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1巻
1-3
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「アダム様、スキルの発動を」
「よし、【冥府逆転】!」
「ヒヒィイーーーン!」
「は?」
えっ何、ちょっと待って、今、馬の鳴き声聞こえたぞ。
俺は確かに聞いた、そして見た。半透明の一本角の馬がモニカの遺体に溶け込んでいくのを、しっかりとこの目で見た。あの馬の姿ってやっぱりアレだよな。補填てまさか、アレとモニカの魂を融合させたってのか?
スキルを発動しながらも、俺の頭の中は軽いパニックになっていた。
しかし、スキルはうまく作用しているらしく、目の前でモニカの遺体がみるみる修復されていく。そして数分後、モニカは地面に横たわり、静かに呼吸を始めたのだった。
――【モニカ】をサーヴァントとして使役可能となりました。スキル【王の威光】により【モニカ】のステータスが上昇しました。スキル【徴収】によりモニカのステータスがストックされました。
成功だ!
「やっ、た……! よし!」
「ワォーーーン!」
「おめでとうございますアダム様! 覚えたてのスキルをすぐさま使いこなすなんて、さすがは王! もう私メロメロですわ!」
「メロメロて……なぁリリス、あの馬ってさぁ……ユニコーン、だよな」
「はい! 仰る通りです! 魂の補填として、幻獣界よりユニコーンの魂を召喚しました!」
「やっぱりかああああ! って事は何か!? モニカはユニコーンと人のハーフになっちゃったの!?」
「まぁ、魂が、ですけれど……あいにくこの方の魂に適合するのがユニコーンしかおりませんで……ダメでしたか?」
「それによって何か行動とか意識とかに変化は起きないか?」
「そこは大丈夫です!」
「ならいいんだけど……ん? この杖は……?」
すぅすぅ、と寝息を立てるモニカの体の陰に、一本の錫杖が隠れているのを見つけた。
地は白く、所々に金の紋様やラインが刻まれていて、意匠は豪奢だがスッキリとした、どこか高貴さを感じさせるものだった。
「これはユニコーンの魂の残滓が物質化した物ですね。ユニコーンズホーンとでも名付けてあげましょうか」
「ユニコーンズホーン……そしたらモニカは聖女だし、聖杖ユニコーンズホーンにしよう」
「とても良いネーミングセンスです!」
聖杖ユニコーンズホーンはモニカの専用武器になり、さらに聖なる力を高めてくれるだろう。
それと……このギガンテスとセンチピードリッパーの死体はどうしよう、センチピードリッパーの甲殻や脚は一級品の素材だし、ギガンテスの外殻や骨も色々と使い道があるはずなんだよな。
持てるだけ持って帰ろうかな?
とか考えている時、またしても理の声が聞こえた。
――スキル:【王の宝物庫】が解放されました。
「うん。なんとなくこうなるんだろうなって思ってたよ」
直感の赴くままに宝物庫を発動すると、センチピードリッパーとギガンテスの下に黒い渦のような穴が開き、そのまま死体を呑み込んでいった。
ついでに俺を捨てたバルザック達の荷物も宝物庫に投げ込んでおいた。
そして未だ目を覚まさないモニカを、大きくなったメイ達の背中に乗せて、S級ダンジョン、葬滅の大墳墓を後にしたのだった。
第二章 決別
「ダウンズ! 右からも来るぞ!」
「くっそぉ! 次から次へと雑魚共が!」
俺、バルザックが率いるラディウスは、葬滅の大墳墓を脱出するため走り続けていた。
「ジェニス! 矢を惜しむな!」
「はいよぉ! 帰ったらたかってやるからな! バルザック!」
「リン! 魔力残量と配分に気をつけろ!」
「言われ……! なくても!」
俺は焦っていた。いざとなったら雑用のアダムを生贄にして逃走する、というプランは前からパーティ内で決めていた事だった。
元々パーティメンバー達はアダムの事を快く思っていない。というよりも、そうなるように俺が仕向けていた。
ダウンズは頭が悪い分扱いやすい。強い者には弱く、弱い者には強く出るという卑怯な男だ。俺が黒だと言えば、それが白でもダウンズは黒だと言うだろう。
リンは頭は良いが幼く、その点で誘導する事は簡単だった。
ジェニスは元々俺に惚れ込んでいるため、俺に反対する道理がない。ただ計算外だったのはモニカの存在だった。
聖職者らしく堅物な彼女は、神がどうこう、良心がどうこうと猛反対をしてきたのだ。
結局、アダムを生贄にした直後、モニカは俺の制止も聞かずにすぐさま引き返していった。そしてその反動が今まさに来ている。
回復と補助の要であったモニカの抜けた穴は非常に大きい。
高難度のダンジョンで、回復役のヒーラーやプリーストがいないなど前代未聞だ。
