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第七章 ロンシャン撤退戦ー前編ー
二五四話 新たな獣魔兵
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ウルベルトの号令により周りを大きく取り囲んだ獣魔兵が一斉に突撃を開始する。
大量の獣魔兵が地を蹴る音が鳴る。
ざっと一周見回して見るが、どれもが狼種か犬種であり大きさは大型犬程度。
牙を剥き、赤い眼を光らせながらこちらに迫る獣魔兵だが、俺がこの場に留まる必要も無いので、正面に向かって走り獣魔兵をなで斬りにする。
勢いよく血飛沫が上がるが、それを浴びてやるほど悠長にしているつもりは無い。
血が撒き散らされるびちゃびちゃという音を背後に、次の獣魔兵を袈裟斬りにし、返す刃で右から飛びかかってきた獣魔兵の首を落とす。
さらにその後ろから、右から、左から上から斜めからと立体的に襲いかかってくる獣魔兵。
立ち止まっていては物量戦に押されるのは目に見えているので、ヒットアンドアウェイの戦法を使い斬っては離れ、蹴り飛ばしては離れを繰り返し、当てられそうな獣魔兵には魔法を放つ。
何体倒したのかは数えていないが、周囲に散らばる獣魔兵だったものを見れば結構な数にのぼる。
大量のモンスターに囲まれるというのも、つい最近迷宮内にて経験済みなので、あれもまた良い経験だったと言えるだろう。
「ふー。まだいるのか? あと何体俺は殺せばいいんだ」
「ふん、小型機動隊を相手にいくら倒そうが総司令に届くとは思えないなぁ! 疲れてきたんじゃあないか?」
「いえ、これくらいで疲れてなんていられませんよ。そんな事より貴方の後ろでコソコソやっている方々も出てこられてはどうですか?」
ウルベルトの背後にある茂みの奧にまだ複数の気配を感じる。
この男一人で獣魔兵全てを使役しているとは考えにくいので、茂みの奥にいるのは恐らく獣魔兵の使役者達だろう。
「舐めた口を……! 次の兵を出せ!」
号令に応えるように、茂みを掻き分けて次々と新たな戦力が出てくる。
それは今まで相手にしていた獣型では無く、二足歩行を行う大猿型や大熊型、岩の塊のような猪型などの四足歩行型と、実に多様な種類のモンスターがゆっくりと近付いてくる。
モンスターの全てに鎧やプロテクターのような防具が着けられ、大猿型や大熊型の腕には凶悪な太い棘が生えたガントレットが。
猪型や四足歩行型は大きな刃を備え付けたヘルメットや細かい刃が並んだボディアーマーを装着している。
そんなモンスター達がゆっくりと俺に向けて進軍を進める中、ウルベルトが勝ち誇ったかのように口を開いた。
「小僧、知ってか知らずか貴様は操奇部隊本隊の進軍経路に割って入ったのだ。勝てると思うなよ?」
「なるほど、だから隊長の貴方がここにいるワケですね」
「くく……この獣魔兵達を見てその冷静さ、愚かなのか諦めなのか……どちらでも構わないがお前は死ぬのだ」
「今までのわんちゃん達は尖兵という事ですか。でもこれだけ尖兵がやられているのに貴方の余裕が崩れなかったのは、本隊が後ろに控えていたからなのですね」
「そういう事だ。行け獣魔兵達よ!」
ウルベルトが手を振り上げると、ゆっくりと進軍していた新たな獣魔兵達が吠え声を上げその速度を上げた。
凶悪な姿の獣魔兵の集団を見て、俺の背後にいるロンシャン兵達は絶望的な表情になってはいるが、逃げ出す者はおらずしっかりと剣を構えて迎え撃つつもりのようだ。
ロンシャン兵達の先頭にホワイトとピンクが立ち、その前に俺が立っている。
横に広がった獣魔兵軍団を一人で相手取るのは難しい。
どうやっても俺の守備範囲から漏れる獣魔兵が出るのは目に見えている。
それならばある程度数を減らしてしまえばいい、
「物量戦でどうにかなると思っているのですか? 真っ直ぐ進んでくる標的であれば撃破する事など容易いのですよ!」
獣型のように絶えず動き回る個体に魔法を当てる事は難しいが、こちらに向かってくるだけなら敵にもならない。
しかも的となる獣魔兵の体は大きく、当ててくれと言っているようなものだ。
「やってみるがいい! 例え魔法を撃った所でこの獣魔兵達には生半可な魔法は効かないがな! はーっはっはっは!」
高らかに笑うウルベルトを無視し、俺は魔法を発動させる。
生半可な魔法が効かないのならば生半可では無い魔法をぶつければいいだけだ。
自分から弱点をさらけ出すのは自信の現われなのだろうか。
「ディス・エクスパンション【フレイムボルテックスランス】」
文殊が輝きを発し俺の右に五つ、左に五つ現れた螺旋状に変異した穂先を持つ石槍が高速回転し赤熱する。
空気を切り裂くような音を鳴らしながら宙に浮き、獲物を見定めるかのように細かく揺れ動く。
今の所、俺の中での最高威力の魔法を十式展開させ、獣魔兵軍団を一瞥した。
「一人たりとも生きて返すな! やれ! やってしまえ! はーっはっはっは!」
獣魔兵の陰になり、俺の発動した魔法が見えないのか、ウルベルトは相変わらずな高笑いを続けていた。
だが……。
「これを見てその笑いが続きますかね! シュート!」
穂先を僅かにずらし、扇状の射線になるよう微調整を施したフレイムボルテックスランスを解き放つ。
