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二章 旅立ちの日
43.かしこねこ
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「ニャメ? ニャムムニャ」
「は?」
チャロが奇妙な鳴き声を上げた。
ぐぐっと体を伸ばし、あくびを一つ。
「お、おいおい……」
驚いて目を白黒させている僕を尻目に、それは起こった。
見ているうちに六本生えていた足の、真ん中の足がどんどん腹部に沈み込んでいった。
次に尻尾、四つに分かれていた尻尾が絡まっていき一本の尻尾に。
六つの瞳は真ん中を残して閉じ、無くなってしまった。
「猫……凄い……」
「ニャーーーオ」
「チャロ、お前まさか……俺の言葉を理解しているのか?」
「オォア?」
僕が容姿の事を話し、一緒にいられなくなると言った途端にこの変化だ。
僕の言葉を理解して、即座に反応したとしか思えないのだけれど……。
こうして見るとチャロも紫色の体毛の、少し大きな猫でしかない。
人語を理解し、変化出来る猫……世の中にはやはりまだまだ知らない事がたくさんあるな。
エレメンタリオにはいなかったけれど、この世界には獣人や亜人だっている。
コミュニケーションが取れる猫がいても不思議じゃあない、か。
「よしチャロ! 僕の言っている事が分かるなら、僕の言った通りに動くんだ」
「ニャン!」
多分返事、だと思われる鳴き声を上げ、チャロは僕をじっと見る。
「ジャンプ」
「ニャッ」
「回れ」
「ニャロロン」
「右回り、左回り」
「ニャンゴロニャ」
「か、完璧だ……!」
僕は感動した。
チャロは僕の言葉通りの動きをし、今は前足で顔を洗っている。
これは、ケージから出しても大丈夫なのではないだろうか。
マスターとのお約束だが……それはマスターが不安だからであって、不安な気持ちを排除してしまえばいいのではないか。
「よし、チャロ。今からお前をケージから出す。分かるな?」
「ニャン」
「よし、ケージから出たらその場で止まるんだ」
「ニャオ」
「よし、いくぞ」
チャロの反応を信じて、僕はケージの前側を解放した。
するとチャロは静かにケージから出て、大人しくその場に座り込んだ。
「す、凄いぞチャロ! 偉いぞチャロ!」
僕は感激しながらチャロを撫で回そうと近付いた。
その瞬間、僕は目の前が真っ暗になった。
最後に見えたのは僕が近付くのと同じタイミングで、チャロの胸元がガバリと開いた所だった。
そして僕を見て笑い、手を差し伸べる父やアリエス、兄姉の姿が脳裏に浮かんだ。
僕はチャロに捕食されたのだと、直感的に理解した。
あまりに突然の事で、回避行動が出来なかった。
出来た事と言えば、飛びついてきたチャロの体を鷲掴みにする程度。
「ムゴ、ムムムウ」
「ゴロロロロ」
僕の頭部は完全に丸呑みされていて、ザラつく下で顔面を舐め回されている。
口? の中の生臭さがダイレクトに伝わり、首筋や頭部に鋭い歯がチクチクと刺さりかけている。
僕は一瞬死を覚悟したけれど、どうも違う。
なぜならチャロは僕の顔面を舐め回すだけ舐め回し、さらに舐め回してきたのだから。
「は?」
チャロが奇妙な鳴き声を上げた。
ぐぐっと体を伸ばし、あくびを一つ。
「お、おいおい……」
驚いて目を白黒させている僕を尻目に、それは起こった。
見ているうちに六本生えていた足の、真ん中の足がどんどん腹部に沈み込んでいった。
次に尻尾、四つに分かれていた尻尾が絡まっていき一本の尻尾に。
六つの瞳は真ん中を残して閉じ、無くなってしまった。
「猫……凄い……」
「ニャーーーオ」
「チャロ、お前まさか……俺の言葉を理解しているのか?」
「オォア?」
僕が容姿の事を話し、一緒にいられなくなると言った途端にこの変化だ。
僕の言葉を理解して、即座に反応したとしか思えないのだけれど……。
こうして見るとチャロも紫色の体毛の、少し大きな猫でしかない。
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コミュニケーションが取れる猫がいても不思議じゃあない、か。
「よしチャロ! 僕の言っている事が分かるなら、僕の言った通りに動くんだ」
「ニャン!」
多分返事、だと思われる鳴き声を上げ、チャロは僕をじっと見る。
「ジャンプ」
「ニャッ」
「回れ」
「ニャロロン」
「右回り、左回り」
「ニャンゴロニャ」
「か、完璧だ……!」
僕は感動した。
チャロは僕の言葉通りの動きをし、今は前足で顔を洗っている。
これは、ケージから出しても大丈夫なのではないだろうか。
マスターとのお約束だが……それはマスターが不安だからであって、不安な気持ちを排除してしまえばいいのではないか。
「よし、チャロ。今からお前をケージから出す。分かるな?」
「ニャン」
「よし、ケージから出たらその場で止まるんだ」
「ニャオ」
「よし、いくぞ」
チャロの反応を信じて、僕はケージの前側を解放した。
するとチャロは静かにケージから出て、大人しくその場に座り込んだ。
「す、凄いぞチャロ! 偉いぞチャロ!」
僕は感激しながらチャロを撫で回そうと近付いた。
その瞬間、僕は目の前が真っ暗になった。
最後に見えたのは僕が近付くのと同じタイミングで、チャロの胸元がガバリと開いた所だった。
そして僕を見て笑い、手を差し伸べる父やアリエス、兄姉の姿が脳裏に浮かんだ。
僕はチャロに捕食されたのだと、直感的に理解した。
あまりに突然の事で、回避行動が出来なかった。
出来た事と言えば、飛びついてきたチャロの体を鷲掴みにする程度。
「ムゴ、ムムムウ」
「ゴロロロロ」
僕の頭部は完全に丸呑みされていて、ザラつく下で顔面を舐め回されている。
口? の中の生臭さがダイレクトに伝わり、首筋や頭部に鋭い歯がチクチクと刺さりかけている。
僕は一瞬死を覚悟したけれど、どうも違う。
なぜならチャロは僕の顔面を舐め回すだけ舐め回し、さらに舐め回してきたのだから。
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