国から見限られた王子が手に入れたのは万能無敵のS級魔法〜使えるのは鉱石魔法のみだけど悠々自適に旅をします〜

登龍乃月

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二章 旅立ちの日

39.ネーミングタイム

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「とりあえずマスター、お腹が空いたので何か食べようと思うのですが」
「わ、わかりました。猫……のほうはお部屋に?」
「いえ、こちらで共に」
「わかりました……ではお決まりになりましたらお呼び下さい」
「はい」

 カウンターの奥へ引っ込んでいくマスターを横目に、猫と共に席へ着く。
 と、ここで猫をどうすべきか悩む事になった。
 今は大人しく抱かれているからいいものの、手放せばどうなるか分からない。

「あ、そうか。ケージ」

 僕は金属球を取り出し、猫が入る程度の大きさのメタルケージを作り出し、その中に猫を入れた。

「アォ」

 猫は大人しく中に入り、優雅に毛繕いを始めた。
 ケージを隣の椅子に置き、メニューから魚を除外した料理を選んでいく。
 魚が汚染されていると分かった以上、マスターには悪いけれど魚料理を食べる気にはなれない。
 僕の体内にも微量ながら毒素は入ってしまっているだろうが、昨日摂取した量程度ではなんら問題はないだろう。
 
「マスター」
「お決まりですか?」

 今回は肉と野菜をメインに頼み、昨日の反省を踏まえた上でエールも頼む。
 それプラス、猫用に茹で肉味無しも頼んでおく。
 
「かしこまりました。少々お待ちください」

 そう言ってマスターは調理を始めた。
 がらんとした店内には僕と猫だけ。
 
「オァア」
「お前にも名前付けないとなぁ。いつまでも猫って呼ぶのも良くないしな」
「ンォア」
「うーんむむ」
「ウーニャムム」

 生まれてこの方ペットなんぞ飼った事も無いし、馬以外の動物と触れ合った事も無い僕だが、ネーミングセンスはあるつもりだ。
 というか今この猫、僕の真似しなかったか?
 僕は首を傾げながら猫をじっと見る。
 猫もそんな僕を見て、首を傾げる。

「不思議なやつだな」

 猫というのは人の真似をするのだろうか?
 本にはそんな事書いてなかったし、猫を飼う人達の中には猫様と、崇める者達もいるとかいないとか。
 世界は広い、猫を神とする宗教があってもなんら可笑しくはない。
 神として崇められる存在ならば、人の真似など容易いという事なのか?
 ううむ、猫、奥が深い。

「名前ねぇ……ウランなんてどうだ」
「ウニャン」
「うんん、いまいちしっくりこないな」

 こうして僕は料理が来るまでの間、エールをちびちびと飲みながら猫の名前を考え続けたのだった。
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