表紙へ
上 下
3 / 35
1巻

1-3

しおりを挟む
「アダム様、スキルの発動を」
「よし、【冥府逆転】!」
「ヒヒィイーーーン!」
「は?」

 えっ何、ちょっと待って、今、馬の鳴き声聞こえたぞ。
 俺は確かに聞いた、そして見た。半透明の一本角の馬がモニカの遺体に溶け込んでいくのを、しっかりとこの目で見た。あの馬の姿ってやっぱりアレだよな。補填てまさか、アレとモニカの魂を融合させたってのか?
 スキルを発動しながらも、俺の頭の中は軽いパニックになっていた。
 しかし、スキルはうまく作用しているらしく、目の前でモニカの遺体がみるみる修復されていく。そして数分後、モニカは地面に横たわり、静かに呼吸を始めたのだった。


 ――【モニカ】をサーヴァントとして使役可能となりました。スキル【王の威光】により【モニカ】のステータスが上昇しました。スキル【徴収】によりモニカのステータスがストックされました。


 成功だ!

「やっ、た……! よし!」
「ワォーーーン!」
「おめでとうございますアダム様! 覚えたてのスキルをすぐさま使いこなすなんて、さすがは王! もう私メロメロですわ!」
「メロメロて……なぁリリス、あの馬ってさぁ……ユニコーン、だよな」
「はい! 仰る通りです! 魂の補填として、幻獣界よりユニコーンの魂を召喚しました!」
「やっぱりかああああ! って事は何か!? モニカはユニコーンと人のハーフになっちゃったの!?」
「まぁ、魂が、ですけれど……あいにくこの方の魂に適合するのがユニコーンしかおりませんで……ダメでしたか?」
「それによって何か行動とか意識とかに変化は起きないか?」
「そこは大丈夫です!」
「ならいいんだけど……ん? この杖は……?」

 すぅすぅ、と寝息を立てるモニカの体の陰に、一本の錫杖しゃくじょうが隠れているのを見つけた。
 地は白く、所々に金の紋様もんようやラインが刻まれていて、意匠いしょうは豪奢だがスッキリとした、どこか高貴さを感じさせるものだった。

「これはユニコーンの魂の残滓ざんしが物質化した物ですね。ユニコーンズホーンとでも名付けてあげましょうか」
「ユニコーンズホーン……そしたらモニカは聖女だし、聖杖せいじょうユニコーンズホーンにしよう」
「とても良いネーミングセンスです!」

 聖杖ユニコーンズホーンはモニカの専用武器になり、さらに聖なる力を高めてくれるだろう。
 それと……このギガンテスとセンチピードリッパーの死体はどうしよう、センチピードリッパーの甲殻こうかくや脚は一級品の素材だし、ギガンテスの外殻や骨も色々と使い道があるはずなんだよな。
 持てるだけ持って帰ろうかな?
 とか考えている時、またしても理の声が聞こえた。


 ――スキル:【おう宝物庫ほうもつこ】が解放されました。


「うん。なんとなくこうなるんだろうなって思ってたよ」

 直感の赴くままに宝物庫を発動すると、センチピードリッパーとギガンテスの下に黒いうずのような穴が開き、そのまま死体を呑み込んでいった。
 ついでに俺を捨てたバルザック達の荷物も宝物庫に投げ込んでおいた。
 そして未だ目を覚まさないモニカを、大きくなったメイ達の背中に乗せて、S級ダンジョン、葬滅の大墳墓を後にしたのだった。


 第二章  決別


「ダウンズ! 右からも来るぞ!」
「くっそぉ! 次から次へと雑魚共が!」

 俺、バルザックが率いるラディウスは、葬滅の大墳墓を脱出するため走り続けていた。

「ジェニス! 矢を惜しむな!」
「はいよぉ! 帰ったらたかってやるからな! バルザック!」
「リン! 魔力残量と配分に気をつけろ!」
「言われ……! なくても!」

