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二章 旅立ちの日
35.出会い
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「調べるだけ調べて……アリエスに手紙でも送る……か?」
そうだ、それがいい。
手紙を送ればアリエスや父もこの街の現状を把握して、何かしらの対応をしてくれるだろう。
『ごめんなさい、ごめんなさい……』
「く……」
脳裏にリンネの泣きじゃくる姿が浮かぶ。
どうにかしてあげたい気持ちはある、僕だってそこまで薄情じゃあないつもりだ。
けれどただの旅人に何が出来るというのか。
「とりあえず、手紙を送ろう……」
僕は呻くように呟いて河から上がり、衛兵の間を抜け、対岸へ向かうために橋を渡る。
荷馬車はすでに居らず、土砂の漏れたものが橋の上に残されていたのが横目に映った。
そして僕はなんとなく、本当になんとなく、その土砂に触れてみた。
「……これは……!」
触れた瞬間、本能的に理解出来た。
僕が鉱石魔法の使い手だからなのだろうか、残されていた土砂からある反応、鉱石反応が出た。
「毒性の弱い……鉱石の粉末……? それも複数あるだと?」
鉱石の中には強い毒性を持つ物や、弱い毒性を持つ物がいくつも存在する。
強い毒性を持つ鉱石は方鉛鉱や辰砂なんかがいい例だろう。
日常的に使われている銅も、弱いながら毒性を持つ。
この土砂の中には、弱い毒性を持つ鉱石の粉末が複数種類混ぜ込まれているようだ。
「こんな汚染された土砂を河に沈めるなんて……こんな事をしたら河の水も汚染されて……まさか」
脳内で昨日のマスターとの会話が反芻される。
味が変わっている、と、マスターは言った。
魚の味が変わったのは、絶対にこの汚染土砂のせいだろう。
水質が綺麗なままであれば、魚の味なんて変わるはずもない。
というより、味が変わってしまうほど、この河の水と魚は汚染されていると考えていいだろう。
「サンプルとして、これもアリエスに送っておこう」
僕は金属球を取り出し、その一部分を使って小さなカプセルを作り出した。
その中に汚染された土砂を入れ、懐にしまった。
「汚染された魚を食べ続けるとどうなるか……分からないのか? いや、もしかしたらそれが目的……?」
けど、それが何の結果に繋がるというのか。
僕はブツブツと呟きながら橋を渡り、例のヘパコライトが取れるという下流域へと向かった。
下流域に辿り着くまでに見た街の光景は、さきほどみたものとあまり変わらなかった。
しかしながら、まだこちらの方が活気付いている気がする。
まぁ気のせいかもしれないけどね。
下流域に着いたのは日が沈みかけた頃だった。
「ん? なんだあれ……?」
道から少し外れた茂みの前に、何かが転がっていた。
近付いて見てみると、紫色の毛をした小さな猫らしき動物だった。
猫らしき、というのはその動物には尻尾が四本生えていて、本来四本であるはずの足が六本生えていたからだ。
「生きてる……のか?」
僕が近付いてもピクリとも動かないが、胸の部分はゆっくりと上下していた。
指でつんつんと、突いてみても反応は無い。
「んがっ! マジかよ」
顔を見てみようと思い、猫らしき動物の態勢をずらしてみたのだが――。
その猫らしき動物の顔には、目が六つも並んでいたのだった。
そしてその口の端からは、真っ赤な血が筋となって垂れていた。
「お、おい! 大丈夫か! って言っても分からないよな……ど、どうすればいいんだ」
体を触ってみるとかなり痩せている。
あたふたと周りを見回しても、誰もいない。
石礫のペンダントを外し、猫のような動物を抱き上げて人を探した。
「すみません! この子怪我してるみたいなんですけど」
住民を見つけ、声をかけて近寄ると、住人は猫のような動物を見るや、ヒィッと声を上げて逃げるように行ってしまった。
この奇怪な風体だ、逃げられるのも仕方ないだろうけど……どうすればいいのだろうか。