回復アイテムもあるにはあったが、それも全てアダムと一緒に捨ててきてしまった。おかげでまだ地下七層だというのに、メンバーは回復も出来ずボロボロの状態だった。
今までは先行させていたアダムにより、ある程度戦闘は回避出来ていた。だが今はそれもない。
「ちくしょう! ふざけやがって!」
眼前のモンスターを叩き切りながら、俺は思わず怒号した。
実の所、アダムと俺は同じ村の出身だった。
アダムは幼い頃からモンスターと仲が良く、よく一緒に野山を駆けていた。
俺は剣の道場に通いながら、高い俊敏性を持ち、モンスターを従えるという特異な事をしているアダムに、純粋な好意と軽い尊敬を向けていた。
武者修行のために村を出た俺は、数年後に王都で栄誉ある王国軍戦士長に任命される事になる。そしてその頃に詐欺にあい、一文無しになって困っているアダムと再会し、パーティに誘った。
俺は奴を覚えていたが、奴は俺の事を覚えてはいなかった。それがとても腹立たしく、苛立った。
紆余曲折を経て、戦士長の座を引いた俺は冒険者となり、ラディウスを立ち上げた。
始めの頃は軽い悪戯心だったアダムへの冷たい対応は、いつしか定着し、俺はそれを利用しパーティの底辺である雑用係としてこき使った。
アダムの役割を俺は理解していた。しかし、ここまで影響があるとは予想もしていなかった。
だが、短期間でS級パーティまで上り詰めたのは、決してアダムだけの力ではない、俺達の力であり、努力の結果なのだ。
奴がラディウスの大黒柱だったなど認めてたまるか。
怒りと悔しさをぶつけるように俺達はダンジョンを駆け抜けていき、結局満身創痍で葬滅の大墳墓から脱出したのだった。
◇ ◇ ◇
「なぁリリス、頼むから変な真似しないでくれよな」
「何を言うのじゃ? 妾は至って真面目じゃぞ」
葬滅の大墳墓から脱出し、俺とリリスはのんびりと王都へ戻ってきた。そして今、冒険者ギルドの近くの路地裏で最後の確認をしている。
「その口調は?」
「父バハムートエデンより、下々の前に出る時は毅然とし高貴であれ、と口酸っぱく言われておるのでな!」
「そういう所だよ」
「はぇ?」
誇らしげに胸を張り、絵画から飛び出して来たかのような美貌で首を傾げるリリスは、文句なしに可愛い。
すれ違う人すれ違う人が振り向いてしまうくらいだ。
俺は思わず鼻の下が伸びそうになるのをぐっとこらえ、真面目な顔でリリスの目を見る。
「人間を下々とか言っちゃダメなの、分かる?」
「じゃが……」
「じゃがもイモもない。俺の言う事を聞いてくれないのか……?」
「聞きます聞きますわんわん!」
「オンオンオン!」
俺がちょっと悲しそうな顔をして目線を落としてみると、リリスは掌を返してわんわん言い出した。
その様子に驚いたメイ達も、釣られてわんわん言い始めた。
「わんわんて……」
「このケルベロスもよくわんわん言ってるし、アダム様はケルベロスには甘々だし、私もわんわん言えば甘々してくれるかなぁって」
「そりゃケルベロスのメイ達と龍人のリリスは違うだろ……っと話がズレたけど、人間を見下す発言はなしだ。それと俺の事は様付けしないでいい。変な目で見られそうだし! なんならずっと黙っててもいいからな!」
「アダム様がそう仰るのであれば……」
「様がついてるもう一回」
「うう……アダムさん……ま」
「誰がサンマか」
「ひぇえアダムさんんんん」
「それでよし」
「妻である私が夫をさん付けなんて……父に見られたらシバキ倒されますわ……」
「いやむしろさん呼びの方が多いから! ってかまだ妻じゃにゃい!」
「あら、にゃいですって可愛い」
「揚げ足取るのはいいんだな!」
こんなやり取りをしていると、背後からおずおずと声が聞こえた。
「あの……アダムさん……?」
「はい? あ、モニカ、おかえり。どうだった?」
「使いご苦労、控えてよし」
「おいリリス、やめろ」
「ふええんごめんなさいアダムさんんんん」
「あ、あはは……お元気ですねリリスさん……」
モニカは、葬滅の大墳墓を出て数時間してから目を覚ました。
初めはかなり混乱しており、センチピードリッパーに蹂躙される光景がフラッシュバックしたのか、取り乱して大変だったが、今はなんとか正気を取り戻している。
そんなモニカには、冒険者ギルドの様子をこっそり見てきてもらったのだ。
「それでどうだった?」
「……私達のお別れ会をしていたよ。ギルドの前にもしっかりモニカ、アダムのお別れ会って垂れ幕があったわ。私達が帰るまでに多少日数の差があったにしても……仕事が早いギルドね」
「バルザック達も俺達が生きてるだなんて思ってもないだろうな」
「私が生き返ったのはアダムさんとリリスさんのおかげ……感謝してもしたりないわ」
「俺は何もしてない、助けてくれたのはリリスだ」
