34 / 53
二章 旅立ちの日
34.不法投棄はやめましょう
しおりを挟む
「なんだ?」
顔を水面から出して、音の方を見ると――橋の真ん中あたりに荷馬車が何台も停まっており、その荷馬車の中身が河に投げ捨てられていた。
投げ捨てている男達は、街中でたむろしていた男達とどこか雰囲気が同じだ。
「あれがリンネの言っていた荷馬車か……」
荷馬車から捨てられている積荷は土砂、それも大量の土砂だ。
荷馬車は反対側の橋にも数台停まっており、そこからも土砂が捨てられている。
衛兵は知らんぷりをしているが、あれも認可を受けた上で捨てているのか?
いくらシュティレ大河の水深が深いといっても、あんな大量の土砂を捨て続ければ、河に影響が出るに決まっている。
水流が変わったり、独自の生態系のバランスが崩れたり、良い影響でないのは確かなのになぜあんな事を認めているのか。
それに河に物を捨てるという行為は河を、水を侮辱している事、水の神を侮辱している事にも繋がる。
四元教の教えにもしっかりと乗っている、禁忌と言える行為だろうに。
他の国はいざ知らず、エレメンタリオの民であれば誰でも知っている事だ。
土を捨てるのも同じように、地の神を侮辱している事に繋がる。
両方の神の怒りを買う、などとは考えないのだろうか。
こんな事をすれば、水の司祭と地の司祭が黙っているはずもないのに――。
「そう言えば――半年前に水の司祭が急逝した、とか言ってたな」
前領主と同じ時期の死。
リンネは新しい領主が来たとは言っていたが、水の司祭の話はしていない。
となれば今この街にいる水の司祭は誰だ? 急逝したのは偶然か――?
テルルは、というより多くの街には四元教の教会があり、そこにその街を担当する四司祭が必ずいるはず。
火や風はそこまで関係無くとも、微塵も動かないというのはおかしい。
四人の神にはそれぞれ司る領域というものがあるけれど、不可侵というわけでもない。
大規模な森林火災や地震、水害が起きた時はみな手を取って協力しあうのが教えであり、規律だ。
教えを破っている者達を黙認するなど……。
「んん……どうするか……」
僕は悩む。
僕はもうただの旅人だ。
王家とも四元教とも関係の無い、ただの一般人だ。
下手に首を突っ込んで、妙な事に巻き込まれたらたまったもんじゃない。
顔を水面から出して、音の方を見ると――橋の真ん中あたりに荷馬車が何台も停まっており、その荷馬車の中身が河に投げ捨てられていた。
投げ捨てている男達は、街中でたむろしていた男達とどこか雰囲気が同じだ。
「あれがリンネの言っていた荷馬車か……」
荷馬車から捨てられている積荷は土砂、それも大量の土砂だ。
荷馬車は反対側の橋にも数台停まっており、そこからも土砂が捨てられている。
衛兵は知らんぷりをしているが、あれも認可を受けた上で捨てているのか?
いくらシュティレ大河の水深が深いといっても、あんな大量の土砂を捨て続ければ、河に影響が出るに決まっている。
水流が変わったり、独自の生態系のバランスが崩れたり、良い影響でないのは確かなのになぜあんな事を認めているのか。
それに河に物を捨てるという行為は河を、水を侮辱している事、水の神を侮辱している事にも繋がる。
四元教の教えにもしっかりと乗っている、禁忌と言える行為だろうに。
他の国はいざ知らず、エレメンタリオの民であれば誰でも知っている事だ。
土を捨てるのも同じように、地の神を侮辱している事に繋がる。
両方の神の怒りを買う、などとは考えないのだろうか。
こんな事をすれば、水の司祭と地の司祭が黙っているはずもないのに――。
「そう言えば――半年前に水の司祭が急逝した、とか言ってたな」
前領主と同じ時期の死。
リンネは新しい領主が来たとは言っていたが、水の司祭の話はしていない。
となれば今この街にいる水の司祭は誰だ? 急逝したのは偶然か――?
テルルは、というより多くの街には四元教の教会があり、そこにその街を担当する四司祭が必ずいるはず。
火や風はそこまで関係無くとも、微塵も動かないというのはおかしい。
四人の神にはそれぞれ司る領域というものがあるけれど、不可侵というわけでもない。
大規模な森林火災や地震、水害が起きた時はみな手を取って協力しあうのが教えであり、規律だ。
教えを破っている者達を黙認するなど……。
「んん……どうするか……」
僕は悩む。
僕はもうただの旅人だ。
王家とも四元教とも関係の無い、ただの一般人だ。
下手に首を突っ込んで、妙な事に巻き込まれたらたまったもんじゃない。
1
お気に入りに追加
422
あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる