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第三章 波乱
51.決着
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地面に転がっているクズ共を睥睨しつつ、ふう、と俺はため息を吐いた。
『終わったみたいだね』
「あぁ、そちらはどうだ?」
『車で逃げようとしたから止めておいた。もうそっちに着くよ』
「こっちに着く……? どういう――」
隼人からの無線に対応していると、背後からゴツリゴツリとブーツがコンクリートを叩く音が聞こえてきた。
「……ケッ……ざまあぇねぇな」
「あ! コーチ~~! 翆ちゃんだよ~~!」
慌てて振り返ると、そこには大柄でガラの悪そうなチンピラ風の男と、その男にお姫様抱っこされている翆ちゃんがいた。
「ど、どういう状況……?」
しかもその後ろ上空では、隼人の操るドローンが静かについて来ていた。
なるほど、だからもう着く、か。
「銃声が聞こえたから来てみりゃあ……随分とまあ派手にやられてんなぁ」
「ありがとうケイちゃん。もうここで大丈夫だから下ろして? ね? お願い」
ケイちゃんと呼ばれた男は、ちらりと手元の翆ちゃんを見て黙り込んでしまった。
ていうかこいつがボスなんだよな? そのボスをケイちゃん呼びって、え?
一体何があったんだ?
「く、くそぉ……! 駄目だ、やっぱり俺にゃあ無理だ……! 翆ちゃんを悲しませる事は俺にゃあ出来ねぇ……!」
急に雰囲気が変わり、若干涙声になったケイちゃんは頭を数度振ると、抱えていた翆ちゃんをゆっくりと、丁寧に地面に下ろした。
「……ようガキ。テメェがジャッジメントか」
「そ、そうだ。貴様は何だ」
翆ちゃんを下ろし、縛られていた縄をほどいたケイちゃんは煙草を咥え、火をつけた。
「何だ、か。何だろうな。一応趣味でPKをやっている者だ」
「趣味だと! 貴様!」
「あぁ? テメェだってそうだろう? ちげぇのか」
「断じて趣味などではない!」
「じゃあ何か? 正義のヒーロー気取りか?」
「そうじゃない! 俺は、俺の目的の為にPKを潰している!」
「だぁからそれが趣味なんじゃねぇのかよ――ケッ、まぁいい。テメェがどうして俺らを狩るのか、そんなモンは最早どうでもいい」
「何が言いたい」
「俺ぁ駄目だ。心が洗われちまったよ――そこの天使にふにゃふにゃにされちまった」
ケイちゃんはたばこの煙を天へ吐き出し、そのまま夜空を見上げていた。
「どういう事だ」
「俺は自首する。どういう罪に問われるかは知らねぇが、しっかり全て償うつもりだ」
「何を、言っている……?」
「だがその前にテメェに話さなきゃならねぇ事がある」
急すぎる展開に着いていけないが、この男はもう何もしないだろうと、どこかでそう思っていた。
ガラは悪いが、言葉には覇気もなく、しょぼくれているようにも聞こえた。
「話って、何だよ」
「悪い事は言わねぇ、ここからさっさと逃げろ。テメェを狙ってるのは俺達PK組だけじゃあねぇんだ。実は――」
「だから何を言って――」
脈絡のない話に、要点を問おうとした時だった。
パァン、と乾いた銃声が闇夜に鳴り響き、ケイちゃんの胸から血が噴き出した。
そして俺の肩にも重い衝撃が走った。
「……は?」
『コノミン! 油断した! まだ終わってない!』
「……は?」
インカムから聞こえる隼人の声と、目の前でゆっくりと倒れていくケイちゃん。