「違います! アダム様さんが王としてお目覚めになられたからこそ!」
「王、か……まぁそれは置いといて、あいつらの鼻っ柱を折りに行こうか!」
「はい!」
「アダムさんまを裏切った奴らがどんな顔をするか楽しみね!」
「ウォゥオゥウ!」
「だから誰がサンマだ」
俺達は意気揚々とギルドの扉を開け、事務処理をしていた受付嬢のシムスへ明るく元気よく声をかけた。
「やぁ。ちょっと聞きたいんだけど、アダムとモニカのお別れ会ってまだやってる?」
「え……あ、はい……ってぇぇえええあああだアダムさん!? なんで!?」
下を向いていたシムスは俺の顔を見るなり飛び上がって、俺が思っていた通りのリアクションを取ってくれた。
「なんでって生きてるから?」
「ほ、ほほほほんとにアダムさん!?」
「おい! アダムさんがいるぞ!?」
「マジか!? 名誉の死を遂げたとか言っていたのに!」
シムスが大声で騒ぐものだから、奥の扉――恐らくあの奥の部屋で俺達のお別れ会をしてるんだろう――から出てきた冒険者達まで騒ぎ出した。この反応も織り込み済みなんだけどね。
「アダムさん! 俺ァ信じてましたよ!」
「嘘つけ! コイツ、アダムさんの事好き放題言ってましたぜ!」
「おいてめぇふざけんな!」
「モニカさん! あぁ俺の天使モニカさんだ!」
「ちょっちょっと待っててくださいね!? マスタああー! アダムさんとモニカさんがああああ!」
シムスは一気に騒がしくなったフロアで一段と騒がしく喚きながら、奥の扉を蹴り飛ばして中に飛び込んで行った。
そして数分後、扉からワラワラと人が飛び出してきて、俺達はあっという間に囲まれてしまい――
「アダム! 生きててくれたのか!」
「あぁ。おかげさまでな」
白々しいセリフと態度で、バルザックが俺の前に出てきた。その後ろには憎々しい面々がいる。
「おいアダム! 俺らの荷物はどこだ?」
「は?」
「あ? は? とはなんだ。てめぇ調子乗ってんのか?」
とまぁこんな具合でいつものようにダウンズが凄んでくるが、コイツはもはや仲間でもなんでもないし、元々好きでもない。
自分がトドメの魔晶石を放り投げたくせに、荷物の事を聞いてくるなんて……俺がここにいる事で立場が逆転していると分からないくらいには、ダウンズの頭は筋肉で埋め尽くされているらしい。
「ダウンズ、黙ってろ」
「いいや黙れないねバルザックさん。こいつはちょっと勘違いしてるみてぇだ」
「勘違いしてるのはお前だよ、ダウンズ。死んだはずの俺がここにいる事がどれだけお前達に都合が悪いか、分かってないみたいだな」
ダウンズ、お前いくら脳筋だとしても、もう少し頭を使った方がいいと思うぞ。
「んだと……? どういう意味だ!」
「もう一度、ちゃんと話を聞こうじゃないか」
ここまで言っても理解しないダウンズの肩を叩き会話に割り込んできたのは、ギルドマスターであるグラーフだった。
「バルザック君、確か君達はこう言ったね。モニカはフロアボスに一刀両断され、さらにアダムは【エクスプロード】の魔晶石により自爆を図り、君達の逃走を手助けした。名誉ある死をギルド全体で悲しみ、英雄として伝えていきたい、と」
なるほど、そういう筋書きになっていたのか。
グラーフに睨みつけられたダウンズは、舌打ちをしてバルザックに目で助けを求めた。
しかしバルザックは無言で首を振り、顔面蒼白になっていた。それはリンやジェニスも同じだ。
おおかたダンジョン内での死体の確認が不可能なのをいい事に、グラーフに嘘の説明をしたのだろう。だがしかし、俺とモニカはこうして無事に帰ってきてしまった。
つまり、虚言、偽りの申告だというのは誰の目にも明らかだった。
しん、としたフロアに集まる数十人の冒険者の蔑むような視線が、ラディウスに突き刺さる。
「アダム君、モニカ君。実際の所は……どうなんだい?」
「はい、グラーフさん。実は……」
「おいアダム! てめぇ分かってんだろうな!」
「ダウンズ君は黙っていてくれたまえ」
「チッ……!」
物凄い形相で睨み付けるダウンズをグラーフが制し、俺は葬滅の大墳墓で起きた一幕を語った。
話の中でモニカは最後の瞬間を思い出したのか、小さくカタカタと震え、涙ぐんでいた。
リリスは部屋の片隅で大人しくしてくれているけれど、瞳は怒りに染まっており、すぐにでもダウンズへ飛びかかっていきそうだった。
「なるほど……これは、重罪だな」
「なんでだよ! 仕方ない事だったんだ! そうだろアダム!」
「バルザック君、ダウンズ君を少し黙らせてくれないか?」
「申し訳ありません……ダウンズ、ホントに少し黙っていろ」
「クソがっ!」
この期に及んで悪態をついて椅子を蹴り飛ばすダウンズは、ある意味凄いとは思う。だが、この恐れ知らずな性格では、長生きは出来なそうだな。
