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第四章 穏やかな日常?
56.コラボの話
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「コラボねぇ」
目の前で愛くるしい笑顔を浮かべている祈を見つつ、ほうじ茶をぐびりと一口頂く。
「なぜ翆ちゃんがジャッジメントをコーチと呼んでいたのか! という考察動画も沢山出てるし、もう隠しておく必要性ある?」
「むう」
そう。
生配信中に翆ちゃんが俺の事をコーチと呼んでしまったおかげで、俺ことジャッジメントと祈達3人との繋がりが明るみになってしまった。
本人達はあまり気にしていないのだけれど、こちらとしてはかなり気がかりな所ではあるのだ。
なにしろ俺には敵が多く、尚且つ今は政府にも目を付けられている状態だ。
その状態で、俺達の関係を大っぴらにしたら(もうなっているのだが)また翆ちゃんの時のように、事件に巻き込まれてしまうのではないか? と考えているのだ。
「また難しい顔してる」
笑顔だった祈が頬を膨らまして口を尖らせた。
もちろん今の考えは3人に話しているのだけれど――。
「気にする必要ないって言ってるでしょう?」
「だが……」
「これが私達の選んだ道なの。PKKの側に着くって事がどういう事なのか、分かっているつもりよ。まさか国まで出しゃばってくるとはちょっと予想外だったけどね」
そう言って祈は舌をぺろりと出しておどけてみせた。
「それでも私達は強くなる事を選び、コノミはしっかりと導いてくれた。固有スキルだって3人とも無事にゲット出来た。だからはいさようなら、なんてすると思うの?」
「いや……君達がそういうタイプの人間じゃあない事は知ってるよ。これは俺の問題――ビビってるんだ。また大切な人を失うんじゃあないかって、そう思ってる」
「コノミ……」
過去の事件で俺の妹である愛波の笑顔と、愛波が散った時の苦悶の表情が脳裏に浮かび、俺は思わず湯飲みを強く握りしめた。
今までは俺と隼人だけで生きてきた。
しかし今は祈、瑠璃ちゃん、翆ちゃんという大事な仲間が出来てしまった。
自分でもなぜ、アドバイスやコーチングをしようなんて気になったのか、今じゃ分からない。
ただ、少しだけ一人が寂しくなって、疲れていたのかもしれない。
隼人もそうだ。
俺はダンジョンでただ銃をバンバン撃ってりゃいいけれど、隼人は科学や技術で戦っている。
その相手はPKやモンスターではなく、大人や企業だ。
きっと俺以上に精神を摩耗してきたはずだ。
飄々として掴み所の無い男だが、それでも隼人だって人間で、俺と同じ17歳の子供なのだ。
だからこそ、3人を受け入れるよう俺を誘導したのではないだろうか。
と、うだうだ考え続けてはや数日である。
「コノミ、聞きたい事あるんだけど、いい?」
「何だ?」
祈はコホンと小さく咳ばらいをし、俺の正面に正座をしてかしこまった。
「あのさ。まなみ、って誰?」
「あぁ、その話か」
「ま、まさかも、元か――元カノさんとか?」
じっと俺を見る祈の瞳が少し潤んでいるように見えるのは、俺の気のせいだろうか。
「元カノ? あはは……違うよ。そんなんじゃあない。だが、少し長くなるが」
「違うの!? そ、そっかぁ! あは! あはは! 長くなってもいいよ? 聞かせて、その人のお話」
急に元気になった祈を見て、勝手に口角が上がる。
本当にこの子は朗らかで元気で、喜怒哀楽がはっきりした、気立ての良い美少女だ。
「……じゃあ、話そうか。俺と愛波と隼人の物語を」
そう言って俺はほうじ茶の残りをすすり、横目で時計を見た。
時刻は22:30、気付けば翆ちゃんや瑠璃ちゃんの声も聞こえず、秒針の音が静かに時を刻んでいた。
目の前で愛くるしい笑顔を浮かべている祈を見つつ、ほうじ茶をぐびりと一口頂く。
「なぜ翆ちゃんがジャッジメントをコーチと呼んでいたのか! という考察動画も沢山出てるし、もう隠しておく必要性ある?」
「むう」
そう。
生配信中に翆ちゃんが俺の事をコーチと呼んでしまったおかげで、俺ことジャッジメントと祈達3人との繋がりが明るみになってしまった。
本人達はあまり気にしていないのだけれど、こちらとしてはかなり気がかりな所ではあるのだ。
なにしろ俺には敵が多く、尚且つ今は政府にも目を付けられている状態だ。
その状態で、俺達の関係を大っぴらにしたら(もうなっているのだが)また翆ちゃんの時のように、事件に巻き込まれてしまうのではないか? と考えているのだ。
「また難しい顔してる」
笑顔だった祈が頬を膨らまして口を尖らせた。
もちろん今の考えは3人に話しているのだけれど――。
「気にする必要ないって言ってるでしょう?」
「だが……」
「これが私達の選んだ道なの。PKKの側に着くって事がどういう事なのか、分かっているつもりよ。まさか国まで出しゃばってくるとはちょっと予想外だったけどね」
そう言って祈は舌をぺろりと出しておどけてみせた。
「それでも私達は強くなる事を選び、コノミはしっかりと導いてくれた。固有スキルだって3人とも無事にゲット出来た。だからはいさようなら、なんてすると思うの?」
「いや……君達がそういうタイプの人間じゃあない事は知ってるよ。これは俺の問題――ビビってるんだ。また大切な人を失うんじゃあないかって、そう思ってる」
「コノミ……」
過去の事件で俺の妹である愛波の笑顔と、愛波が散った時の苦悶の表情が脳裏に浮かび、俺は思わず湯飲みを強く握りしめた。
今までは俺と隼人だけで生きてきた。
しかし今は祈、瑠璃ちゃん、翆ちゃんという大事な仲間が出来てしまった。
自分でもなぜ、アドバイスやコーチングをしようなんて気になったのか、今じゃ分からない。
ただ、少しだけ一人が寂しくなって、疲れていたのかもしれない。
隼人もそうだ。
俺はダンジョンでただ銃をバンバン撃ってりゃいいけれど、隼人は科学や技術で戦っている。
その相手はPKやモンスターではなく、大人や企業だ。
きっと俺以上に精神を摩耗してきたはずだ。
飄々として掴み所の無い男だが、それでも隼人だって人間で、俺と同じ17歳の子供なのだ。
だからこそ、3人を受け入れるよう俺を誘導したのではないだろうか。
と、うだうだ考え続けてはや数日である。
「コノミ、聞きたい事あるんだけど、いい?」
「何だ?」
祈はコホンと小さく咳ばらいをし、俺の正面に正座をしてかしこまった。
「あのさ。まなみ、って誰?」
「あぁ、その話か」
「ま、まさかも、元か――元カノさんとか?」
じっと俺を見る祈の瞳が少し潤んでいるように見えるのは、俺の気のせいだろうか。
「元カノ? あはは……違うよ。そんなんじゃあない。だが、少し長くなるが」
「違うの!? そ、そっかぁ! あは! あはは! 長くなってもいいよ? 聞かせて、その人のお話」
急に元気になった祈を見て、勝手に口角が上がる。
本当にこの子は朗らかで元気で、喜怒哀楽がはっきりした、気立ての良い美少女だ。
「……じゃあ、話そうか。俺と愛波と隼人の物語を」
そう言って俺はほうじ茶の残りをすすり、横目で時計を見た。
時刻は22:30、気付けば翆ちゃんや瑠璃ちゃんの声も聞こえず、秒針の音が静かに時を刻んでいた。
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