倒れ行くケイちゃんの背後、少し離れた所から銃を向けている謎の人物が目に入った。
「困るんですよ。余計な事喋られるの」
「貴様! 誰だ!」
そいつの姿が目に入った瞬間、俺は翆ちゃんを抱き寄せて背後に隠した。
「こ、コーチ……ケイちゃんが」
「分かってる。でも今は動いちゃ駄目だ」
「ふぇぇ……血がいっぱい出てるよぉ……」
相手は躊躇なくケイちゃんを撃った。
物腰も柔らかく、自然に撃った。
俺には分かる、あいつは普段から銃を撃ち慣れている。
俺一人ならばどうとでもなるが、今は翆ちゃんがいる、うかつには動けない。
俺が動けば確実に翆ちゃんは撃たれて殺される。
どうするべきかと思案している中で、またしても銃声が鳴った。
そして上空で爆発するドローン。
『コノミン、ごめん、ドローンやられた』
「あぁ、見えてるよ。こいつらは何だ?」
『――多分、特殊部隊の人間だ』
「特殊部隊だと?」
『多分だけどね。そこまで頑丈に作っていなかったとはいえ、僕のドローンをあっさり撃ち落とすなんて芸当出来るの、一般人じゃ無理だし、奴が着ている服からして普通じゃない』
「なるほど。確かに――夜に暗視ゴーグル着きのヘルメットと迷彩服着てる奴なんざ、まともじゃないわな」
背中に嫌な汗が流れていくのが分かる。
ドローンを撃ち抜いた奴と、目の前で銃を構えている奴は別だ。
ドローンが爆発した時、目の前の男は一切動いていなかった。
つまり少なくとも、もう一人は確実にどこかから俺達を狙っているという事だ。
「あんたら――特殊部隊の人間か」
「ご名答。私達は――っと名乗るわけにも参りませんね。とりあえず私はホークとでも名乗っておきましょう。ジャッジメントさん。我々にご同行願えますか? 手荒な真似は致しませんので」
「……一般人をあっさり撃ち抜く奴の言葉が信用出来ると?」
「それもそうですが……緊急事態ですので」
「ここで話せばいいだろう?」
「手荒な真似はしたくないので……まぁいいでしょう。ではこちらをご覧下さい」
ホークが手を上げると、どこからともなく現れた男が一台のタブレットをホークに渡した。
身のこなしを見るに、こいつらが特殊部隊だってのは嘘じゃないみたいだな。
埠頭にある光の照射範囲外、闇の中に潜んでいるんだろう。
もし小隊規模で展開しているのなら、他にもまだ潜んでいるとみていい。
「それでは」
ホークはタブレットを持ち、画面をタップした。
『終わったみたいだね』
「あぁ、そちらはどうだ?」
『車で逃げようとしたから止めておいた。もうそっちに着くよ』
「こっちに着く……? どういう――」
隼人からの無線に対応していると、背後からゴツリゴツリとブーツがコンクリートを叩く音が聞こえてきた。
「……ケッ……ざまあぇねぇな」
「あ! コーチ~~! 翆ちゃんだよ~~!」
慌てて振り返ると、そこには大柄でガラの悪そうなチンピラ風の男と、その男にお姫様抱っこされている翆ちゃんがいた。
「ど、どういう状況……?」
しかもその後ろ上空では、隼人の操るドローンが静かについて来ていた。
なるほど、だからもう着く、か。
「銃声が聞こえたから来てみりゃあ……随分とまあ派手にやられてんなぁ」
「ありがとうケイちゃん。もうここで大丈夫だから下ろして? ね? お願い」
ケイちゃんと呼ばれた男は、ちらりと手元の翆ちゃんを見て黙り込んでしまった。
ていうかこいつがボスなんだよな? そのボスをケイちゃん呼びって、え?
一体何があったんだ?