「バルザック君、君達にはしばらく謹慎処分を言い渡す。反省し、正式な処分を待ちたまえ」
「分かり、ました」
ひとまずここでの話は落ち着いたと思い、俺は話題を切り替えた。
「葬滅の大墳墓で得たアイテムや素材はギルドに寄付します」
あの時ゲットしたアイテムや素材、捨てようかとも思ったけど……コイツらの目の前でギルドに寄付すれば、それなりに気分も晴れるかもしれないと思って持ってきたのだ。
「いいのか?」
「構いません、俺には使えない物ばかりですので」
「ならば……アイテムは買い取らせてもらおう」
「そうしてくれるとありがたいです。元は捨てようと思っていた物なので。あぁ、あとこの装備も良かったら買い取って貰えませんか?」
鬼岩窟でバルザックから貰った鬼王の胸当てを、拳でコンコンと叩き、グラーフを見る。
「鬼王の胸当てというレア装備だとバルザックに聞いたんですけど……ダメですか?」
しかし、グラーフの返答は驚くべきものだった。
「何……? いや、申し訳ないが……その胸当ては市販品の、初心者向けのアイアンプレートだ。買い取る事は出来ない」
「えっ……そんな……」
衝撃の一言に俺は思わずバルザックを見るが、当の本人は一向に目を合わせようとしない。
なるほど、初心者向けの市販品をレア装備だと言ってたって事か。見抜けない俺も、馬鹿だな。
ダウンズを見れば、下卑た笑いを浮かべて俺を見下すように見つめている。内心ではさぞかし大笑いしている事だろう。
ホント、なんで俺はこんな奴らのために……本当に馬鹿だった。
「アダム君、すまん……」
グラーフが本当に申し訳なさそうに頭を下げてくれた。
悪いのはグラーフではなく、無知な俺だ。
でも、そんな俺を笑う者は、ダウンズを除いて誰一人いなかった。
むしろ、フロアにいる全員が、軽蔑の眼差しをラディウスに向けていた。
「S級パーティだからって、良いチームとは限らねぇんだな」
「しっ! 聞こえるぞ!」
「憧れてたのに……ただのゴミじゃん」
「俺の天使モニカさんを見捨てるだなんて腐りきってやがる」
ヒソヒソ話は徐々に広がっていき、明らかに聞こえる声で非難する人も出てきた。
「いえ、いいんです。それじゃ買い取り出来る物だけよろしくお願いします」
「分かった。ところで……君のサーヴァントが変わっているようだが?」
「コイツらは……変わってませんよ。ちょっと融合しちゃっただけなんで」
「それは充分変わったと言うんだ……一体何が起きたというんだ?」
「あはは……まぁ、それはおいおいお話ししますよ」
「分かった」
「メイちゃん達が融合……ですか……にわかには信じられませんが確かにこの顔はメイちゃん達ですよね……」
「「「クゥーーン」」」
シムスはメイ達の頭を撫でくり回しながら、摩訶不思議な物を見るかのようにメイ達の瞳を覗き込んでいる。メイ達は特に気にする様子もなく、空気の抜けるような鳴き声を発した。
「まさかケルベロスになっちゃうなんて……びっくり山を越えて地平線ですよ」
「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」
「それくらい驚いてるって事です! もう! でも、この子達の呼び名ってどうするんですか?」
シムスは少しも怖がるそぶりを見せないで、メイ達の頭の一つを撫でた。
「それならもう考えてある」
「さすがアダムさん! 相変わらず仕事が早いですね!」
「そうかな?」
「はい! 私は常々思っていましたよ? 細かい所にも目が向くし、気配りも上手だし、何より優しいですし」
「それ仕事が早いうんぬん関係ないんじゃ……?」
「いーんです! さ! メイちゃん達の新しいお名前を!」
シムスの勢いに押されながらも、俺は考えていた、メイ達の新たな名前を発表する。
「メイ、ルクス、トリム、三位一体〝メルト〟だ!」
「三位一体メルトですね!」
「違うそうじゃない」
「あはは! 冗談ですようもうー!」
『我が名はメルト!』
『地獄の番犬!』
『だが実際は!』
『『『マスターの番犬!』』』
「分かったから……元気だなぁほんと」
どうやらメルトの言葉は俺とリリスにしか理解できないらしく、他の人にはワンワン、としか聞こえないみたいだ。
『理由は分からないけど』
『体の中から』
『力がごっぽごっぽと湧いてくる!』
『『『我ら! 三位一体! けるべろしゅっ!』』』
「噛んだな」
『噛んでないよ!』
『噛んだのはメイ!』
『違うよ! ルクスだよ!』
「はいはい、もう少しだから大人しく待ってような」
『『『は~い』』』
【多言語理解】で、メルトが何を考えて何を言っているかが理解出来るようになったはいいが……よく喋るんだなぁ。
前からこうだったのか、ケルベロスになった事でお喋りになったのか……ま、可愛いからいいんだけどな!
