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第二章 コーチング開始

27.地獄の下り坂

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「ダーーーッハッハッハッハァア! 弱い! 弱すぎるぞ貴様らあああ!」

「いやああああああ!」

「助けてえええええ!」

「おがあさああああああん!」

「なっはっは! コノは元気だなぁ!」



 世界に唐突に誕生したダンジョン。

 その中で最初期に誕生したダンジョンを、原始の構造物オリジンオブジェクトと呼んだ。



 それらのダンジョンは全て成長型のダンジョンであり、最奥にいるダンジョンボスを撃破すると構造を変化させ、難易度が上昇した新たなダンジョンとなる。

 六本木にある最難関ダンジョンとされるヒルズダンジョンも、そのうちの一つだった。



 始めは10層ほどだったヒルズダンジョンは現在155層まで成長しており、深層には上級者パーティですら手こずる多種多様な凶悪モンスターが生息している。

 そんなヒルズダンジョンの深層を今、俺達は進んでいた。

 

「死ぬ! 死ぬ!」

「大丈夫だ! 死んでもしっかり復活させてやっから安心していいぞ?」

「そうじゃなくってえええええ」

「ぎゃあああ!」



 ヒルズダンジョン100層、レベルで言えば1000前後、探索者レベルで言えば上級後半くらいの敵が生息している。



 ミノタウロスの強化版であるハイ・ミノタウロスや、オーガの上位版であるギガースなど、筋骨隆々は当たり前、一撃が致死レベルの攻撃を繰り出してくるモンスターがごろごろいる。

 しかし――。



「ヒャッハァーー! どうした雑魚共! 弱い! 弱すぎるぞォオオ!」



 それは一般的な話であって、この俺と風吹さんには通用しない。

 風吹さんのレベルは1200であり、ヒルズダンジョンより凶悪な海外のダンジョンなどでも活躍しているのだから当たり前なのだけれど。



 ではなぜそこに佐藤さん達が連れて来られたのか。

 話は単純で、高レベルの俺と風吹さんが佐藤さん達を引率、戦闘はほぼ俺だけでこなし、風吹さんは佐藤さん達の治癒に専念してもらう。



 要はちょっぴり濃度の濃いパワーレベリングっていうやつだ。

 佐藤さん達のレベルは平均450、中級者の後半でありもう少し頑張れば上級者の仲間入りだ。



 しかし探索者のレベルというものに際限は無く、当たり前の話だが戦えば戦うほど上がっていく。

 パーティを組めば経験値は分割されて入っていくのだから、俺が手当たり次第に高レベルモンスターを狩りまくれば必然的に佐藤さん達にも経験値が流れ込む。



 ゲームとは違い、レベル差による経験値のロストなどは無いのでやればやった分しっかりと吸収される。

 レベルが上がっても戦闘技能などは上達しないのではないか? と思うのだけれど、今は三人の固有スキルを発現させる事が目的だったりする。



 固有スキルが発現すれば文字通り世界が変わる。

 ちなみに俺も固有スキルがあるけれど、それはまた別の機会に明かそうと思う。

 

「あああ! 翆ちゃんんんん!」

「だ、だいじょぶ~腕ちょんぎれたけど~~ひ~~ん」

「嫌だあああああ! 祈りんの馬鹿あほ巨乳! 死ぬううう」

「私のせいなの!? でも私のせいかもおおおごめんんん!」

「はっはっは! 任せろ!」



 モンスターはほとんど俺が倒しているけれど、たまにギリギリまで弱らせたモンスターをわざと逃がして佐藤さん達の方に向かわせたりしている。



 もしもの事があっても風吹さんが治してくれるから大丈夫なわけだが、死とギリギリのラインを体験させる事でレベルアップの際のステータスも良くなるのだ。

 三人には少し悪い気もするけれど、もうちょっと頑張ってもらおう。
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