その刹那、侵攻してきた獣魔兵軍団が轟音と粉塵を巻き上げながら爆発していったのだった。
大量の獣魔兵が地を蹴る音が鳴る。
ざっと一周見回して見るが、どれもが狼種か犬種であり大きさは大型犬程度。
牙を剥き、赤い眼を光らせながらこちらに迫る獣魔兵だが、俺がこの場に留まる必要も無いので、正面に向かって走り獣魔兵をなで斬りにする。
勢いよく血飛沫が上がるが、それを浴びてやるほど悠長にしているつもりは無い。
血が撒き散らされるびちゃびちゃという音を背後に、次の獣魔兵を袈裟斬りにし、返す刃で右から飛びかかってきた獣魔兵の首を落とす。
さらにその後ろから、右から、左から上から斜めからと立体的に襲いかかってくる獣魔兵。
立ち止まっていては物量戦に押されるのは目に見えているので、ヒットアンドアウェイの戦法を使い斬っては離れ、蹴り飛ばしては離れを繰り返し、当てられそうな獣魔兵には魔法を放つ。
何体倒したのかは数えていないが、周囲に散らばる獣魔兵だったものを見れば結構な数にのぼる。
大量のモンスターに囲まれるというのも、つい最近迷宮内にて経験済みなので、あれもまた良い経験だったと言えるだろう。
「ふー。まだいるのか? あと何体俺は殺せばいいんだ」
「ふん、小型機動隊を相手にいくら倒そうが総司令に届くとは思えないなぁ! 疲れてきたんじゃあないか?」
「いえ、これくらいで疲れてなんていられませんよ。そんな事より貴方の後ろでコソコソやっている方々も出てこられてはどうですか?」
ウルベルトの背後にある茂みの奧にまだ複数の気配を感じる。
この男一人で獣魔兵全てを使役しているとは考えにくいので、茂みの奥にいるのは恐らく獣魔兵の使役者達だろう。
「舐めた口を……! 次の兵を出せ!」
号令に応えるように、茂みを掻き分けて次々と新たな戦力が出てくる。
それは今まで相手にしていた獣型では無く、二足歩行を行う大猿型や大熊型、岩の塊のような猪型などの四足歩行型と、実に多様な種類のモンスターがゆっくりと近付いてくる。
モンスターの全てに鎧やプロテクターのような防具が着けられ、大猿型や大熊型の腕には凶悪な太い棘が生えたガントレットが。
猪型や四足歩行型は大きな刃を備え付けたヘルメットや細かい刃が並んだボディアーマーを装着している。
そんなモンスター達がゆっくりと俺に向けて進軍を進める中、ウルベルトが勝ち誇ったかのように口を開いた。
「小僧、知ってか知らずか貴様は操奇部隊本隊の進軍経路に割って入ったのだ。勝てると思うなよ?」
「なるほど、だから隊長の貴方がここにいるワケですね」
「くく……この獣魔兵達を見てその冷静さ、愚かなのか諦めなのか……どちらでも構わないがお前は死ぬのだ」
「今までのわんちゃん達は尖兵という事ですか。でもこれだけ尖兵がやられているのに貴方の余裕が崩れなかったのは、本隊が後ろに控えていたからなのですね」
「そういう事だ。行け獣魔兵達よ!」
ウルベルトが手を振り上げると、ゆっくりと進軍していた新たな獣魔兵達が吠え声を上げその速度を上げた。
凶悪な姿の獣魔兵の集団を見て、俺の背後にいるロンシャン兵達は絶望的な表情になってはいるが、逃げ出す者はおらずしっかりと剣を構えて迎え撃つつもりのようだ。
ロンシャン兵達の先頭にホワイトとピンクが立ち、その前に俺が立っている。
横に広がった獣魔兵軍団を一人で相手取るのは難しい。
どうやっても俺の守備範囲から漏れる獣魔兵が出るのは目に見えている。
それならばある程度数を減らしてしまえばいい、
「物量戦でどうにかなると思っているのですか? 真っ直ぐ進んでくる標的であれば撃破する事など容易いのですよ!」
獣型のように絶えず動き回る個体に魔法を当てる事は難しいが、こちらに向かってくるだけなら敵にもならない。
しかも的となる獣魔兵の体は大きく、当ててくれと言っているようなものだ。
「やってみるがいい! 例え魔法を撃った所でこの獣魔兵達には生半可な魔法は効かないがな! はーっはっはっは!」
高らかに笑うウルベルトを無視し、俺は魔法を発動させる。
生半可な魔法が効かないのならば生半可では無い魔法をぶつければいいだけだ。
自分から弱点をさらけ出すのは自信の現われなのだろうか。
「ディス・エクスパンション【フレイムボルテックスランス】」
文殊が輝きを発し俺の右に五つ、左に五つ現れた螺旋状に変異した穂先を持つ石槍が高速回転し赤熱する。
空気を切り裂くような音を鳴らしながら宙に浮き、獲物を見定めるかのように細かく揺れ動く。
今の所、俺の中での最高威力の魔法を十式展開させ、獣魔兵軍団を一瞥した。
「一人たりとも生きて返すな! やれ! やってしまえ! はーっはっはっは!」
獣魔兵の陰になり、俺の発動した魔法が見えないのか、ウルベルトは相変わらずな高笑いを続けていた。
だが……。
「これを見てその笑いが続きますかね! シュート!」
穂先を僅かにずらし、扇状の射線になるよう微調整を施したフレイムボルテックスランスを解き放つ。
その刹那、侵攻してきた獣魔兵軍団が轟音と粉塵を巻き上げながら爆発していったのだった。
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