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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー
二七九話 四人の奴隷
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投稿内容を間違えておりました。
すみません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー怯えきったプルによって残りの三人も目を覚まし、不思議そうに周囲を伺っていた。
「皆が目を覚ました所で、君達の名前を聞かせてくれないかい? 奴隷になる前の名前だよ」
奴隷達はお互いに目を合わせ、次に僕へと向き直りそれぞれが順に口を開いた。
「シロン、獣人、ウサギのチャト属です」
「ハンヴィー……コヨーテの獣人です」
「アハトと言います。見ての通り亜人です、種族はゲッコーになります」
当たり前の話だけど、三人とも違った反応で自らの名前を名乗った。
シロンは焦げ茶色の髪色で、長さは肩より少し長いくらいの獣人だった。
側頭部から垂れる耳、髪と同じ色の瞳には不安の色が濃い。
ハンヴィーは切れ長の眼をしており、金髪のロングヘアーをポニーテールで纏めていて、臀部からはフサフサの尻尾が力なく垂れている。
アハトは薄緑の変わった髪色でボブくらいまで短くしていた。
ほかの三人に比べ頭一つ分ほど小さい身長で、一五〇センチぐらいだろう。
亜人特有の虹彩が縦長の瞳を煌めかせ、上目遣いでこちらを伺っている。
「よろしく、で、君達はどうする? ミロク達はどこかに行ってしまったし、よければ僕の所へ来ないかい? ちなみに隷属の首輪は外してあげる」
四人の奴隷達は僕の最後の言葉に目の色を変えた。
死んだような瞳は輝きを取り戻し、シロンとハンヴィーに至っては目元に涙を浮かべている。
「「「「宜しくお願い致します!」」」」
満場一致の言葉を受け、僕は四人の奴隷と共に塔へと向かって歩き出した。
「あの……リッチモンド様。ミロク達は本当に……?」
後ろを歩いていたプルが一人、小走りで僕の隣へ来てそんな事を言ってきた。
「あぁ、本当だとも」
「そう、ですか……」
口では納得したふうにしていても、やはり疑念は晴れないようだ。
だけど本当の事を言った所で何になるというのか。
僕が殺したと打ち明けて何か変わるのだろうか。
「よかった、です」
「よかった?」
プルは俯きながら呟き、僕はオムウ返しのように同じ言葉を口にした。
「はい、貴方に助けて頂けて良かったと、思っています」
「助けたつもりは無いよ」
「そう、ですね」
「あぁ、そうだとも」
ふと背後が気になり、首だけ動かして後ろを見てみると三人の奴隷はこちらを伺うように小さくなって付いてきていた。
それに比べてプルは怯えなど見せず、毅然とした態度だがよく見ると手先が細かく震えていた。
「なるほどね」
「何か仰いましたか?」
「いや別に、君はあの子達のリーダーなのかなと思ってね」
「そんな事は……」
僕の指摘に戸惑いを見せ、尻すぼみになってしまったプルの態度で確信出来た。
四人の奴隷の中のリーダー格であるプルが、先手を打って僕の事を探ろうとしているのだ。
奴隷であり、ミロクらの暴力に晒されていた彼女らが見ず知らずの人間を簡単に信用するはずも無い。
もしかするとミロクより酷いやつかも知れないからね。
プルは押し黙ってしまい、静かに僕の隣を歩いている。
シロン達は手を取りあって同じく言葉を発さずに付いてきた。
時刻塔のあるブロックに差し掛かった時、プルが唐突に声を荒らげた。
「リッチモンド様! ロンシャン兵が!」
「大丈夫、味方だよ」
「味方……?」
家屋の窓から顔を出しているロンシャン兵にハンドサインを送ると、敬礼が返ってきた。
それを見ていたプルが胸を撫で下ろして言った。
「リッチモンド様は一体?」
「ただのしがない冒険者だよ。ほら、こっちだ」
扉の壊れた時刻塔の前に辿り着き、手招きをして後ろのシロン達を呼ぶ。
怯えながらも時刻塔に足を踏み入れた四人の奴隷を率いて、僕はフィガロ達の待つ地下へと降りていった。
塔の中にいる兵達が怪訝な顔でこちらを見てくるが、彼等の心境も分かる。
一人で出て行った僕が四人の奴隷を連れて帰ってきたのだ、色々と聞きたくもなる。
少なくとも僕だったら聞いてる。
フィガロはそんな事をしれっとやる人間だからね。
そう考えると僕も案外彼に似ているのかも知れない、と思ったが一瞬でその考えは捨てた。
僕は彼みたいに優しくないしね。
なんて言ったって彼ほど抜けていないはずだ。
「ただいま」
「おかえりリッチモンド……って……どしたの……その子達」
「拾ったのさ」
「拾った、って……ちょっと真面目に答えて」
「真面目に答えてるよ? 本当に拾ったのさ」
出迎えてくれたシャルルが眼を丸くして、プルやシロンをマジマジと見た。
「初めまして、通常人種のプルと申します。リッチモンド様には確かに拾って頂けました」
「そ、そうなの……」
