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二章 旅立ちの日
19.生み出されたモノ
しおりを挟む「なーんて言っても何から始めればいいのやら」
鉱石、宝石、金銀財宝、剣に武具、魔道具に魔導書、小麦や肉やエトセトラ。
物の価値を知らなければ騙される事もあるだろうし、なんせ僕は世間知らずのお坊ちゃんだ。
甘言を言われたり、調子の良い事を言われればきっとすんなり騙されて、いいように使われてしまう自信が僕にはある。
『一度外に出れば良い者だけではありません。よからぬ事を考える悪者も、それはそれはたくさんいます。何が良しで何が悪いのか、それも自分自身で考え、決めなければならぬのですよ。善悪の判断基準、ですか? そうですね……一つの考えとしては法に背いているか否か、でしょうかね。しかしながら言わせてもらいますと、一番大事な事は自分の心が許せるか否か、だと私は思っておりますよ』
とかアリエスは言っていたけど、自分の心の正しさがどこにあって、どこを向いているのかも分りゃしない。
はぁ、と僕はため息を吐き、床に無造作に転がっている小剣を手に取った。
この剣だってそうだ。
他人を守る為に振るい、人を斬ればそれは良い事。
他人を害する為に振るい、人を斬ればそれは悪い事。
しかしながら、他人を害する為に剣を振るった者が、実は他人を守る為に剣を振るっていたのならそれはどうなる?
分からない。
考えたところで堂々巡りだ。
「剣……の材質は鉄……鉄って鉱石だよな」
よくわからない思考の坩堝に陥りそうになり、その矛先を剣先に向ける。
「鉄繋がりでこの剣が二本、三本に増えたら面白いんだけどな。ま、そりゃ無理か」
と言った僕が悪かった。
次の瞬間、ガランゴロン、と僕の持っている剣が二本、床に転がった。
「……うっそー……」
宝石が出た時と同じくらい、呆気にとられながら転がる剣を拾う。
柄や装飾なども鉄で再現されており、寸分違わない馴染み深い剣が僕の手の中にあった。
これは参った。
まさか本当に増えるとは思わない。
出来心だったのだ。
ちょっとした出来心で言ってみただけなのに、息を吸うように、息を吐くように自然に出来てしまった。
「え、これは宝石商人と武器屋の並行営業ですか?」
槍も試してみたけれど、剣と同様に全く同じ形状、全く同じ装飾の槍が出て来た。
「うぅん……どうしてこうなった……」
これが鉱石魔法なのか? それにしては便利すぎじゃあないか?
「まてよ?」
僕の鉱石魔法の適性ランクはS。
魔法はランクごとに使える術も、規模も、威力も精度も違う。
例えば火の適性がEランクであれば、指先に火を灯したり、そよ風を起こす程度の魔法しか使えない。
Sランクともなれば、火の槍の雨を降らせたり、嵐を呼び操作してみせたり、岩石で出来た兵士を作り出せたりもする。
であれば、宝石を生み出したり、剣や槍を複製出来たのもSランクだから、とも考えられる。
となれば……今やるべき事は一つ、鉱石魔法で何が出来るか、どこまでやれるのかを模索するべきだ。
幸いにも魔力が切れて前後不覚になったとしたとて、ここは安全なベッドの上だ。
やらない手はない。
「よし! やるぞー!」
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累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
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