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第一章 始まりのハジマリ
14.城と俺と薄い壁
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「ただいまー……って誰もいないんだけど」
ショップで全ての金品を売り払った俺は細々した日用品や食料を買い、居城へと帰って来た。
城の名前は五月ハイツ、六畳一間の1K、ユニットバスの家賃4万円、築50年の古き良き城だ。
「やれやれ……どこ見ても俺関係の記事や動画やら……ご苦労なこって」
スマホの画面には『銃使いPKKの謎について』という考察動画のサムネイルが表示されていた。
別段興味が惹かれたわけでもないけれど、特にやることもないので暇つぶしがてら動画を開く。
お気に入りのほうじ茶を飲み、お気に入りの三色団子を頬張りながら動画を視聴する。
『チートとも言えるあの銃のような武器と、通称ジャッジメントと呼ばれている謎のPKKについて、今回は考察していこうと思います――』
「チートね。まぁ確かに間違ってなくもないけど……ユニーク武器って大概そうじゃないか? 世界でも100も無い特殊武器だしな。その性能は規格外だが……それをわざわざ明かすバカもいないだろ」
有名な探索者の中にもユニーク武器を所持していると公言する者は多いけれど、その性能まで細かく語る奴はいない。
どのようにゲット出来るかは完全な運であり、Aというモンスターからユニーク武器が出たとしても、同じモンスターからまた出るとは限らない。
見た目はカッコイイ物から可愛い物、不気味な物やファンシーな物、そして俺が貰ったパチンコのようにボロボロの物など実に様々だ。
それにそのアイテムを装備して使用するまでユニークアイテムかどうかが分からない、というのがネックでもある。
まぁだからこそ、俺にくれた探索者の人は分からなかったんだろうし、何よりドラゴンシューターがユニーク武器だと発覚したのは進化してからなのだ。
進化し、成長するという特性を持ったユニーク武器は前例が無い。
当時は嬉しくてその情報を公開しようと思ったが、隼人に止められた。
止められた理由は色々と面倒くさい事になるだろうから、というものだった。
『しかしこの高笑いといいネーミングセンスといい、まるで厨二病だよね、あはは!』
「あ?」
動画の配信者が俺の映像を見て、ケラケラと笑っているのを聞いて若干イラっとした。
厨二病などという小さな括りに当て嵌めないでもらいたいものだ。
「ククク……クックックック……ンナァーハッハッハッハァ!」
ケラケラと笑う配信者に対抗し、俺もいつも通りの高笑いをしてみせた。
その途端、壁からドン! という音が聞こえた。
「……スミマセン」
うるさかったのだろう、隣の住人に怒られてしまった。
五月ハイツの壁は薄い。
ショップで全ての金品を売り払った俺は細々した日用品や食料を買い、居城へと帰って来た。
城の名前は五月ハイツ、六畳一間の1K、ユニットバスの家賃4万円、築50年の古き良き城だ。
「やれやれ……どこ見ても俺関係の記事や動画やら……ご苦労なこって」
スマホの画面には『銃使いPKKの謎について』という考察動画のサムネイルが表示されていた。
別段興味が惹かれたわけでもないけれど、特にやることもないので暇つぶしがてら動画を開く。
お気に入りのほうじ茶を飲み、お気に入りの三色団子を頬張りながら動画を視聴する。
『チートとも言えるあの銃のような武器と、通称ジャッジメントと呼ばれている謎のPKKについて、今回は考察していこうと思います――』
「チートね。まぁ確かに間違ってなくもないけど……ユニーク武器って大概そうじゃないか? 世界でも100も無い特殊武器だしな。その性能は規格外だが……それをわざわざ明かすバカもいないだろ」
有名な探索者の中にもユニーク武器を所持していると公言する者は多いけれど、その性能まで細かく語る奴はいない。
どのようにゲット出来るかは完全な運であり、Aというモンスターからユニーク武器が出たとしても、同じモンスターからまた出るとは限らない。
見た目はカッコイイ物から可愛い物、不気味な物やファンシーな物、そして俺が貰ったパチンコのようにボロボロの物など実に様々だ。
それにそのアイテムを装備して使用するまでユニークアイテムかどうかが分からない、というのがネックでもある。
まぁだからこそ、俺にくれた探索者の人は分からなかったんだろうし、何よりドラゴンシューターがユニーク武器だと発覚したのは進化してからなのだ。
進化し、成長するという特性を持ったユニーク武器は前例が無い。
当時は嬉しくてその情報を公開しようと思ったが、隼人に止められた。
止められた理由は色々と面倒くさい事になるだろうから、というものだった。
『しかしこの高笑いといいネーミングセンスといい、まるで厨二病だよね、あはは!』
「あ?」
動画の配信者が俺の映像を見て、ケラケラと笑っているのを聞いて若干イラっとした。
厨二病などという小さな括りに当て嵌めないでもらいたいものだ。
「ククク……クックックック……ンナァーハッハッハッハァ!」
ケラケラと笑う配信者に対抗し、俺もいつも通りの高笑いをしてみせた。
その途端、壁からドン! という音が聞こえた。
「……スミマセン」
うるさかったのだろう、隣の住人に怒られてしまった。
五月ハイツの壁は薄い。
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