「よし、【冥府逆転】!」
「ヒヒィイーーーン!」
「は?」
えっ何、ちょっと待って、今、馬の鳴き声聞こえたぞ。
俺は確かに聞いた、そして見た。半透明の一本角の馬がモニカの遺体に溶け込んでいくのを、しっかりとこの目で見た。あの馬の姿ってやっぱりアレだよな。補填てまさか、アレとモニカの魂を融合させたってのか?
スキルを発動しながらも、俺の頭の中は軽いパニックになっていた。
しかし、スキルはうまく作用しているらしく、目の前でモニカの遺体がみるみる修復されていく。そして数分後、モニカは地面に横たわり、静かに呼吸を始めたのだった。
――【モニカ】をサーヴァントとして使役可能となりました。スキル【王の威光】により【モニカ】のステータスが上昇しました。スキル【徴収】によりモニカのステータスがストックされました。
成功だ!
「やっ、た……! よし!」
「ワォーーーン!」
「おめでとうございますアダム様! 覚えたてのスキルをすぐさま使いこなすなんて、さすがは王! もう私メロメロですわ!」
「メロメロて……なぁリリス、あの馬ってさぁ……ユニコーン、だよな」
「はい! 仰る通りです! 魂の補填として、幻獣界よりユニコーンの魂を召喚しました!」
「やっぱりかああああ! って事は何か!? モニカはユニコーンと人のハーフになっちゃったの!?」
「まぁ、魂が、ですけれど……あいにくこの方の魂に適合するのがユニコーンしかおりませんで……ダメでしたか?」
「それによって何か行動とか意識とかに変化は起きないか?」
「そこは大丈夫です!」
「ならいいんだけど……ん? この杖は……?」
すぅすぅ、と寝息を立てるモニカの体の陰に、一本の錫杖が隠れているのを見つけた。
地は白く、所々に金の紋様やラインが刻まれていて、意匠は豪奢だがスッキリとした、どこか高貴さを感じさせるものだった。
「これはユニコーンの魂の残滓が物質化した物ですね。ユニコーンズホーンとでも名付けてあげましょうか」
「ユニコーンズホーン……そしたらモニカは聖女だし、聖杖ユニコーンズホーンにしよう」
「とても良いネーミングセンスです!」
聖杖ユニコーンズホーンはモニカの専用武器になり、さらに聖なる力を高めてくれるだろう。
それと……このギガンテスとセンチピードリッパーの死体はどうしよう、センチピードリッパーの甲殻や脚は一級品の素材だし、ギガンテスの外殻や骨も色々と使い道があるはずなんだよな。
持てるだけ持って帰ろうかな?
とか考えている時、またしても理の声が聞こえた。
――スキル:【王の宝物庫】が解放されました。
「うん。なんとなくこうなるんだろうなって思ってたよ」
直感の赴くままに宝物庫を発動すると、センチピードリッパーとギガンテスの下に黒い渦のような穴が開き、そのまま死体を呑み込んでいった。
ついでに俺を捨てたバルザック達の荷物も宝物庫に投げ込んでおいた。
そして未だ目を覚まさないモニカを、大きくなったメイ達の背中に乗せて、S級ダンジョン、葬滅の大墳墓を後にしたのだった。
第二章 決別
「ダウンズ! 右からも来るぞ!」
「くっそぉ! 次から次へと雑魚共が!」
俺、バルザックが率いるラディウスは、葬滅の大墳墓を脱出するため走り続けていた。
「ジェニス! 矢を惜しむな!」
「はいよぉ! 帰ったらたかってやるからな! バルザック!」
「リン! 魔力残量と配分に気をつけろ!」
「言われ……! なくても!」
俺は焦っていた。いざとなったら雑用のアダムを生贄にして逃走する、というプランは前からパーティ内で決めていた事だった。
元々パーティメンバー達はアダムの事を快く思っていない。というよりも、そうなるように俺が仕向けていた。
ダウンズは頭が悪い分扱いやすい。強い者には弱く、弱い者には強く出るという卑怯な男だ。俺が黒だと言えば、それが白でもダウンズは黒だと言うだろう。
リンは頭は良いが幼く、その点で誘導する事は簡単だった。
ジェニスは元々俺に惚れ込んでいるため、俺に反対する道理がない。ただ計算外だったのはモニカの存在だった。
聖職者らしく堅物な彼女は、神がどうこう、良心がどうこうと猛反対をしてきたのだ。
結局、アダムを生贄にした直後、モニカは俺の制止も聞かずにすぐさま引き返していった。そしてその反動が今まさに来ている。
回復と補助の要であったモニカの抜けた穴は非常に大きい。
高難度のダンジョンで、回復役のヒーラーやプリーストがいないなど前代未聞だ。
回復アイテムもあるにはあったが、それも全てアダムと一緒に捨ててきてしまった。おかげでまだ地下七層だというのに、メンバーは回復も出来ずボロボロの状態だった。
今までは先行させていたアダムにより、ある程度戦闘は回避出来ていた。だが今はそれもない。
