俺しか使えないジョブ【ガンナー】で無双していたら、助けたアイドルのコーチングをする事になった件

登龍乃月

文字の大きさ
上 下
37 / 58
第三章 波乱

37.助けてコノミン

しおりを挟む
「コノミ! 助けて! お願い!」



 私はインターフォンを鳴らし、扉をバンバンと叩いた。

 コノミはすぐに扉を開け、驚いた顔をしていた。

 

「ど、どうしたんだ?」

「今から駅まで瑠璃ちゃんを迎えに行くの、お願い、一緒に来て! 訳は向かいながら話すから!」

「あ、あぁ、いいけど……大丈夫か? 顔が真っ青だぞ」

「その原因を話すから!」



 心配そうに私を見詰めるコノミの瞳にハートを射抜かれながらも、私は思い切り動揺していた。

 まさかこんな事になるなんて。



「待たせた。行こう」



 コノミは急いで準備をしてくれ、そのまま一緒に駅まで向かった。

 道中瑠璃ちゃんから聞いた話を、コノミに余す所なく伝えた。

 するとコノミの顔がみるみる怖い顔に変わっていった。

 

「クソが……! クソゴミ共め……!」

「コノミ……」



 怒ってる顔もカッコイイけど、それ以上に翆ちゃんの事でこんなに怒ってくれる事が嬉しかった。

 その怒り顔を見ただけで、焦っていた私の心が少しだけ落ち着く。



「俺のせいだ。俺が――君達のコーチングなんて引き受けなければこんな事にはならなかった」

「違うよコノミ! コノミが教えてくれなかったら私達、ここまで強くなってないよ!」

「だが……!」

「いいの! 今はそれどころじゃないでしょ! ほら、もう着くよ」



 家から徒歩10分の所にある駅の改札、そこに瑠璃ちゃんが立って待っていた。

 周囲を何度も見回しては、胸の前で小さな手をきゅっと握っていた。

 翆ちゃんが目の前で拉致されたのだ。

 心細くないわけがない。

 

「瑠璃ちゃん……」

「い、祈りちゃん!」



 声をかけると瑠璃ちゃんは私の胸に飛び込み、そのまま泣きじゃくり始めた。



「ひぅ……! ごめん、ごめんねええ!」

「瑠璃ちゃんのせいじゃない。これは俺の問題だ」

「コノミ……」



 瑠璃ちゃんが落ち着くのを待ち、瑠璃ちゃんを連れて家に帰ろうとしたその時、コノミが立ち止まって周囲を見渡した。

 

「……祈、瑠璃。俺から離れるな」

「え……?」

「は、はい」



 そう言ってコノミは帰り道ではなく、逆の方向に歩き出し、段々と人気のない方へと向かって行った。



「ちょ、ちょっとコノミどしたの? 逆」

「しっ! 尾けられてる。三人、てとこだな」

「え……!」

「もうやだぁ!」



 取り乱す瑠璃ちゃんを宥めつつ、コノミの横を付いていく。

 私は瑠璃ちゃんの手をしっかり握り、私は……コノミにしっかりと手を握られていた。



「はわぁ……!」



 と、私が心ときめいたのもつかの間、私と瑠璃ちゃんはコノミに建物と建物の細い路地に引き込まれた。

 そして少し奥のゴミ箱の角に私達は座らされた。



「ここに隠れて、じっとしていてくれ」

「うん」

「はぃ……」



 そして物陰に姿を隠していると、コノミが言った通り、後ろから3人組の男が現れた。

 作業着を着た若めの男達は、そのまま私達のいる場所に近付いてくる。

 このままじゃ見つかる、と思った瞬間。

 鈍い音と、何かが弾ける音がして男の1人が呻き声を上げて倒れた。



「てめぇ!」

「やりやがったな!」



 残った男2人が怒鳴り声をあげるが、それと同時にさらに鈍い音、そしてバチバチ! とさっきと同じ音がして静かになった。



「もう大丈夫だ。2人共出てきていい」



 コノミの声が聞こえ、私は瑠璃ちゃんの手を引いて物陰から顔を出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...