「く、くそぉ……! 駄目だ、やっぱり俺にゃあ無理だ……! 翆ちゃんを悲しませる事は俺にゃあ出来ねぇ……!」
急に雰囲気が変わり、若干涙声になったケイちゃんは頭を数度振ると、抱えていた翆ちゃんをゆっくりと、丁寧に地面に下ろした。
「……ようガキ。テメェがジャッジメントか」
「そ、そうだ。貴様は何だ」
翆ちゃんを下ろし、縛られていた縄をほどいたケイちゃんは煙草を咥え、火をつけた。
「何だ、か。何だろうな。一応趣味でPKをやっている者だ」
「趣味だと! 貴様!」
「あぁ? テメェだってそうだろう? ちげぇのか」
「断じて趣味などではない!」
「じゃあ何か? 正義のヒーロー気取りか?」
「そうじゃない! 俺は、俺の目的の為にPKを潰している!」
「だぁからそれが趣味なんじゃねぇのかよ――ケッ、まぁいい。テメェがどうして俺らを狩るのか、そんなモンは最早どうでもいい」
「何が言いたい」
「俺ぁ駄目だ。心が洗われちまったよ――そこの天使にふにゃふにゃにされちまった」
ケイちゃんはたばこの煙を天へ吐き出し、そのまま夜空を見上げていた。
「どういう事だ」
「俺は自首する。どういう罪に問われるかは知らねぇが、しっかり全て償うつもりだ」
「何を、言っている……?」
「だがその前にテメェに話さなきゃならねぇ事がある」
急すぎる展開に着いていけないが、この男はもう何もしないだろうと、どこかでそう思っていた。
ガラは悪いが、言葉には覇気もなく、しょぼくれているようにも聞こえた。
「話って、何だよ」
「悪い事は言わねぇ、ここからさっさと逃げろ。テメェを狙ってるのは俺達PK組だけじゃあねぇんだ。実は――」
「だから何を言って――」
脈絡のない話に、要点を問おうとした時だった。
パァン、と乾いた銃声が闇夜に鳴り響き、ケイちゃんの胸から血が噴き出した。
そして俺の肩にも重い衝撃が走った。
「……は?」
『コノミン! 油断した! まだ終わってない!』
「……は?」
インカムから聞こえる隼人の声と、目の前でゆっくりと倒れていくケイちゃん。
倒れ行くケイちゃんの背後、少し離れた所から銃を向けている謎の人物が目に入った。
「困るんですよ。余計な事喋られるの」
「貴様! 誰だ!」
そいつの姿が目に入った瞬間、俺は翆ちゃんを抱き寄せて背後に隠した。
「こ、コーチ……ケイちゃんが」
「分かってる。でも今は動いちゃ駄目だ」
「ふぇぇ……血がいっぱい出てるよぉ……」
相手は躊躇なくケイちゃんを撃った。
物腰も柔らかく、自然に撃った。
俺には分かる、あいつは普段から銃を撃ち慣れている。
俺一人ならばどうとでもなるが、今は翆ちゃんがいる、うかつには動けない。
俺が動けば確実に翆ちゃんは撃たれて殺される。
どうするべきかと思案している中で、またしても銃声が鳴った。
そして上空で爆発するドローン。
『コノミン、ごめん、ドローンやられた』
「あぁ、見えてるよ。こいつらは何だ?」
『――多分、特殊部隊の人間だ』
「特殊部隊だと?」
『多分だけどね。そこまで頑丈に作っていなかったとはいえ、僕のドローンをあっさり撃ち落とすなんて芸当出来るの、一般人じゃ無理だし、奴が着ている服からして普通じゃない』
「なるほど。確かに――夜に暗視ゴーグル着きのヘルメットと迷彩服着てる奴なんざ、まともじゃないわな」
背中に嫌な汗が流れていくのが分かる。
ドローンを撃ち抜いた奴と、目の前で銃を構えている奴は別だ。
ドローンが爆発した時、目の前の男は一切動いていなかった。
つまり少なくとも、もう一人は確実にどこかから俺達を狙っているという事だ。
「あんたら――特殊部隊の人間か」
「ご名答。私達は――っと名乗るわけにも参りませんね。とりあえず私はホークとでも名乗っておきましょう。ジャッジメントさん。我々にご同行願えますか? 手荒な真似は致しませんので」
「……一般人をあっさり撃ち抜く奴の言葉が信用出来ると?」
「それもそうですが……緊急事態ですので」
「ここで話せばいいだろう?」
「手荒な真似はしたくないので……まぁいいでしょう。ではこちらをご覧下さい」
ホークが手を上げると、どこからともなく現れた男が一台のタブレットをホークに渡した。
身のこなしを見るに、こいつらが特殊部隊だってのは嘘じゃないみたいだな。
埠頭にある光の照射範囲外、闇の中に潜んでいるんだろう。
もし小隊規模で展開しているのなら、他にもまだ潜んでいるとみていい。
「それでは」
ホークはタブレットを持ち、画面をタップした。
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