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第一章 始まりのハジマリ
2.ジャッジメントデスレイン
しおりを挟む「止めてください! 手伝うって言ったのは嘘だったんですか!」
目の前で剣をぶら下げて下卑た笑みを浮かべる男に対し、私はそう言った。
私の周囲には5人の男が陣取っており、その誰もが皆覆面や仮面、顔を隠している。
目の前の男は目だけを覆う仮面を付けており、汚らしく舌なめずりをしている。
「手伝ってやったじゃねぇか。だからそのお礼を頂こうと思ってな。きひひ!」
「きゃっ!」
男は笑いながら私の胸元に剣を振り下ろした。
それだけで胸に着けていたプレートメイルがさっくりと縦に割れた。
「大丈夫だって、すぐによくなるさ」
「くっ……! 良いんですか! 今は配信中ですよ! 貴方達の行いが中継されてます!」
「おーおー怖いねぇ。けどな、そんなヘマする俺達じゃあねぇのさ。お前らに手伝うと言ってきた男はどんな顔だった? 思い出してみるがいい」
「それは……え? うそ、何で……!」
ダンジョンに潜る前、初級者育成ギルドの人達だと言って声をかけてくれた人……どうして顔が思い出せないの!?
何度思い出そうとしても、頭の中に靄が掛かったように思い出せない。
「ひゃっひゃっひゃ! そうだろう? 思い出せないだろう? それは配信を見ているお客さん達も同じさぁ! 何故かは教えてやらねぇけどな?」
「「「ぎゃっはっはっは!」」」
「なんてやつらなの……!」
「いいねぇその絶望に染まった顔、ていうかお前どこかで見た顔だな? ま、いいか。とんでもねぇエロボディなんだ。この体で何人の男を騙して来たんだ?」
「や、やめて!」
両腕を別の男達にがっちりホールドされ、さらに足の腱が切られていて動く事も出来ない。
男はそんな私の足を無理やり広げようと太ももに手を差し込んで来た。
「やだ……ねぇお願い止めて! 助けて! やだあ!」
「あひゃひゃ! こいつ漏らしやがったぜ! 堪らねぇなぁおい!」
全身の血の気が勢いよく引いていくのが分かる。
事もあろうに生配信中、配信中に全てが流れてしまう。
配信を切ろうにも、配信カメラのコントローラーはバッグの中で、そのバッグはこいつらに奪われてしまっている。
視聴者の誰か、通報してくれただろうか。
見られたくない、触られたくない、聞かれたくない、いやだ、いやだいやだいやだいやだ!
「やだよおおおおお!」
「ひゃっはーーー! 足開け豚ぁ!」
「豚は貴様だ」
「へ?」
凌辱され、殺される、その一部始終が配信で垂れ流しされてしまう。
私の心が絶望で真っ黒に塗りつぶされそうになった時、それは聞こえた。
タァン、という軽い音、映画やアニメでよく聞くあの音。
ダンジョン内では決して聞く事の無いはずの、乾いた音がフロアに鳴り響いた。
「だ! 誰だテメェ!」
「黙れゴミ」
男――男の子の声が聞こえ、再度タァン、という音。
「大丈夫か?」
そしてふわりと抱き上げられた感覚がして、固く閉じていた瞼を開けた。
そこにはさっきまで私を凌辱しようとしていた下卑た男では無く、冷たくどこか寂しそうな眼をした少年がいた。
「あ……」
「少し飛ぶ、口を閉じろ舌を噛むぞ」
「んむぐ!」
「てめぇこらぁ!」
目の前に剣先が迫るが、すごい勢いで私は宙に浮き、逆さになった。
「むぐ!?」
恐らく少年が私を抱きながら跳躍した、というのは分かる。
だがなぜ視界が上下逆さになっているのだろうか?
一瞬遅れて現実の情報が脳に届く。
少年は私を抱きかかえながらダンジョンの天井まで跳躍し、天井に足を付けていたのだ。
「さぁ、轟け雷鳴! 断罪の暗黒雨!」
そこからは一瞬だった。
少年の手がぶれたと思ったら、戦争映画でよくあるアレ、戦闘ヘリが敵に向けて銃を撃ち続ける時の音が聞こえた。
ダララララ! という重く軽やかな発砲音が立て続けに鳴り、それが鳴りやんだ時にはもう男達の姿は無く、彼らが所持していたアイテムだけが残っていた。
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