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第一章 始まりのハジマリ
4.ヴォイドプレデター
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「フゥーーーッハッハッハァ! 弱い! 弱すぎるぞゴミムシ共が! ダッハッハッハ! っと、そうだ。君、大丈夫だったか?」
「は……ひゃい……」
連続で獲物にあり付けた興奮から、少し過剰な攻撃をしてしまったけれど相手はPKなのだから問題はない。
それよりもこの子、どこかで見た事がある気がする。
まるで人形のように端正な顔立ち、サラサラのブロンズヘアー、特徴的なヘアバンド、身長の割に凶悪なおっぱい――うーん、喉まで出かかってるのにどうも思い出せない。
一方的な殺戮を終え、地面に少女を降ろした俺はPK共が残したドロップアイテムを回収していく。
装備品やポーションなどを仕分けてまとめ、それを虚空ストレージに放り込んでいく。
「えぇ!? なんですかそれ!?」
「は?」
それを見ていたのか、少女が股間を押さえながら指差して来た。
股間あたりが濡れている気がするが――無視しておこう。
人には触れられたくない事があるもんだ。
「なんですかって……あぁ、虚空ストレージだよ。君も頑張ってればいつかは習得出来る」
「は、はぁ……こくうすとれーじ……じゃなかった! あの、助けて頂いてありがとうございました! 本当に! 本当にありがとうございました! 助かりました! この御恩は絶対に忘れません! お礼も好きなだけ言ってください! 出来る範囲でお応えします!」
「礼なんていらない。助けたつもりもない。俺は獲物を狩ったまでだ。そう、このブラックサレナと共にな」
「でも! あうう! じゃ、じゃあ困った時は私がお助けします! 何があってもお助けしますから!」
懐にしまった愛銃ブラックサレナを撫で、さっきの技の命名は実に決まっていたとほくそ笑む俺。
あの技の本当の名前は多連銃撃という名前なのだが、どうにもダサいので使うときに俺が勝手に名前を変えている。
そもそもスキルを放つのに技名を口に出す必要はない。
格好いいと思う名前を叫んだ方が格好いい、これが俺の持論であり、生き様である。
ただし異論は認めよう。
「あの! 聞いてます!?」
「あ?」
「あ? ってガラ悪い!」
「あぁ、すまん。ちょっと聞いてなかった」
「やっぱり! 私がお助けしますって言ったんです!」
「そうか。ならその時はお願いするよ。時の女神クロノスが微笑むのなら、君ともいつか相まみえる事もあるだろう」
「え? くろ……なんですか?」
「む……何でもない。忘れろ」
「は、はい。あの、お名前を聞いてもいいですか?」
「名前か……そうだな、我が名は深淵の捕食者! ヴォイドプレデター! だっ!」
そしてマントバサァ、ふ、決まった。
超絶カッコイイぞ俺。
「ぼいどさんですね!」
「ちっがぁう! ボイドじゃない、ヴォイドだ! VにOでヴォ、イ、ド!」
「ヴォイドさんですね! ありがとうございます!」
「いやだから、そうじゃなくて今のは二つ名で」
「蓋ツナ? ツナ缶の蓋がどうしたんです?」
「あぁもういい、調子狂うな……俺は行くぞ。それと……これやる」
「へ?」
そう言って虚空ストレージから男女どちらも着れそうなズボンを出し、少女に渡した。
会話の一切合切が聞こえていたので股間の濡れも何だか分かっている。
そのまま帰すわけにもいかないと思い、無難なズボンを渡したのだ。
「は……わわわわわ……! ちょ! やだぁああ! 死にたい恥ずかしい無理ぃい!」
「うわっ! 急に大きな声出すなよびっくりしたな!」
少女は粗相をしたのを思い出したのか、その場でしゃがみ込み絶叫を上げた。
「ごめんなさいありがとうございますごめんなさい忘れてお願いだからあああ~~……」