と僕が途方に暮れていたところで、背後から声をかけられた。
そうだ、それがいい。
手紙を送ればアリエスや父もこの街の現状を把握して、何かしらの対応をしてくれるだろう。
『ごめんなさい、ごめんなさい……』
「く……」
脳裏にリンネの泣きじゃくる姿が浮かぶ。
どうにかしてあげたい気持ちはある、僕だってそこまで薄情じゃあないつもりだ。
けれどただの旅人に何が出来るというのか。
「とりあえず、手紙を送ろう……」
僕は呻くように呟いて河から上がり、衛兵の間を抜け、対岸へ向かうために橋を渡る。
荷馬車はすでに居らず、土砂の漏れたものが橋の上に残されていたのが横目に映った。
そして僕はなんとなく、本当になんとなく、その土砂に触れてみた。
「……これは……!」
触れた瞬間、本能的に理解出来た。
僕が鉱石魔法の使い手だからなのだろうか、残されていた土砂からある反応、鉱石反応が出た。
「毒性の弱い……鉱石の粉末……? それも複数あるだと?」
鉱石の中には強い毒性を持つ物や、弱い毒性を持つ物がいくつも存在する。
強い毒性を持つ鉱石は方鉛鉱や辰砂なんかがいい例だろう。
日常的に使われている銅も、弱いながら毒性を持つ。
この土砂の中には、弱い毒性を持つ鉱石の粉末が複数種類混ぜ込まれているようだ。
「こんな汚染された土砂を河に沈めるなんて……こんな事をしたら河の水も汚染されて……まさか」
脳内で昨日のマスターとの会話が反芻される。
味が変わっている、と、マスターは言った。
魚の味が変わったのは、絶対にこの汚染土砂のせいだろう。
水質が綺麗なままであれば、魚の味なんて変わるはずもない。
というより、味が変わってしまうほど、この河の水と魚は汚染されていると考えていいだろう。
「サンプルとして、これもアリエスに送っておこう」
僕は金属球を取り出し、その一部分を使って小さなカプセルを作り出した。
その中に汚染された土砂を入れ、懐にしまった。
「汚染された魚を食べ続けるとどうなるか……分からないのか? いや、もしかしたらそれが目的……?」
けど、それが何の結果に繋がるというのか。
僕はブツブツと呟きながら橋を渡り、例のヘパコライトが取れるという下流域へと向かった。
下流域に辿り着くまでに見た街の光景は、さきほどみたものとあまり変わらなかった。
しかしながら、まだこちらの方が活気付いている気がする。
まぁ気のせいかもしれないけどね。
下流域に着いたのは日が沈みかけた頃だった。
「ん? なんだあれ……?」
道から少し外れた茂みの前に、何かが転がっていた。
近付いて見てみると、紫色の毛をした小さな猫らしき動物だった。
猫らしき、というのはその動物には尻尾が四本生えていて、本来四本であるはずの足が六本生えていたからだ。
「生きてる……のか?」
僕が近付いてもピクリとも動かないが、胸の部分はゆっくりと上下していた。
指でつんつんと、突いてみても反応は無い。
「んがっ! マジかよ」
顔を見てみようと思い、猫らしき動物の態勢をずらしてみたのだが――。
その猫らしき動物の顔には、目が六つも並んでいたのだった。
そしてその口の端からは、真っ赤な血が筋となって垂れていた。
「お、おい! 大丈夫か! って言っても分からないよな……ど、どうすればいいんだ」
体を触ってみるとかなり痩せている。
あたふたと周りを見回しても、誰もいない。
石礫のペンダントを外し、猫のような動物を抱き上げて人を探した。
「すみません! この子怪我してるみたいなんですけど」
住民を見つけ、声をかけて近寄ると、住人は猫のような動物を見るや、ヒィッと声を上げて逃げるように行ってしまった。
この奇怪な風体だ、逃げられるのも仕方ないだろうけど……どうすればいいのだろうか。
と僕が途方に暮れていたところで、背後から声をかけられた。
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