 俺は焦っていた。いざとなったら雑用のアダムを生贄にして逃走する、というプランは前からパーティ内で決めていた事だった。
 元々パーティメンバー達はアダムの事をこころよく思っていない。というよりも、そうなるように俺が仕向けていた。
 ダウンズは頭が悪い分扱いやすい。強い者には弱く、弱い者には強く出るという卑怯ひきょうな男だ。俺が黒だと言えば、それが白でもダウンズは黒だと言うだろう。
 リンは頭は良いが幼く、その点で誘導する事は簡単だった。
 ジェニスは元々俺に惚れ込んでいるため、俺に反対する道理がない。ただ計算外だったのはモニカの存在だった。
 聖職者らしく堅物な彼女は、神がどうこう、良心がどうこうと猛反対をしてきたのだ。
 結局、アダムを生贄にした直後、モニカは俺の制止も聞かずにすぐさま引き返していった。そしてその反動が今まさに来ている。
 回復と補助の要であったモニカの抜けた穴は非常に大きい。
 高難度のダンジョンで、回復役のヒーラーやプリーストがいないなど前代未聞だ。
 回復アイテムもあるにはあったが、それも全てアダムと一緒に捨ててきてしまった。おかげでまだ地下七層だというのに、メンバーは回復も出来ずボロボロの状態だった。
 今までは先行させていたアダムにより、ある程度戦闘は回避出来ていた。だが今はそれもない。

「ちくしょう! ふざけやがって!」

 眼前のモンスターを叩き切りながら、俺は思わず怒号どごうした。
 実の所、アダムと俺は同じ村の出身だった。
 アダムは幼い頃からモンスターと仲が良く、よく一緒に野山を駆けていた。
 俺は剣の道場に通いながら、高い俊敏性しゅんびんせいを持ち、モンスターを従えるという特異な事をしているアダムに、純粋な好意と軽い尊敬を向けていた。
 武者修行のために村を出た俺は、数年後に王都で栄誉えいよある王国軍戦士長に任命される事になる。そしてその頃に詐欺さぎにあい、一文無しになって困っているアダムと再会し、パーティに誘った。
 俺は奴を覚えていたが、奴は俺の事を覚えてはいなかった。それがとても腹立たしく、苛立いらだった。
 紆余曲折うよきょくせつを経て、戦士長の座を引いた俺は冒険者となり、ラディウスを立ち上げた。
 始めの頃は軽い悪戯心いたずらごころだったアダムへの冷たい対応は、いつしか定着し、俺はそれを利用しパーティの底辺である雑用係としてこき使った。
 アダムの役割を俺は理解していた。しかし、ここまで影響があるとは予想もしていなかった。
 だが、短期間でS級パーティまで上り詰めたのは、決してアダムだけの力ではない、俺達の力であり、努力の結果なのだ。
 奴がラディウスの大黒柱だいこくばしらだったなど認めてたまるか。
 怒りと悔しさをぶつけるように俺達はダンジョンを駆け抜けていき、結局満身創痍まんしんそういで葬滅の大墳墓から脱出したのだった。


 ◇ ◇ ◇


「なぁリリス、頼むから変な真似しないでくれよな」
「何を言うのじゃ? わらわは至って真面目じゃぞ」

 葬滅の大墳墓から脱出し、俺とリリスはのんびりと王都へ戻ってきた。そして今、冒険者ギルドの近くの路地裏で最後の確認をしている。

「その口調は?」
「父バハムートエデンより、下々の前に出る時は毅然きぜんとし高貴であれ、と口酸っぱく言われておるのでな!」
「そういう所だよ」
「はぇ?」

 誇らしげに胸を張り、絵画から飛び出して来たかのような美貌で首を傾げるリリスは、文句なしに可愛い。
 すれ違う人すれ違う人が振り向いてしまうくらいだ。
 俺は思わず鼻の下が伸びそうになるのをぐっとこらえ、真面目な顔でリリスの目を見る。

「人間を下々とか言っちゃダメなの、分かる?」
「じゃが……」
「じゃがもイモもない。俺の言う事を聞いてくれないのか……?」
「聞きます聞きますわんわん!」
「オンオンオン!」

