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16 ダンジョンを終えて
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「なぁフィリア」
「なに?」
「お前いきなりどうしたんだ? 急に機嫌悪くなって」
「それは……」
ダンジョンをクリアした後、私達はドロップアイテムや素材をギルドに売り払い、そのお金でご飯を食べに来ていた。
私の取り分もそこそこあったのだけど、私にはギルドへの支払があるのでみんなのようにホクホクにはなれなかった。
でも普段の倍以上のお金を返せたし、お財布もだいぶ温まった。
なので今は久しぶりにお肉を食べようと、ホロリー鳥のガーリックソテーと水牛羽の辛味揚げを堪能している所だった。
「僕は気にしてないよ」
「ザックスがそういうならいいんだがよ」
「……」
食事の席にはもちろん一緒のパーティーだったザックスも同席していて、ちょうど私の目の前に座っている。
目を合わせられないので、私はひたすら肉にかじりつき、適当な相槌ばかりしていた。
本当に失礼で本当に申し訳ないと思う。
ごめんなさい。
「それにフィリアさん以上に強烈な人もいたからねぇ。ほら、冒険者って癖が強い人多いじゃん? 男も女もさ」
「あー確かにそうだなぁ、やたら癖強いのとか多いな」
「言葉で人を殺すんじゃないかってくらい気の強い女性もいたし、すぐ叩く女性もいたし、だから僕は別にそこまで気にならないよ」
「……そう」
私の場合、特定のタイプにだけ反応してしまう、というものだけど、本当に治さないと。
ザックスがとても人のいい優しい、力強い男性だというのは既に重々承知してる。
けど半年と少し、毎日毎日四六時中気を張っていた私の、仮面の私は中々抜けてくれない。
もう貴女に要はないっていうのに。
「はーしかしなぁ」
「どうしたんだい? いきなり溜息吐いて」
皿の上の肉からバルトの顔に視線を動かす。
顔が少し赤いのはお酒を飲んでいるからだろう。
ビールを一息に飲み干して「かぁー! このために生きてんなぁ!」って言ってたし。
私にはまだお酒の美味しさというものが分からない。
もう飲める歳ではあるけど、処女宮でアルコールは厳禁だったし。
「いやな。俺、アルストを出ようかとか最近思っててよ」
「え!?」
なにそれ、私そんな話聞いてない。
バルトの視線と私の視線が交差し、バルトは困ったような顔で頬をかいた。
「ほら、アルストって物価高いだろう? 今までは貧乏で国を出る金すらなかったから我慢してきたけど、A級になって収入も余裕が出てくるようになったからよ。旅費貯めて世界を見て回りたくなった、てのがあってな」
「旅! いいなぁ、私も行ってみたい」
「楽しいよぉ? 僕も色々な国を回ってるけど、それぞれに特徴があったり、別世界の景色があったり、凄いよぉ」
「ま、そう考えたのはザックスから色々聞いたからなんだがな」
「そうなのかい? でも大変だよ? 物価が高くてもこの国はいい所だ。旅費なんかを考えるとトントンって所かな、とも思うしね」
「進めてるのか止めてるのか分からないわよ。どっちなの」
思わず反応してしまった。
ザックスと目が合ってしまい、慌てて目を背ける。
「どっちも、かなぁ。確かに旅はいい。新しい発見があるし、見聞も広がる。でも危険なこともたくさんあるし、騙すような奴もいる」
「……そうだけど」
「考え方は人それぞれだから、僕は思いつく事を言っているだけだよ」
「……そう」
ザックスの言葉を聞き、ちら、とバルトを見る。
目が合うと優しく微笑みを向けてきて、何を考えているのかが分からない。
本当に行くの?
