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第二章 コーチング開始

23.決意表明

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「と、という事で、よろしければ私達三人共アドバイスを頂けたらと思いましてですね、そのですね、はい」



 瑠璃ちゃんとの通話を終えてから約二時間後、やっとの思いで連絡先を登録し、過呼吸になりそうなくらいの緊張を押さえつけてヴォイドさんに電話を掛けた。

 手汗も足汗も脇汗もハンパじゃない。

 

『そうですか。大丈夫ですよ。というより俺もそのつもりでしたから』

「あ、そうなんですか……」

『何で残念そうなんですか?』

「いえいえ! そんなつもりはござぁせんですわよ!?」

『ござぁせんて……面白い方ですね。それで日程はいつにしますか? 俺はいつでも平気なのでそちらの希望に合わせられると思います』

「えっと、それじゃあ――来週の水曜日でいいですか?」

『わかりました。それと、俺の他に二人、助っ人がいるのでそれだけ念頭に置いておいてください』

「二人、ですか。わかりました! では当日よろしくお願いします!」



 会話が終わり、ヴォイドさんの方から通話を切ってくれた。

 私から切るなんて恐れ多い事は出来ないので助かった。

 

「はぁ……緊張で死ぬかと思った……汗すご……」



 心臓の鼓動が大きすぎてヴォイドさんに聞こえてしまうんじゃあないかと心配だった。

 心を落ち着かせるために熱いほうじ茶をすする。



「はぁ……おいし」



 しかし我ながら随分思い切った事をしたと思う。

 ヴォイドさんを好きだから、という理由はひとまず置いておいて、平凡Dガールズは結成から二年たった。



 その間に色々な事があった。

 どこそこの事務所に所属しないかとか、Vをやらないかとか、いいマネージャーを付けてあげるとか、そういう類の話は沢山あった。



 そりゃあもう鬱陶しいくらいだった。

 どこかに所属したり人の下に付けばいくらかやり易いのかもしれないけれど、契約とか色々なものに縛られる。



 私はそういう縛りが嫌だった。

 だから人の手を借りようとは思わなかったし、誰かに借りを作るのも嫌だった。

 ただの子供の我儘なのかもしれないけれど、大人の金儲けの道具にはなりたくなかった。



 最初はこんなに有名になるとは思っていなかったし、趣味の延長線上くらいのモチベだった。

 でも今はもう私達を待っている人が沢山いる。

 だから私は覚悟を決めたのだ。



 誰かの手を、ヴォイドさんの手を借りると決めた。

 勿論誰でもいいわけじゃない。

 ヴォイドさんの事は好きだ、けど好きという気持ちだけでアドバイスを受ける事にしたわけじゃあない。



 この人なら信じられる、そう直感したからだ。

 恋は盲目で、俗に言う好き補正がかかってしまっているのかもしれない。

 しかし初めて頼ろうと思えた人なのだ。



 この選択がもし失敗だったなら……私は人を見る目が無かったという事だろう。

 私は小さく溜息を吐いてから、ぬるくなったほうじ茶をすすった。
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