 俺がちょっと悲しそうな顔をして目線を落としてみると、リリスは掌を返してわんわん言い出した。
 その様子に驚いたメイ達も、釣られてわんわん言い始めた。

「わんわんて……」
「このケルベロスもよくわんわん言ってるし、アダム様はケルベロスには甘々だし、私もわんわん言えば甘々してくれるかなぁって」
「そりゃケルベロスのメイ達と龍人のリリスは違うだろ……っと話がズレたけど、人間を見下す発言はなしだ。それと俺の事は様付けしないでいい。変な目で見られそうだし! なんならずっと黙っててもいいからな!」
「アダム様がそう仰るのであれば……」
「様がついてるもう一回」
「うう……アダムさん……ま」
「誰がサンマか」
「ひぇえアダムさんんんん」
「それでよし」
「妻である私が夫をさん付けなんて……父に見られたらシバキ倒されますわ……」
「いやむしろさん呼びの方が多いから! ってかまだ妻じゃにゃい!」
「あら、にゃいですって可愛い」
「揚げ足取るのはいいんだな!」

 こんなやり取りをしていると、背後からおずおずと声が聞こえた。

「あの……アダムさん……?」
「はい? あ、モニカ、おかえり。どうだった?」
「使いご苦労、控えてよし」
「おいリリス、やめろ」
「ふええんごめんなさいアダムさんんんん」
「あ、あはは……お元気ですねリリスさん……」

 モニカは、葬滅の大墳墓を出て数時間してから目を覚ました。
 初めはかなり混乱しており、センチピードリッパーに蹂躙される光景がフラッシュバックしたのか、取り乱して大変だったが、今はなんとか正気を取り戻している。
 そんなモニカには、冒険者ギルドの様子をこっそり見てきてもらったのだ。

「それでどうだった?」
「……私達のお別れ会をしていたよ。ギルドの前にもしっかりモニカ、アダムのお別れ会って垂れ幕があったわ。私達が帰るまでに多少日数の差があったにしても……仕事が早いギルドね」
「バルザック達も俺達が生きてるだなんて思ってもないだろうな」
「私が生き返ったのはアダムさんとリリスさんのおかげ……感謝してもしたりないわ」
「俺は何もしてない、助けてくれたのはリリスだ」
「違います! アダム様さんが王としてお目覚めになられたからこそ!」
「王、か……まぁそれは置いといて、あいつらの鼻っ柱を折りに行こうか!」
「はい!」
「アダムさんまを裏切った奴らがどんな顔をするか楽しみね!」
「ウォゥオゥウ!」
「だから誰がサンマだ」


 俺達は意気揚々いきようようとギルドの扉を開け、事務処理をしていた受付嬢のシムスへ明るく元気よく声をかけた。

「やぁ。ちょっと聞きたいんだけど、アダムとモニカのお別れ会ってまだやってる?」
「え……あ、はい……ってぇぇえええあああだアダムさん!? なんで!?」

 下を向いていたシムスは俺の顔を見るなり飛び上がって、俺が思っていた通りのリアクションを取ってくれた。

「なんでって生きてるから?」
「ほ、ほほほほんとにアダムさん!?」
「おい! アダムさんがいるぞ!?」
「マジか!? 名誉の死を遂げたとか言っていたのに!」

 シムスが大声で騒ぐものだから、奥の扉――恐らくあの奥の部屋で俺達のお別れ会をしてるんだろう――から出てきた冒険者達まで騒ぎ出した。この反応も織り込み済みなんだけどね。

「アダムさん! 俺ァ信じてましたよ!」
「嘘つけ! コイツ、アダムさんの事好き放題言ってましたぜ!」
「おいてめぇふざけんな!」
「モニカさん! あぁ俺の天使モニカさんだ!」
「ちょっちょっと待っててくださいね!? マスタああー! アダムさんとモニカさんがああああ!」

 シムスは一気に騒がしくなったフロアで一段と騒がしくわめきながら、奥の扉を蹴り飛ばして中に飛び込んで行った。
 そして数分後、扉からワラワラと人が飛び出してきて、俺達はあっという間に囲まれてしまい――

「アダム! 生きててくれたのか!」
「あぁ。おかげさまでな」

 白々しいセリフと態度で、バルザックが俺の前に出てきた。その後ろには憎々にくにくしい面々がいる。

「おいアダム! 俺らの荷物はどこだ?」
「は?」
「あ? は? とはなんだ。てめぇ調子乗ってんのか?」

 とまぁこんな具合でいつものようにダウンズが凄んでくるが、コイツはもはや仲間でもなんでもないし、元々好きでもない。
 自分がトドメの魔晶石を放り投げたくせに、荷物の事を聞いてくるなんて……俺がここにいる事で立場が逆転していると分からないくらいには、ダウンズの頭は筋肉で埋め尽くされているらしい。