「ちくしょう! ふざけやがって!」
眼前のモンスターを叩き切りながら、俺は思わず怒号した。
実の所、アダムと俺は同じ村の出身だった。
アダムは幼い頃からモンスターと仲が良く、よく一緒に野山を駆けていた。
俺は剣の道場に通いながら、高い俊敏性を持ち、モンスターを従えるという特異な事をしているアダムに、純粋な好意と軽い尊敬を向けていた。
武者修行のために村を出た俺は、数年後に王都で栄誉ある王国軍戦士長に任命される事になる。そしてその頃に詐欺にあい、一文無しになって困っているアダムと再会し、パーティに誘った。
俺は奴を覚えていたが、奴は俺の事を覚えてはいなかった。それがとても腹立たしく、苛立った。
紆余曲折を経て、戦士長の座を引いた俺は冒険者となり、ラディウスを立ち上げた。
始めの頃は軽い悪戯心だったアダムへの冷たい対応は、いつしか定着し、俺はそれを利用しパーティの底辺である雑用係としてこき使った。
アダムの役割を俺は理解していた。しかし、ここまで影響があるとは予想もしていなかった。
だが、短期間でS級パーティまで上り詰めたのは、決してアダムだけの力ではない、俺達の力であり、努力の結果なのだ。
奴がラディウスの大黒柱だったなど認めてたまるか。
怒りと悔しさをぶつけるように俺達はダンジョンを駆け抜けていき、結局満身創痍で葬滅の大墳墓から脱出したのだった。
◇ ◇ ◇
「なぁリリス、頼むから変な真似しないでくれよな」
「何を言うのじゃ? 妾は至って真面目じゃぞ」
葬滅の大墳墓から脱出し、俺とリリスはのんびりと王都へ戻ってきた。そして今、冒険者ギルドの近くの路地裏で最後の確認をしている。
「その口調は?」
「父バハムートエデンより、下々の前に出る時は毅然とし高貴であれ、と口酸っぱく言われておるのでな!」
「そういう所だよ」
「はぇ?」
誇らしげに胸を張り、絵画から飛び出して来たかのような美貌で首を傾げるリリスは、文句なしに可愛い。
すれ違う人すれ違う人が振り向いてしまうくらいだ。
俺は思わず鼻の下が伸びそうになるのをぐっとこらえ、真面目な顔でリリスの目を見る。
「人間を下々とか言っちゃダメなの、分かる?」
「じゃが……」
「じゃがもイモもない。俺の言う事を聞いてくれないのか……?」
「聞きます聞きますわんわん!」
「オンオンオン!」
俺がちょっと悲しそうな顔をして目線を落としてみると、リリスは掌を返してわんわん言い出した。
その様子に驚いたメイ達も、釣られてわんわん言い始めた。
「わんわんて……」
「このケルベロスもよくわんわん言ってるし、アダム様はケルベロスには甘々だし、私もわんわん言えば甘々してくれるかなぁって」
「そりゃケルベロスのメイ達と龍人のリリスは違うだろ……っと話がズレたけど、人間を見下す発言はなしだ。それと俺の事は様付けしないでいい。変な目で見られそうだし! なんならずっと黙っててもいいからな!」
「アダム様がそう仰るのであれば……」
「様がついてるもう一回」
「うう……アダムさん……ま」
「誰がサンマか」
「ひぇえアダムさんんんん」
「それでよし」
「妻である私が夫をさん付けなんて……父に見られたらシバキ倒されますわ……」
「いやむしろさん呼びの方が多いから! ってかまだ妻じゃにゃい!」
「あら、にゃいですって可愛い」
「揚げ足取るのはいいんだな!」
こんなやり取りをしていると、背後からおずおずと声が聞こえた。
「あの……アダムさん……?」
「はい? あ、モニカ、おかえり。どうだった?」
「使いご苦労、控えてよし」
「おいリリス、やめろ」
「ふええんごめんなさいアダムさんんんん」
「あ、あはは……お元気ですねリリスさん……」
モニカは、葬滅の大墳墓を出て数時間してから目を覚ました。
初めはかなり混乱しており、センチピードリッパーに蹂躙される光景がフラッシュバックしたのか、取り乱して大変だったが、今はなんとか正気を取り戻している。
そんなモニカには、冒険者ギルドの様子をこっそり見てきてもらったのだ。
「それでどうだった?」
「……私達のお別れ会をしていたよ。ギルドの前にもしっかりモニカ、アダムのお別れ会って垂れ幕があったわ。私達が帰るまでに多少日数の差があったにしても……仕事が早いギルドね」
「バルザック達も俺達が生きてるだなんて思ってもないだろうな」
「私が生き返ったのはアダムさんとリリスさんのおかげ……感謝してもしたりないわ」
「俺は何もしてない、助けてくれたのはリリスだ」
「違います! アダム様さんが王としてお目覚めになられたからこそ!」
「王、か……まぁそれは置いといて、あいつらの鼻っ柱を折りに行こうか!」
「はい!」
