国から見限られた王子が手に入れたのは万能無敵のS級魔法〜使えるのは鉱石魔法のみだけど悠々自適に旅をします〜

登龍乃月

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二章 旅立ちの日

20.実態

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 と僕が意気込んで拳を突き上げた所で。

「ガイアスさんや。飯が出来たよ!」
「あっはい。今行きます」

 ノックの音と共に、フローの食事を知らせる声が扉の向こうから聞こえてきた。

「ふー! 食べた食べた、王宮じゃ味わった事のないシンプルで素朴な味だったな」

 一時間後、僕は膨れた腹を優しく撫でまわしながらベッドに転がった。
 夕食に提供されたのは、デイリーピッグのスパイス焼きに硬めの長いパン、なんだか分からない苦い葉っぱのサラダに、ほとんど具の入っていない塩分控えめなスープ。
 硬いパンはスープに浸し、柔らかくなった所を頬張って頂いた。
 スープをしっかりたっぷりと吸い込んだパンはプルプルで、口に含めば塩気の無い絶妙に微妙な味が口の中に溢れ出た。
 どれもこれも王宮では見たことのない料理で、ついテンションが上がって食べ過ぎてしまった。
 けどそのおかげで魔力もある程度回復した。
 食事をした後は、桶からお湯を汲んで体を流すというこれまた変わった入浴法の風呂に入った。
 ヘチマを乾燥させたタワシで体を洗うのだが、初めて使うものなのでフローに使い方を聞いた。
 ゴツゴツしていて、こんな物で体を擦ったら傷だらけじゃないか、と思ったのだけど、なんと水で濡らすと柔らかくなるのだ!
 なんて不思議なんだと騒いでいたら「アッハッハッハッハ! あんた本当に旅人かい?」と大笑いされてしまった。
 使った石鹸も実に獣臭くて新鮮だった。
 王宮では硬く、ハーブや果実が練り込まれた良い香りの石鹸を使っていたので、最初に匂いを嗅いだ時は鼻が曲がりそうだった。
 ぜひ記念に獣臭い石鹸と、不思議ヘチマを譲って欲しい、と頼むと、妙な顔をされたが快く譲ってくれた。
 
「珍しい物も譲ってもらえたし、後は魔法研究だな」

 さっそく増えた剣や槍、宝石を床に並べる。
 今の所、これら全てに共通する事は、形状がわかる事、名前を口に出した事、変化を口に出した事(宝石は変化させたわけではないのだが)。
 それから数時間、あれやこれやと思いつく限りの方法を試していった結果。
 鉱石魔法とはなんたるか、を幾らか理解出来た。
 と、思う。
 そんな数時間で全てを知れるほど、鉱石魔法は浅く無いけれど、とりあえず現段階で判明した事をノートにまとめた。
 まず剣と槍――というか鉄。
 鉄で出来た剣と槍は、僕のイメージで簡単に形状を変化させる事が出来る。
 ナイフ、メイス、棒、手斧、戦斧、ハルバード、ランス、槍などなど。
 僕が形状を把握していれば、どんな得物にも変化した。
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