「ダウンズ、黙ってろ」
「いいや黙れないねバルザックさん。こいつはちょっと勘違いしてるみてぇだ」
「勘違いしてるのはお前だよ、ダウンズ。死んだはずの俺がここにいる事がどれだけお前達に都合が悪いか、分かってないみたいだな」

 ダウンズ、お前いくら脳筋だとしても、もう少し頭を使った方がいいと思うぞ。

「んだと……? どういう意味だ!」
「もう一度、ちゃんと話を聞こうじゃないか」

 ここまで言っても理解しないダウンズの肩を叩き会話に割り込んできたのは、ギルドマスターであるグラーフだった。

「バルザック君、確か君達はこう言ったね。モニカはフロアボスに一刀両断され、さらにアダムは【エクスプロード】の魔晶石により自爆を図り、君達の逃走を手助けした。名誉ある死をギルド全体で悲しみ、英雄として伝えていきたい、と」

 なるほど、そういう筋書きになっていたのか。
 グラーフに睨みつけられたダウンズは、舌打ちをしてバルザックに目で助けを求めた。
 しかしバルザックは無言で首を振り、顔面蒼白になっていた。それはリンやジェニスも同じだ。
 おおかたダンジョン内での死体の確認が不可能なのをいい事に、グラーフに嘘の説明をしたのだろう。だがしかし、俺とモニカはこうして無事に帰ってきてしまった。
 つまり、虚言きょげん、偽りの申告だというのは誰の目にも明らかだった。
 しん、としたフロアに集まる数十人の冒険者のさげすむような視線が、ラディウスに突き刺さる。

「アダム君、モニカ君。実際の所は……どうなんだい?」
「はい、グラーフさん。実は……」
「おいアダム! てめぇ分かってんだろうな!」
「ダウンズ君は黙っていてくれたまえ」
「チッ……!」

 物凄い形相ぎょうそうで睨み付けるダウンズをグラーフが制し、俺は葬滅の大墳墓で起きた一幕を語った。
 話の中でモニカは最後の瞬間を思い出したのか、小さくカタカタと震え、涙ぐんでいた。
 リリスは部屋の片隅で大人しくしてくれているけれど、瞳は怒りに染まっており、すぐにでもダウンズへ飛びかかっていきそうだった。


「なるほど……これは、重罪だな」
「なんでだよ! 仕方ない事だったんだ! そうだろアダム!」
「バルザック君、ダウンズ君を少し黙らせてくれないか?」
「申し訳ありません……ダウンズ、ホントに少し黙っていろ」
「クソがっ!」

 このに及んで悪態をついて椅子を蹴り飛ばすダウンズは、ある意味凄いとは思う。だが、この恐れ知らずな性格では、長生きは出来なそうだな。

「バルザック君、君達にはしばらく謹慎処分を言い渡す。反省し、正式な処分を待ちたまえ」
「分かり、ました」

 ひとまずここでの話は落ち着いたと思い、俺は話題を切り替えた。

「葬滅の大墳墓で得たアイテムや素材はギルドに寄付します」

 あの時ゲットしたアイテムや素材、捨てようかとも思ったけど……コイツらの目の前でギルドに寄付すれば、それなりに気分も晴れるかもしれないと思って持ってきたのだ。

「いいのか?」
「構いません、俺には使えない物ばかりですので」
「ならば……アイテムは買い取らせてもらおう」
「そうしてくれるとありがたいです。元は捨てようと思っていた物なので。あぁ、あとこの装備も良かったら買い取って貰えませんか?」

 鬼岩窟でバルザックから貰った鬼王の胸当てを、拳でコンコンと叩き、グラーフを見る。

「鬼王の胸当てというレア装備だとバルザックに聞いたんですけど……ダメですか?」

 しかし、グラーフの返答は驚くべきものだった。

「何……? いや、申し訳ないが……その胸当ては市販品の、初心者向けのアイアンプレートだ。買い取る事は出来ない」
「えっ……そんな……」

 衝撃の一言に俺は思わずバルザックを見るが、当の本人は一向に目を合わせようとしない。
 なるほど、初心者向けの市販品をレア装備だと言ってたって事か。見抜けない俺も、馬鹿だな。
 ダウンズを見れば、下卑げびた笑いを浮かべて俺を見下すように見つめている。内心ではさぞかし大笑いしている事だろう。
 ホント、なんで俺はこんな奴らのために……本当に馬鹿だった。