「アダムさんまを裏切った奴らがどんな顔をするか楽しみね!」
「ウォゥオゥウ!」
「だから誰がサンマだ」
俺達は意気揚々とギルドの扉を開け、事務処理をしていた受付嬢のシムスへ明るく元気よく声をかけた。
「やぁ。ちょっと聞きたいんだけど、アダムとモニカのお別れ会ってまだやってる?」
「え……あ、はい……ってぇぇえええあああだアダムさん!? なんで!?」
下を向いていたシムスは俺の顔を見るなり飛び上がって、俺が思っていた通りのリアクションを取ってくれた。
「なんでって生きてるから?」
「ほ、ほほほほんとにアダムさん!?」
「おい! アダムさんがいるぞ!?」
「マジか!? 名誉の死を遂げたとか言っていたのに!」
シムスが大声で騒ぐものだから、奥の扉――恐らくあの奥の部屋で俺達のお別れ会をしてるんだろう――から出てきた冒険者達まで騒ぎ出した。この反応も織り込み済みなんだけどね。
「アダムさん! 俺ァ信じてましたよ!」
「嘘つけ! コイツ、アダムさんの事好き放題言ってましたぜ!」
「おいてめぇふざけんな!」
「モニカさん! あぁ俺の天使モニカさんだ!」
「ちょっちょっと待っててくださいね!? マスタああー! アダムさんとモニカさんがああああ!」
シムスは一気に騒がしくなったフロアで一段と騒がしく喚きながら、奥の扉を蹴り飛ばして中に飛び込んで行った。
そして数分後、扉からワラワラと人が飛び出してきて、俺達はあっという間に囲まれてしまい――
「アダム! 生きててくれたのか!」
「あぁ。おかげさまでな」
白々しいセリフと態度で、バルザックが俺の前に出てきた。その後ろには憎々しい面々がいる。
「おいアダム! 俺らの荷物はどこだ?」
「は?」
「あ? は? とはなんだ。てめぇ調子乗ってんのか?」
とまぁこんな具合でいつものようにダウンズが凄んでくるが、コイツはもはや仲間でもなんでもないし、元々好きでもない。
自分がトドメの魔晶石を放り投げたくせに、荷物の事を聞いてくるなんて……俺がここにいる事で立場が逆転していると分からないくらいには、ダウンズの頭は筋肉で埋め尽くされているらしい。
「ダウンズ、黙ってろ」
「いいや黙れないねバルザックさん。こいつはちょっと勘違いしてるみてぇだ」
「勘違いしてるのはお前だよ、ダウンズ。死んだはずの俺がここにいる事がどれだけお前達に都合が悪いか、分かってないみたいだな」
ダウンズ、お前いくら脳筋だとしても、もう少し頭を使った方がいいと思うぞ。
「んだと……? どういう意味だ!」
「もう一度、ちゃんと話を聞こうじゃないか」
ここまで言っても理解しないダウンズの肩を叩き会話に割り込んできたのは、ギルドマスターであるグラーフだった。
「バルザック君、確か君達はこう言ったね。モニカはフロアボスに一刀両断され、さらにアダムは【エクスプロード】の魔晶石により自爆を図り、君達の逃走を手助けした。名誉ある死をギルド全体で悲しみ、英雄として伝えていきたい、と」
なるほど、そういう筋書きになっていたのか。
グラーフに睨みつけられたダウンズは、舌打ちをしてバルザックに目で助けを求めた。
しかしバルザックは無言で首を振り、顔面蒼白になっていた。それはリンやジェニスも同じだ。
おおかたダンジョン内での死体の確認が不可能なのをいい事に、グラーフに嘘の説明をしたのだろう。だがしかし、俺とモニカはこうして無事に帰ってきてしまった。
つまり、虚言、偽りの申告だというのは誰の目にも明らかだった。
しん、としたフロアに集まる数十人の冒険者の蔑むような視線が、ラディウスに突き刺さる。
「アダム君、モニカ君。実際の所は……どうなんだい?」
「はい、グラーフさん。実は……」
「おいアダム! てめぇ分かってんだろうな!」
「ダウンズ君は黙っていてくれたまえ」
「チッ……!」
物凄い形相で睨み付けるダウンズをグラーフが制し、俺は葬滅の大墳墓で起きた一幕を語った。
話の中でモニカは最後の瞬間を思い出したのか、小さくカタカタと震え、涙ぐんでいた。
リリスは部屋の片隅で大人しくしてくれているけれど、瞳は怒りに染まっており、すぐにでもダウンズへ飛びかかっていきそうだった。
「なるほど……これは、重罪だな」
「なんでだよ! 仕方ない事だったんだ! そうだろアダム!」
「バルザック君、ダウンズ君を少し黙らせてくれないか?」
「申し訳ありません……ダウンズ、ホントに少し黙っていろ」
「クソがっ!」
この期に及んで悪態をついて椅子を蹴り飛ばすダウンズは、ある意味凄いとは思う。だが、この恐れ知らずな性格では、長生きは出来なそうだな。
「バルザック君、君達にはしばらく謹慎処分を言い渡す。反省し、正式な処分を待ちたまえ」
「分かり、ました」
