国から見限られた王子が手に入れたのは万能無敵のS級魔法〜使えるのは鉱石魔法のみだけど悠々自適に旅をします〜

登龍乃月

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二章 旅立ちの日

34.不法投棄はやめましょう

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「なんだ?」

 顔を水面から出して、音の方を見ると――橋の真ん中あたりに荷馬車が何台も停まっており、その荷馬車の中身が河に投げ捨てられていた。
 投げ捨てている男達は、街中でたむろしていた男達とどこか雰囲気が同じだ。
 
「あれがリンネの言っていた荷馬車か……」

 荷馬車から捨てられている積荷は土砂、それも大量の土砂だ。
 荷馬車は反対側の橋にも数台停まっており、そこからも土砂が捨てられている。
 衛兵は知らんぷりをしているが、あれも認可を受けた上で捨てているのか?
 いくらシュティレ大河の水深が深いといっても、あんな大量の土砂を捨て続ければ、河に影響が出るに決まっている。
 水流が変わったり、独自の生態系のバランスが崩れたり、良い影響でないのは確かなのになぜあんな事を認めているのか。
 それに河に物を捨てるという行為は河を、水を侮辱している事、水の神を侮辱している事にも繋がる。
 四元教の教えにもしっかりと乗っている、禁忌と言える行為だろうに。
 他の国はいざ知らず、エレメンタリオの民であれば誰でも知っている事だ。
 土を捨てるのも同じように、地の神を侮辱している事に繋がる。
 両方の神の怒りを買う、などとは考えないのだろうか。
 こんな事をすれば、水の司祭と地の司祭が黙っているはずもないのに――。

「そう言えば――半年前に水の司祭が急逝した、とか言ってたな」
 前領主と同じ時期の死。
 リンネは新しい領主が来たとは言っていたが、水の司祭の話はしていない。
 となれば今この街にいる水の司祭は誰だ? 急逝したのは偶然か――?
 テルルは、というより多くの街には四元教の教会があり、そこにその街を担当する四司祭が必ずいるはず。
 火や風はそこまで関係無くとも、微塵も動かないというのはおかしい。
 四人の神にはそれぞれ司る領域というものがあるけれど、不可侵というわけでもない。
 大規模な森林火災や地震、水害が起きた時はみな手を取って協力しあうのが教えであり、規律だ。
 教えを破っている者達を黙認するなど……。
 
「んん……どうするか……」

 僕は悩む。
 僕はもうただの旅人だ。
 王家とも四元教とも関係の無い、ただの一般人だ。
 下手に首を突っ込んで、妙な事に巻き込まれたらたまったもんじゃない。
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