他にも言いたそうな顔をしていたシャルルだが、プルの言葉に頷くしか出来ずにいた。
こうしてプル、シロン、ハンヴィー、アハトの四人の奴隷が僕達の陣営に加わったのだった。
すみません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー怯えきったプルによって残りの三人も目を覚まし、不思議そうに周囲を伺っていた。
「皆が目を覚ました所で、君達の名前を聞かせてくれないかい? 奴隷になる前の名前だよ」
奴隷達はお互いに目を合わせ、次に僕へと向き直りそれぞれが順に口を開いた。
「シロン、獣人、ウサギのチャト属です」
「ハンヴィー……コヨーテの獣人です」
「アハトと言います。見ての通り亜人です、種族はゲッコーになります」
当たり前の話だけど、三人とも違った反応で自らの名前を名乗った。
シロンは焦げ茶色の髪色で、長さは肩より少し長いくらいの獣人だった。
側頭部から垂れる耳、髪と同じ色の瞳には不安の色が濃い。
ハンヴィーは切れ長の眼をしており、金髪のロングヘアーをポニーテールで纏めていて、臀部からはフサフサの尻尾が力なく垂れている。
アハトは薄緑の変わった髪色でボブくらいまで短くしていた。
ほかの三人に比べ頭一つ分ほど小さい身長で、一五〇センチぐらいだろう。
亜人特有の虹彩が縦長の瞳を煌めかせ、上目遣いでこちらを伺っている。
「よろしく、で、君達はどうする? ミロク達はどこかに行ってしまったし、よければ僕の所へ来ないかい? ちなみに隷属の首輪は外してあげる」
四人の奴隷達は僕の最後の言葉に目の色を変えた。
死んだような瞳は輝きを取り戻し、シロンとハンヴィーに至っては目元に涙を浮かべている。
「「「「宜しくお願い致します!」」」」
満場一致の言葉を受け、僕は四人の奴隷と共に塔へと向かって歩き出した。
「あの……リッチモンド様。ミロク達は本当に……?」
後ろを歩いていたプルが一人、小走りで僕の隣へ来てそんな事を言ってきた。
「あぁ、本当だとも」
「そう、ですか……」
口では納得したふうにしていても、やはり疑念は晴れないようだ。
だけど本当の事を言った所で何になるというのか。
僕が殺したと打ち明けて何か変わるのだろうか。
「よかった、です」
「よかった?」
プルは俯きながら呟き、僕はオムウ返しのように同じ言葉を口にした。
「はい、貴方に助けて頂けて良かったと、思っています」
「助けたつもりは無いよ」
「そう、ですね」
「あぁ、そうだとも」
ふと背後が気になり、首だけ動かして後ろを見てみると三人の奴隷はこちらを伺うように小さくなって付いてきていた。
それに比べてプルは怯えなど見せず、毅然とした態度だがよく見ると手先が細かく震えていた。
「なるほどね」
「何か仰いましたか?」
「いや別に、君はあの子達のリーダーなのかなと思ってね」
「そんな事は……」
僕の指摘に戸惑いを見せ、尻すぼみになってしまったプルの態度で確信出来た。
四人の奴隷の中のリーダー格であるプルが、先手を打って僕の事を探ろうとしているのだ。
奴隷であり、ミロクらの暴力に晒されていた彼女らが見ず知らずの人間を簡単に信用するはずも無い。
もしかするとミロクより酷いやつかも知れないからね。
プルは押し黙ってしまい、静かに僕の隣を歩いている。
シロン達は手を取りあって同じく言葉を発さずに付いてきた。
時刻塔のあるブロックに差し掛かった時、プルが唐突に声を荒らげた。
「リッチモンド様! ロンシャン兵が!」
「大丈夫、味方だよ」
「味方……?」
家屋の窓から顔を出しているロンシャン兵にハンドサインを送ると、敬礼が返ってきた。
それを見ていたプルが胸を撫で下ろして言った。
「リッチモンド様は一体?」
「ただのしがない冒険者だよ。ほら、こっちだ」
扉の壊れた時刻塔の前に辿り着き、手招きをして後ろのシロン達を呼ぶ。
怯えながらも時刻塔に足を踏み入れた四人の奴隷を率いて、僕はフィガロ達の待つ地下へと降りていった。
塔の中にいる兵達が怪訝な顔でこちらを見てくるが、彼等の心境も分かる。
一人で出て行った僕が四人の奴隷を連れて帰ってきたのだ、色々と聞きたくもなる。
少なくとも僕だったら聞いてる。
フィガロはそんな事をしれっとやる人間だからね。
そう考えると僕も案外彼に似ているのかも知れない、と思ったが一瞬でその考えは捨てた。
僕は彼みたいに優しくないしね。
なんて言ったって彼ほど抜けていないはずだ。
「ただいま」
「おかえりリッチモンド……って……どしたの……その子達」
「拾ったのさ」
「拾った、って……ちょっと真面目に答えて」
「真面目に答えてるよ? 本当に拾ったのさ」
出迎えてくれたシャルルが眼を丸くして、プルやシロンをマジマジと見た。
「初めまして、通常人種のプルと申します。リッチモンド様には確かに拾って頂けました」
「そ、そうなの……」
他にも言いたそうな顔をしていたシャルルだが、プルの言葉に頷くしか出来ずにいた。
こうしてプル、シロン、ハンヴィー、アハトの四人の奴隷が僕達の陣営に加わったのだった。
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