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二章 旅立ちの日
48.リンネの危機
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「芳しくないって、どういうことだよ」
『そのままの意味じゃよ。生気がニャいというか、活力がニャいというか。それと魔力の量も少ニャい』
「それってマスターの言っていた女性特有のアレなんじゃないのか? 知らないけど」
『今はニャんとも言えぬが、このままの状態が続けばあの女子、生命の危機じゃぞ』
「生命の危機……死ぬってことか?」
『平たく言えばそうじゃの』
「嘘だろ」
その時、昨晩マスターが話していた話を思い出した。
原因不明の病で亡くなる人がいる、という話。
まさかリンネもそれに罹ってしまったというのか?
昨日の休みで実家に帰った、その時に?
『あれはお主が考えている病の類とはちと異ニャるの。呪術的な方じゃ』
「呪術だって?」
『うむ。誰がどこでどういった目的ニャのかは知らんがの。呪術のくっさい臭いがプンプンするわい』
「え、でもチャロは暗黒神の爪なんだろ? 呪術って闇の領域なのに臭いとかあるのか」
『ふん。それは人間共が勝手に定義したものじゃろうが。確かに闇には負の面が強いが、負の全てが闇にあるわけじゃニャい』
「ううん? 難しいな?」
『例えばじゃ、七大罪に嫉妬や憤怒というものがあるじゃろ?』
「あるね」
『あれは闇ではなく火の神の負の面じゃ』
「なんで火になる?」
『嫉妬に燃える、焦がれる、憤怒の炎。とか言うじゃろが』
「あーなるほど……そしたら色欲は……溺れるから水、ってことになるのか?」
『正解じゃ。冴えとるの』
『じゃあ他に風とか地とかもあるのか?』
『怠惰、これは風じゃ。馬耳東風、柳に風、風馬牛、聞こえニャいフリ、関係ニャいフリ、何もしないのは怠けているのとおニャじじゃて』
「地は?」
『強欲に暴食』
「何でだよ。関係ないじゃん」
『穴を埋める、満たす、とは言わニャいかの? 意地汚い、意地を張るより頬張れ、とは言わんか? まぁ満たすに関しては水の領分とも言えニャくはニャいがの』
「まぁ、一理ある。てかお前は召喚されたばかりなのに何でも知ってるのな」
『たわけ、一端とは言えワシは闇の神、世界を二分する大神の力と知識を司るものじゃぞ。何でも知っておるわ。地水火風などの木端神ニャどと同じにされては困るのぅ』
そう自慢げに言って、チャロはまた鼻を鳴らした。
つい先ほど土からは出られず、水に揉まれた、陸に上がるだけで精一杯だと嘆いていたくせに。
その自信はどこから生まれてくるのだろうか。
「ニャオォォオウ! フシャアアア!(ぐにゃ! 頭の中でワシを馬鹿にするでニャい! 筒抜けじゃぞ! 先も言うたであろうが! ワシにもっと力があれば土や水など、顔を洗うより簡単に処理出来たんじゃあ! きぃいいー! ムカつくのぅ!!』
「ごめんて……そんな怒らなくても」
どうやら僕はチャロの尾を踏んでしまったらしい。
頭の中でチャロの喚き散らす声がギャンギャンと響く。
話が逸れてしまったが、リンネが犯されている呪術的なものはどうすればいいのだろうか?
このままでいれば、下手をすれば彼女の命は散ってしまう。
『そのままの意味じゃよ。生気がニャいというか、活力がニャいというか。それと魔力の量も少ニャい』
「それってマスターの言っていた女性特有のアレなんじゃないのか? 知らないけど」
『今はニャんとも言えぬが、このままの状態が続けばあの女子、生命の危機じゃぞ』
「生命の危機……死ぬってことか?」
『平たく言えばそうじゃの』
「嘘だろ」
その時、昨晩マスターが話していた話を思い出した。
原因不明の病で亡くなる人がいる、という話。
まさかリンネもそれに罹ってしまったというのか?
昨日の休みで実家に帰った、その時に?
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「呪術だって?」
『うむ。誰がどこでどういった目的ニャのかは知らんがの。呪術のくっさい臭いがプンプンするわい』
「え、でもチャロは暗黒神の爪なんだろ? 呪術って闇の領域なのに臭いとかあるのか」
『ふん。それは人間共が勝手に定義したものじゃろうが。確かに闇には負の面が強いが、負の全てが闇にあるわけじゃニャい』
「ううん? 難しいな?」
『例えばじゃ、七大罪に嫉妬や憤怒というものがあるじゃろ?』
「あるね」
『あれは闇ではなく火の神の負の面じゃ』
「なんで火になる?」
『嫉妬に燃える、焦がれる、憤怒の炎。とか言うじゃろが』
「あーなるほど……そしたら色欲は……溺れるから水、ってことになるのか?」
『正解じゃ。冴えとるの』
『じゃあ他に風とか地とかもあるのか?』
『怠惰、これは風じゃ。馬耳東風、柳に風、風馬牛、聞こえニャいフリ、関係ニャいフリ、何もしないのは怠けているのとおニャじじゃて』
「地は?」
『強欲に暴食』
「何でだよ。関係ないじゃん」
『穴を埋める、満たす、とは言わニャいかの? 意地汚い、意地を張るより頬張れ、とは言わんか? まぁ満たすに関しては水の領分とも言えニャくはニャいがの』
「まぁ、一理ある。てかお前は召喚されたばかりなのに何でも知ってるのな」
『たわけ、一端とは言えワシは闇の神、世界を二分する大神の力と知識を司るものじゃぞ。何でも知っておるわ。地水火風などの木端神ニャどと同じにされては困るのぅ』
そう自慢げに言って、チャロはまた鼻を鳴らした。
つい先ほど土からは出られず、水に揉まれた、陸に上がるだけで精一杯だと嘆いていたくせに。
その自信はどこから生まれてくるのだろうか。
「ニャオォォオウ! フシャアアア!(ぐにゃ! 頭の中でワシを馬鹿にするでニャい! 筒抜けじゃぞ! 先も言うたであろうが! ワシにもっと力があれば土や水など、顔を洗うより簡単に処理出来たんじゃあ! きぃいいー! ムカつくのぅ!!』
「ごめんて……そんな怒らなくても」
どうやら僕はチャロの尾を踏んでしまったらしい。
頭の中でチャロの喚き散らす声がギャンギャンと響く。
話が逸れてしまったが、リンネが犯されている呪術的なものはどうすればいいのだろうか?
このままでいれば、下手をすれば彼女の命は散ってしまう。
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