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二章 旅立ちの日
31.二日酔いってしんどい
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「お待たせしましたガイアスさん。これを飲んでください」
「うぅ……すみません……」
しばらく経ってから戻って来たリンネは、手に何かを持っていて、それを俺の口に放り込んだ。
「噛んでください。がりっと」
「んぐ……」
口の中に放り込まれた豆粒大のソレを、僕は言われた通りに奥歯で噛み砕いた。
途端に口の中に広がる清涼感。
まるで氷の塊を口の中に突っ込まれたかのようだ。
「お水です。ちょっときついかもしれませんがグイっといってください」
「ふぐぅ!」
言われるがまま、されるがままの僕だったが、口の中に水が流し込まれた途端、僕の口の中に強烈な冷気が広がった。
反射的に吹き出しそうになったけれど、グイっといけと言われたので口の中に広がる冷気ごと水を飲み込んだ。
「これで二、三時間横になっていればすぐよくなりますよ!」
「あ、ありがとうございます……」
飲み下した冷気が、僕の体の中で嵐のように暴れまわっている。
何を飲まされたのかは分からないけれど、リンネが大丈夫だと言うのだから、僕は大人しくそのまま横になり続けた。
体の中で暴れまわっていた冷気も、しばらくすると消えてなくなった。
それから約三時間後、扉をノックする音が聞こえ、扉の隙間からリンネが顔をのぞかせた。
「どうですかー?」
「あぁ、すごい楽です。ありがとうございました」
「よかったです! 二日酔いにはアレが一番効くんですよ!」
「そうみたいですね。驚きです」
僕の言葉は嘘でもやせ我慢でもお世辞でもない。
あれだけ酷かった頭痛も吐き気も気持ち悪さも、全部どこかにすっ飛んでいってしまったらしい。
頭もすっきり冴え渡っている。
「テルルは観光客がとても多くて、お魚も美味しいので皆さんお酒がとっても進むんです。それで次の日二日酔いになってしまう方が多くって……」
リンネが苦笑いを浮かべながら言った。
「あぁ、それで……」
「はい! でもあの薬、酒散痛錠っていう丸薬なんですけど、テルルでしか手に入らない隠れた名品なんですよ!」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ! シュティレ大河の下流域で取れる、ヘパコライトっていう鉱石が原料の一つになってるんですが、そのヘパコライトがそこでしか取れないんです」
「へぇ……鉱石が使われているお薬ですか。興味深いですね」
「ですが、それも例のごとく……」
「取るには許可が必要、というわけですか」
「そうなんです。しかもテルルでしか手に入らないものなので、許可証を取るのにもかなりの金額で……それが原因でお薬屋さんの販売価格も跳ね上がってしまい……」
「はぁ……一体何がしたいんですかね。そうまでしてお金が欲しい理由があるのでしょうか……民の首を絞めた所で結局最後は自分の首を絞めるだけだというのに」
「ホントですよ。前の領主様はとても良い方だったのですけど……急逝されてしまって。同じ時期に水の司祭様まで急逝されたので一時期街は大混乱でしたよ」
「同時期に、ですか……災難でしたね」
「はい。後任としていらっしゃったのが今の領主様であるヒソール様です」
「それから街が悪くなっていったと」
「そうです。昨日もお話しましたが、何人も直談判に行っているのですが、お屋敷から出て来ると人が変わったようになってしまうという噂で……」
「困りものですね、ですがリンネさん。一つ疑問なのですけど、お聞きしても?」
「なんですか?」
「リンネさんも知っての通り僕は旅の者です。そんな人間にどうしてこうもお話を?」
僕がそう問いかけると、リンネはハッと目を開いて俯いた。
「うぅ……すみません……」
しばらく経ってから戻って来たリンネは、手に何かを持っていて、それを俺の口に放り込んだ。
「噛んでください。がりっと」
「んぐ……」
口の中に放り込まれた豆粒大のソレを、僕は言われた通りに奥歯で噛み砕いた。
途端に口の中に広がる清涼感。
まるで氷の塊を口の中に突っ込まれたかのようだ。
「お水です。ちょっときついかもしれませんがグイっといってください」
「ふぐぅ!」
言われるがまま、されるがままの僕だったが、口の中に水が流し込まれた途端、僕の口の中に強烈な冷気が広がった。
反射的に吹き出しそうになったけれど、グイっといけと言われたので口の中に広がる冷気ごと水を飲み込んだ。
「これで二、三時間横になっていればすぐよくなりますよ!」
「あ、ありがとうございます……」
飲み下した冷気が、僕の体の中で嵐のように暴れまわっている。
何を飲まされたのかは分からないけれど、リンネが大丈夫だと言うのだから、僕は大人しくそのまま横になり続けた。
体の中で暴れまわっていた冷気も、しばらくすると消えてなくなった。
それから約三時間後、扉をノックする音が聞こえ、扉の隙間からリンネが顔をのぞかせた。
「どうですかー?」
「あぁ、すごい楽です。ありがとうございました」
「よかったです! 二日酔いにはアレが一番効くんですよ!」
「そうみたいですね。驚きです」
僕の言葉は嘘でもやせ我慢でもお世辞でもない。
あれだけ酷かった頭痛も吐き気も気持ち悪さも、全部どこかにすっ飛んでいってしまったらしい。
頭もすっきり冴え渡っている。
「テルルは観光客がとても多くて、お魚も美味しいので皆さんお酒がとっても進むんです。それで次の日二日酔いになってしまう方が多くって……」
リンネが苦笑いを浮かべながら言った。
「あぁ、それで……」
「はい! でもあの薬、酒散痛錠っていう丸薬なんですけど、テルルでしか手に入らない隠れた名品なんですよ!」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ! シュティレ大河の下流域で取れる、ヘパコライトっていう鉱石が原料の一つになってるんですが、そのヘパコライトがそこでしか取れないんです」
「へぇ……鉱石が使われているお薬ですか。興味深いですね」
「ですが、それも例のごとく……」
「取るには許可が必要、というわけですか」
「そうなんです。しかもテルルでしか手に入らないものなので、許可証を取るのにもかなりの金額で……それが原因でお薬屋さんの販売価格も跳ね上がってしまい……」
「はぁ……一体何がしたいんですかね。そうまでしてお金が欲しい理由があるのでしょうか……民の首を絞めた所で結局最後は自分の首を絞めるだけだというのに」
「ホントですよ。前の領主様はとても良い方だったのですけど……急逝されてしまって。同じ時期に水の司祭様まで急逝されたので一時期街は大混乱でしたよ」
「同時期に、ですか……災難でしたね」
「はい。後任としていらっしゃったのが今の領主様であるヒソール様です」
「それから街が悪くなっていったと」
「そうです。昨日もお話しましたが、何人も直談判に行っているのですが、お屋敷から出て来ると人が変わったようになってしまうという噂で……」
「困りものですね、ですがリンネさん。一つ疑問なのですけど、お聞きしても?」
「なんですか?」
「リンネさんも知っての通り僕は旅の者です。そんな人間にどうしてこうもお話を?」
僕がそう問いかけると、リンネはハッと目を開いて俯いた。
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