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第三章 波乱

41.秘策

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「えっと、色々とドタバタしちゃったけど、瑠璃ちゃん、コノミに伝える事あるんじゃない?」



「うん。翆ちゃんが攫われた時に言われたの……返して欲しければ明日の18時にお台場の埠頭まで来いって」



「あぁ、場所は分かってる。実はこうなった時を想定して君達の手の甲にGPSを仕込んであるんだ」



「えちょ、それマ?」



「聞いてない、それは聞いてない」



「すまない。余計な心配を掛けたくなくて言い出せなかった。けど常に起動しているわけじゃない。いざという時に起動させるタイプのもの――エアタグのようなものだと思ってくれ」



「いつのまに……」



「あ! 健康診断的なのした時に手の甲に何かプシュってされた! それ?」



「そうだ」



 突然のカミングアウトに二人は少し驚いていたけれど、すぐに真剣な表情に戻った。



「そうだったんだ。ありがとう」



「隼人さん製なら安心安全だ」



「そう言ってくれると助かる。これも怒られるって思ってたんだがな」



 俺は思わずふっと、笑みをこぼしてしまった。

 傍から見れば、年頃の女の子に発信機を埋め込むなんてどうかしてると後ろ指をさされるだろうに。

 

「さすがコーチ。考えが二手三手先だ」



「そ、それで、これからどうするの? 裁きとか言ってたけど」



「あぁ、それは――」



 俺は二人にこれからの事を細かく説明した。

 隼人にダンジョン掲示板をクラッキングしてもらったのは、これから俺が行う作戦に必要だからだ。



 前々から俺も配信をしようと考えていたのだ。

 今まではひっそりと暗躍する影の狩人だったが、色々な経緯が重なって、俺の活動は公のものとなってしまった。



 ならばもう開き直って大々的に、ダークなエンターテイメントとして活動を配信してしまえばどうかと考えた。

 PK《ゴミ》共はこっそり狩っても狩っても無尽蔵に湧いてくる。



 PKKを公にし、その配信でPK被害を少しでも抑えられるのではないか。

 俺という抑止力があると知らしめる事で、少しでも救える人達がいるんじゃないか。



 まるで正義のヒーロー気取りだが、アンチだってかなり湧くだろうし、誉められた事ではない。

 けれど今の法律では探索者はPKから守られない。



 守られないのなら、俺が必要悪となって探索者を守る。

 せめて手の届く範囲は救い上げたい。

 昔の俺からは考えられない自己犠牲の精神だ。



 それもこれも祈と出会い、色々と影響されてしまったのだろう。

 だがそれでいい。



 それに、俺がPKKとして有名になれば、俺の目的、倒すべき仇に出会う確率も上がるかもしれないのだから。



「つまり――コノミが生配信しながら単身敵地に乗り込んで、翆ちゃんを拉致した連中を配信に晒し上げるって事……?」



「その配信チャンネルを、ダンジョン掲示板全てに張り付ける……」



「そういう事だ。オペレーション名はワルプルギスの狂宴と名付ける」



 事の全てを話し終えると、二人は口を大きく開けて固まってしまった。



「ワルプルギスの狂宴だと名づける、じゃないわよ! 馬鹿なの!?」



「なっ!? 馬鹿とはなんだ馬鹿とは!」



「当たり前じゃない! 高校生がたった一人で乗り込んで翆ちゃんを助け出す!? 無理に決まってるじゃない!」



「お、落ち着け祈」



 固まっていた祈が立ち上がり、俺の腕を思い切りわし掴みにした。

 瑠璃ちゃんは目を閉じて眉根を押さえていた。



「落ち着けるわけないでしょ!? やっぱり警察に――」



「聞け祈! 警察には通報する、だが警察が到着する前に俺が全て方を付ける。大丈夫だ。俺を信じろ」



「敵が何人いるか分からないんだよ!?」



「敵の数は20人、奥で転がってる奴らから聞き出した」



「20人もいるんでしょ!? 死んじゃうよ!」



 喋りながら感情が高ぶって来たのか、祈の目には涙が浮かんでいた。

 本当に、心の底から心配してくれているのが分かる。

 俺がどう説得しようか悩んでいると、奥の方から隼人の声がした。
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