ひとまずここでの話は落ち着いたと思い、俺は話題を切り替えた。
「葬滅の大墳墓で得たアイテムや素材はギルドに寄付します」
あの時ゲットしたアイテムや素材、捨てようかとも思ったけど……コイツらの目の前でギルドに寄付すれば、それなりに気分も晴れるかもしれないと思って持ってきたのだ。
「いいのか?」
「構いません、俺には使えない物ばかりですので」
「ならば……アイテムは買い取らせてもらおう」
「そうしてくれるとありがたいです。元は捨てようと思っていた物なので。あぁ、あとこの装備も良かったら買い取って貰えませんか?」
鬼岩窟でバルザックから貰った鬼王の胸当てを、拳でコンコンと叩き、グラーフを見る。
「鬼王の胸当てというレア装備だとバルザックに聞いたんですけど……ダメですか?」
しかし、グラーフの返答は驚くべきものだった。
「何……? いや、申し訳ないが……その胸当ては市販品の、初心者向けのアイアンプレートだ。買い取る事は出来ない」
「えっ……そんな……」
衝撃の一言に俺は思わずバルザックを見るが、当の本人は一向に目を合わせようとしない。
なるほど、初心者向けの市販品をレア装備だと言ってたって事か。見抜けない俺も、馬鹿だな。
ダウンズを見れば、下卑た笑いを浮かべて俺を見下すように見つめている。内心ではさぞかし大笑いしている事だろう。
ホント、なんで俺はこんな奴らのために……本当に馬鹿だった。
「アダム君、すまん……」
グラーフが本当に申し訳なさそうに頭を下げてくれた。
悪いのはグラーフではなく、無知な俺だ。
でも、そんな俺を笑う者は、ダウンズを除いて誰一人いなかった。
むしろ、フロアにいる全員が、軽蔑の眼差しをラディウスに向けていた。
「S級パーティだからって、良いチームとは限らねぇんだな」
「しっ! 聞こえるぞ!」
「憧れてたのに……ただのゴミじゃん」
「俺の天使モニカさんを見捨てるだなんて腐りきってやがる」
ヒソヒソ話は徐々に広がっていき、明らかに聞こえる声で非難する人も出てきた。
「いえ、いいんです。それじゃ買い取り出来る物だけよろしくお願いします」
「分かった。ところで……君のサーヴァントが変わっているようだが?」
「コイツらは……変わってませんよ。ちょっと融合しちゃっただけなんで」
「それは充分変わったと言うんだ……一体何が起きたというんだ?」
「あはは……まぁ、それはおいおいお話ししますよ」
「分かった」
「メイちゃん達が融合……ですか……にわかには信じられませんが確かにこの顔はメイちゃん達ですよね……」
「「「クゥーーン」」」
シムスはメイ達の頭を撫でくり回しながら、摩訶不思議な物を見るかのようにメイ達の瞳を覗き込んでいる。メイ達は特に気にする様子もなく、空気の抜けるような鳴き声を発した。
「まさかケルベロスになっちゃうなんて……びっくり山を越えて地平線ですよ」
「ごめん、ちょっと何言ってるか分からない」
「それくらい驚いてるって事です! もう! でも、この子達の呼び名ってどうするんですか?」
シムスは少しも怖がるそぶりを見せないで、メイ達の頭の一つを撫でた。
「それならもう考えてある」
「さすがアダムさん! 相変わらず仕事が早いですね!」
「そうかな?」
「はい! 私は常々思っていましたよ? 細かい所にも目が向くし、気配りも上手だし、何より優しいですし」
「それ仕事が早いうんぬん関係ないんじゃ……?」
「いーんです! さ! メイちゃん達の新しいお名前を!」
シムスの勢いに押されながらも、俺は考えていた、メイ達の新たな名前を発表する。
「メイ、ルクス、トリム、三位一体〝メルト〟だ!」
「三位一体メルトですね!」
「違うそうじゃない」
「あはは! 冗談ですようもうー!」
『我が名はメルト!』
『地獄の番犬!』
『だが実際は!』
『『『マスターの番犬!』』』
「分かったから……元気だなぁほんと」
どうやらメルトの言葉は俺とリリスにしか理解できないらしく、他の人にはワンワン、としか聞こえないみたいだ。
『理由は分からないけど』
『体の中から』
『力がごっぽごっぽと湧いてくる!』
『『『我ら! 三位一体! けるべろしゅっ!』』』
「噛んだな」
『噛んでないよ!』
『噛んだのはメイ!』
『違うよ! ルクスだよ!』
「はいはい、もう少しだから大人しく待ってような」
『『『は~い』』』
【多言語理解】で、メルトが何を考えて何を言っているかが理解出来るようになったはいいが……よく喋るんだなぁ。
前からこうだったのか、ケルベロスになった事でお喋りになったのか……ま、可愛いからいいんだけどな!
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