「アダム君、すまん……」

 グラーフが本当に申し訳なさそうに頭を下げてくれた。
 悪いのはグラーフではなく、無知な俺だ。
 でも、そんな俺を笑う者は、ダウンズを除いて誰一人いなかった。
 むしろ、フロアにいる全員が、軽蔑けいべつ眼差まなざしをラディウスに向けていた。

「S級パーティだからって、良いチームとは限らねぇんだな」
「しっ! 聞こえるぞ!」
「憧れてたのに……ただのゴミじゃん」
「俺の天使モニカさんを見捨てるだなんて腐りきってやがる」

 ヒソヒソ話は徐々に広がっていき、明らかに聞こえる声で非難する人も出てきた。

「いえ、いいんです。それじゃ買い取り出来る物だけよろしくお願いします」
「分かった。ところで……君のサーヴァントが変わっているようだが?」
「コイツらは……変わってませんよ。ちょっと融合しちゃっただけなんで」
「それは充分変わったと言うんだ……一体何が起きたというんだ?」
「あはは……まぁ、それはおいおいお話ししますよ」
「分かった」
「メイちゃん達が融合……ですか……にわかには信じられませんが確かにこの顔はメイちゃん達ですよね……」
「「「クゥーーン」」」

 シムスはメイ達の頭を撫でくり回しながら、摩訶不思議な物を見るかのようにメイ達の瞳を覗き込んでいる。メイ達は特に気にする様子もなく、空気の抜けるような鳴き声を発した。

「まさかケルベロスになっちゃうなんて……びっくり山を越えて地平線ですよ」
「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」
「それくらい驚いてるって事です! もう! でも、この子達の呼び名ってどうするんですか?」

 シムスは少しも怖がるそぶりを見せないで、メイ達の頭の一つを撫でた。

「それならもう考えてある」
「さすがアダムさん! 相変わらず仕事が早いですね!」
「そうかな?」
「はい! 私は常々思っていましたよ? 細かい所にも目が向くし、気配りも上手だし、何より優しいですし」
「それ仕事が早いうんぬん関係ないんじゃ……?」
「いーんです! さ! メイちゃん達の新しいお名前を!」

 シムスの勢いに押されながらも、俺は考えていた、メイ達の新たな名前を発表する。

イ、クス、リム、三位一体〝メルト〟だ!」
「三位一体メルトですね!」
「違うそうじゃない」
「あはは! 冗談ですようもうー!」
『我が名はメルト!』
『地獄の番犬!』
『だが実際は!』
『『『マスターの番犬!』』』
「分かったから……元気だなぁほんと」

 どうやらメルトの言葉は俺とリリスにしか理解できないらしく、他の人にはワンワン、としか聞こえないみたいだ。

『理由は分からないけど』
『体の中から』
『力がごっぽごっぽと湧いてくる!』
『『『我ら! 三位一体! けるべろしゅっ!』』』
「噛んだな」
『噛んでないよ!』
『噛んだのはメイ!』
『違うよ! ルクスだよ!』
「はいはい、もう少しだから大人しく待ってような」
『『『は~い』』』

【多言語理解】で、メルトが何を考えて何を言っているかが理解出来るようになったはいいが……よく喋るんだなぁ。
 前からこうだったのか、ケルベロスになった事でお喋りになったのか……ま、可愛いからいいんだけどな!


しおりを挟む
表紙へ

あなたにおすすめの小説

元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました

きゅちゃん
ファンタジー
元エリート (?)銀行員の高山左近が異世界に転生し、コンサルタントとしてがんばるお話です。武器屋の経営を改善したり、王国軍の人事制度を改定していったりして、異世界でビジネススキルを磨きつつ、まったり立身出世していく予定です。 元エリートではないものの銀行員、現小売で働く意識高い系の筆者が実体験や付け焼き刃の知識を元に書いていますので、ツッコミどころが多々あるかもしれません。 もしかしたらひょっとすると仕事で役に立つかもしれない…そんな気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。