国から見限られた王子が手に入れたのは万能無敵のS級魔法〜使えるのは鉱石魔法のみだけど悠々自適に旅をします〜

登龍乃月

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一章 逸脱者

4.これから

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 そして祝賀パーティーは盛大に、実に煌びやかに華やかに開催された。
美しく飾られた美味しい宮廷料理に色とりどりの酒、ジュースなどが振る舞われていた。
 エレメンタリオ国内だけでなく、諸外国からも大勢の王族や貴族、著名人や有名人などが招かれていた。
 各国の王族貴族が、それぞれの姫や王子を連れて父に挨拶をし、僕達子供達も定文の自己紹介を繰り返していく。

「将来が楽しみですなぁ」
「利発な目だ」
「既に貫禄もありますなぁ」

 などという言葉が無数に飛んでくる。
 兄姉達はいざ知らず、世間的に死ぬ事になっている僕にとっては、苦痛と言ってもいいくらいだった。
「ごきげんよう、アース殿下」
「アース・グランシャリオ、三男にして地の使徒となるべくって……ご、ごきげんよう。えっと」
「ラピスラズリ・クルレルダイトと申しますわ」
「ラピスラズリ・クルレルダイト……」
「アース殿下、どうぞラピスとお呼び下さいませ」
「あ……はい。ラピス様」

 心ここにあらずの挨拶をしていると、僕と同年代か少し上らしき姫君が微笑んでいた。
 何人もの姫君と挨拶を交わしたが、ほぼ上の空で声も顔も覚えていない。
 けどこの子は違った。
 何が違うのかと言われたら、その正体は全くもって分からないけれど。
 何だろう? 存在感だろうか?
 僕の本能に直接訴えかけてくるような存在感と、海よりも空よりも深い濃い蒼い瞳。

「どうかしまして? 私の顔に何か付いておりますでしょうか……?」
「はっ! いっいえいえ! ただその、いえ、何でもありません。失礼致しました」

 はぁ~なんて素敵な声なのだろうか……。
 不思議そうに首を傾げるその仕草もまた素敵可愛い。

「アースよ。言葉に急に熱が入ったようだが」
「ちっ! ちち……陛下! そんな事は!」

 横で見ていた父がそんな事を言った。
 口元が少しニヤついてる……。

「よいよい。クルレルダイトの姫君は美しさで評判だからな」
「陛下からのお言葉、もったいなく思いますわ」

 ラピスはそういって、ドレスの端をつまみ軽く礼をした。
 父はうむ、と言ってラピスの父である、クルレルダイト王との談話に戻った。
 けど、僕にとってはきっとこれが……最初で最後の出会いになるんだろう。
 僕は一抹の夢として、この出会いを胸に刻みつけることにした。
 そんな僕の思いを他所に、半日以上をかけたパーティーは幕を閉じた。
 翌日。

「アースよ」
「はい。お父上」

 僕は執務室にて、だいぶ血色の良くなった父を前にしていた。
 机の上には、大ぶりな石がはめ込まれたペンダントが置いてあった。

「アース、いやガイアスよ。これをお前に授ける」
「これは……?」
「特に名称などはないのだが……そうだな、石礫の首飾りとでも呼ぼうか」
「石礫……ですか」

 父はペンダントを手に取り、嵌っている石を見つめた。

「これには色々な魔法が込められておってな。アリエスが作った渾身の魔道具だよ」
「いいのですか? そんな貴重な物を……」
「よい。何しろこれはお前の為に作られた一点物だからな」
「お父上……いえ、陛下ありがとうございます」
「これに込められているのは、簡単に言えば認識阻害の魔法だ。これを付けている限り、お前は道端の石ころと同じような存在になる。姿を見られても会話をしても、お前は次の瞬間忘れ去られる。そしてどんな魔力探知でもひっかかる事はあるまい」
「なるほど、ゆえに石礫というわけですか」
「そうだ。お前の死は明日発表する。そこから五年間お前は誰にも認知されず、会話も無い。仮に一言二言会話をするような事があっても、お前の存在は誰の記憶に止まる事も無い」
「それは……中々に辛そうですね」

 誰からも認識されず相手にされず、記憶にも残らずに、五年間を生き抜かなければならない。
 想像しただけでゾッとする。
 けれど仕方ない。
 アース・グランシャリオは明日死ぬのだから。
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