「はいはい……それじゃ、気を付けて帰れよ」
別に漏らしたからってどうという事も無いだろう。
俺が探索者を始めたばかりの頃なんて漏らしまくってたっつの。
「は……ひゃい……」
連続で獲物にあり付けた興奮から、少し過剰な攻撃をしてしまったけれど相手はPKなのだから問題はない。
それよりもこの子、どこかで見た事がある気がする。
まるで人形のように端正な顔立ち、サラサラのブロンズヘアー、特徴的なヘアバンド、身長の割に凶悪なおっぱい――うーん、喉まで出かかってるのにどうも思い出せない。
一方的な殺戮を終え、地面に少女を降ろした俺はPK共が残したドロップアイテムを回収していく。
装備品やポーションなどを仕分けてまとめ、それを虚空ストレージに放り込んでいく。
「えぇ!? なんですかそれ!?」
「は?」
それを見ていたのか、少女が股間を押さえながら指差して来た。
股間あたりが濡れている気がするが――無視しておこう。
人には触れられたくない事があるもんだ。
「なんですかって……あぁ、虚空ストレージだよ。君も頑張ってればいつかは習得出来る」
「は、はぁ……こくうすとれーじ……じゃなかった! あの、助けて頂いてありがとうございました! 本当に! 本当にありがとうございました! 助かりました! この御恩は絶対に忘れません! お礼も好きなだけ言ってください! 出来る範囲でお応えします!」
「礼なんていらない。助けたつもりもない。俺は獲物を狩ったまでだ。そう、このブラックサレナと共にな」
「でも! あうう! じゃ、じゃあ困った時は私がお助けします! 何があってもお助けしますから!」
懐にしまった愛銃ブラックサレナを撫で、さっきの技の命名は実に決まっていたとほくそ笑む俺。
あの技の本当の名前は多連銃撃という名前なのだが、どうにもダサいので使うときに俺が勝手に名前を変えている。
そもそもスキルを放つのに技名を口に出す必要はない。
格好いいと思う名前を叫んだ方が格好いい、これが俺の持論であり、生き様である。
ただし異論は認めよう。
「あの! 聞いてます!?」
「あ?」
「あ? ってガラ悪い!」
「あぁ、すまん。ちょっと聞いてなかった」
「やっぱり! 私がお助けしますって言ったんです!」
「そうか。ならその時はお願いするよ。時の女神クロノスが微笑むのなら、君ともいつか相まみえる事もあるだろう」
「え? くろ……なんですか?」
「む……何でもない。忘れろ」
「は、はい。あの、お名前を聞いてもいいですか?」
「名前か……そうだな、我が名は深淵の捕食者! ヴォイドプレデター! だっ!」
そしてマントバサァ、ふ、決まった。
超絶カッコイイぞ俺。
「ぼいどさんですね!」
「ちっがぁう! ボイドじゃない、ヴォイドだ! VにOでヴォ、イ、ド!」
「ヴォイドさんですね! ありがとうございます!」
「いやだから、そうじゃなくて今のは二つ名で」
「蓋ツナ? ツナ缶の蓋がどうしたんです?」
「あぁもういい、調子狂うな……俺は行くぞ。それと……これやる」
「へ?」
そう言って虚空ストレージから男女どちらも着れそうなズボンを出し、少女に渡した。
会話の一切合切が聞こえていたので股間の濡れも何だか分かっている。
そのまま帰すわけにもいかないと思い、無難なズボンを渡したのだ。
「は……わわわわわ……! ちょ! やだぁああ! 死にたい恥ずかしい無理ぃい!」
「うわっ! 急に大きな声出すなよびっくりしたな!」
少女は粗相をしたのを思い出したのか、その場でしゃがみ込み絶叫を上げた。
「ごめんなさいありがとうございますごめんなさい忘れてお願いだからあああ~~……」
「はいはい……それじゃ、気を付けて帰れよ」
別に漏らしたからってどうという事も無いだろう。
俺が探索者を始めたばかりの頃なんて漏らしまくってたっつの。
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