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二章 旅立ちの日
13.寝床
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今夜の寝床は運よく決まった。
太陽はまだ空のてっぺんにあるのだけれど、特に急ぐ旅でもないので言われるがまま、おばちゃんの家に伺うことにした。
一応、朝早く出てのんびり歩き、初めて見る景色を堪能するという旅のルール的なものは決めてある。
夜は夜でいいものだけれど、情景を楽しむならやはり朝から夕方までだろう。
なんせ王都とは違い、街灯も無いし、あるとすれば月の光だけ。
夜の魔物は攻撃性が高い種類も多い。
訓練を重ねてきたとはいえ、無駄な戦いに手を出すようなバーサーカーでもない。
討伐をメインにする冒険者や傭兵の中には、そういった人達も少なからずいるだろう。
けれど、僕は平和主義者だ。
必要の無い戦いをわざわざ始める必要も、する必要も無い、とアリエスも言っていた。
人には理性があり、知恵があり、思いやりがあり、優しさがある。
いわゆる良心というやつだ。
だのに、そういう人としての量分をかなぐり捨てて暴力で解決しようというのはよろしくない。
と、僕は思う。
まぁそれは人対人の話であって、夜に出没する気性の荒い肉食獣に対しての話ではない。
獣に対して話し合いを望んでも、その鋭い爪で切り裂かれるか、尖った牙で食い破られるかの返答しかいただけないだろう。
食うか食われるか、デッドオアライブ、デッドオアデッド。
そりゃあいくら平和主義者な僕であっても、自分が喰われそうな状況になれば野性を解放するしかない。
人としての野性、つまりは暴力、武力、正当防衛。
人に肉を裂けるほどの爪は無いし、一瞬で食いちぎるほどの咀嚼力と牙もない。
だから人は武器を手に闘う。
徒手格闘で魔物を相手取るアリエスなんていう酔狂な人物もいるけれど、あの人は色々とおかしいのだ。
真似をするものでもない。
というか出来ない。
魔導師のくせに近接格闘も達人で? デコピン一発で岩を粉砕するような? 掌底で地面を陥没させるような?
そんな馬鹿げた真似が、今の僕に出来るわけがない。
なんせ僕は所詮、十五年の歳月をかけて温室でぬくぬくじっくりしっとりと育てられたお坊ちゃんだ。
実践経験のない素人に毛が生えたようなもの、頭でっかちだ。
卑屈になっている、とかでなく、ただ客観的に自分を俯瞰して見てみれば、世間的にはそうなんだというだけの話。
技術を磨いても、実践で役立たなければ意味が無い。
だからと言って自分から率先して、魔物を狩りに行くような度胸もない。
ようはヘタレだ。
だからこんな陽の高い頃から、安全に寝れる場所を確保しようとする。
命大事に。
蛮勇と勇気は違うのだ。
それに魔物避けの簡易結界石だって、何度も使えるわけじゃない。
これは将来を見越した立派な計画なのだ。
と自分に対し、長々とした理由付け(正当化ともいうが)をし終わった僕は、おばちゃんに案内された部屋に荷物を下ろした。
太陽はまだ空のてっぺんにあるのだけれど、特に急ぐ旅でもないので言われるがまま、おばちゃんの家に伺うことにした。
一応、朝早く出てのんびり歩き、初めて見る景色を堪能するという旅のルール的なものは決めてある。
夜は夜でいいものだけれど、情景を楽しむならやはり朝から夕方までだろう。
なんせ王都とは違い、街灯も無いし、あるとすれば月の光だけ。
夜の魔物は攻撃性が高い種類も多い。
訓練を重ねてきたとはいえ、無駄な戦いに手を出すようなバーサーカーでもない。
討伐をメインにする冒険者や傭兵の中には、そういった人達も少なからずいるだろう。
けれど、僕は平和主義者だ。
必要の無い戦いをわざわざ始める必要も、する必要も無い、とアリエスも言っていた。
人には理性があり、知恵があり、思いやりがあり、優しさがある。
いわゆる良心というやつだ。
だのに、そういう人としての量分をかなぐり捨てて暴力で解決しようというのはよろしくない。
と、僕は思う。
まぁそれは人対人の話であって、夜に出没する気性の荒い肉食獣に対しての話ではない。
獣に対して話し合いを望んでも、その鋭い爪で切り裂かれるか、尖った牙で食い破られるかの返答しかいただけないだろう。
食うか食われるか、デッドオアライブ、デッドオアデッド。
そりゃあいくら平和主義者な僕であっても、自分が喰われそうな状況になれば野性を解放するしかない。
人としての野性、つまりは暴力、武力、正当防衛。
人に肉を裂けるほどの爪は無いし、一瞬で食いちぎるほどの咀嚼力と牙もない。
だから人は武器を手に闘う。
徒手格闘で魔物を相手取るアリエスなんていう酔狂な人物もいるけれど、あの人は色々とおかしいのだ。
真似をするものでもない。
というか出来ない。
魔導師のくせに近接格闘も達人で? デコピン一発で岩を粉砕するような? 掌底で地面を陥没させるような?
そんな馬鹿げた真似が、今の僕に出来るわけがない。
なんせ僕は所詮、十五年の歳月をかけて温室でぬくぬくじっくりしっとりと育てられたお坊ちゃんだ。
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卑屈になっている、とかでなく、ただ客観的に自分を俯瞰して見てみれば、世間的にはそうなんだというだけの話。
技術を磨いても、実践で役立たなければ意味が無い。
だからと言って自分から率先して、魔物を狩りに行くような度胸もない。
ようはヘタレだ。
だからこんな陽の高い頃から、安全に寝れる場所を確保しようとする。
命大事に。
蛮勇と勇気は違うのだ。
それに魔物避けの簡易結界石だって、何度も使えるわけじゃない。
これは将来を見越した立派な計画なのだ。
と自分に対し、長々とした理由付け(正当化ともいうが)をし終わった僕は、おばちゃんに案内された部屋に荷物を下ろした。
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