉射時となる。
王城の方を見ればラプターの巨体が空を舞うのが見え、その背にはヘカテーの姿もある。
ラプターは縦横無尽に飛び回り、通過した場所には魔法陣が淡く光り、消えていく。
ヘカテーによるトラップ魔法の設置が順調に進んでいるようだ。
管理塔からは時折爆発音や大きな破壊音が聞こえてくるけど、ブラックからの連絡は無いので苦戦している訳では無いのだろう。
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