と聞けばいい。
でも、その話をしてくれなかった事が少しショックで、その言葉が出てこない。
ダンジョンをクリアして、自信も少しついて、トラウマも少し改善出来たような気もする。
でも、いきなりそれは無いよ。
「なに?」
「お前いきなりどうしたんだ? 急に機嫌悪くなって」
「それは……」
ダンジョンをクリアした後、私達はドロップアイテムや素材をギルドに売り払い、そのお金でご飯を食べに来ていた。
私の取り分もそこそこあったのだけど、私にはギルドへの支払があるのでみんなのようにホクホクにはなれなかった。
でも普段の倍以上のお金を返せたし、お財布もだいぶ温まった。
なので今は久しぶりにお肉を食べようと、ホロリー鳥のガーリックソテーと水牛羽の辛味揚げを堪能している所だった。
「僕は気にしてないよ」
「ザックスがそういうならいいんだがよ」
「……」
食事の席にはもちろん一緒のパーティーだったザックスも同席していて、ちょうど私の目の前に座っている。
目を合わせられないので、私はひたすら肉にかじりつき、適当な相槌ばかりしていた。
本当に失礼で本当に申し訳ないと思う。
ごめんなさい。
「それにフィリアさん以上に強烈な人もいたからねぇ。ほら、冒険者って癖が強い人多いじゃん? 男も女もさ」
「あー確かにそうだなぁ、やたら癖強いのとか多いな」
「言葉で人を殺すんじゃないかってくらい気の強い女性もいたし、すぐ叩く女性もいたし、だから僕は別にそこまで気にならないよ」
「……そう」
私の場合、特定のタイプにだけ反応してしまう、というものだけど、本当に治さないと。
ザックスがとても人のいい優しい、力強い男性だというのは既に重々承知してる。
けど半年と少し、毎日毎日四六時中気を張っていた私の、仮面の私は中々抜けてくれない。
もう貴女に要はないっていうのに。
「はーしかしなぁ」
「どうしたんだい? いきなり溜息吐いて」
皿の上の肉からバルトの顔に視線を動かす。
顔が少し赤いのはお酒を飲んでいるからだろう。
ビールを一息に飲み干して「かぁー! このために生きてんなぁ!」って言ってたし。
私にはまだお酒の美味しさというものが分からない。
もう飲める歳ではあるけど、処女宮でアルコールは厳禁だったし。
「いやな。俺、アルストを出ようかとか最近思っててよ」
「え!?」
なにそれ、私そんな話聞いてない。
バルトの視線と私の視線が交差し、バルトは困ったような顔で頬をかいた。
「ほら、アルストって物価高いだろう? 今までは貧乏で国を出る金すらなかったから我慢してきたけど、A級になって収入も余裕が出てくるようになったからよ。旅費貯めて世界を見て回りたくなった、てのがあってな」
「旅! いいなぁ、私も行ってみたい」
「楽しいよぉ? 僕も色々な国を回ってるけど、それぞれに特徴があったり、別世界の景色があったり、凄いよぉ」
「ま、そう考えたのはザックスから色々聞いたからなんだがな」
「そうなのかい? でも大変だよ? 物価が高くてもこの国はいい所だ。旅費なんかを考えるとトントンって所かな、とも思うしね」
「進めてるのか止めてるのか分からないわよ。どっちなの」
思わず反応してしまった。
ザックスと目が合ってしまい、慌てて目を背ける。
「どっちも、かなぁ。確かに旅はいい。新しい発見があるし、見聞も広がる。でも危険なこともたくさんあるし、騙すような奴もいる」
「……そうだけど」
「考え方は人それぞれだから、僕は思いつく事を言っているだけだよ」
「……そう」
ザックスの言葉を聞き、ちら、とバルトを見る。
目が合うと優しく微笑みを向けてきて、何を考えているのかが分からない。
本当に行くの?
と聞けばいい。
でも、その話をしてくれなかった事が少しショックで、その言葉が出てこない。
ダンジョンをクリアして、自信も少しついて、トラウマも少し改善出来たような気もする。
でも、いきなりそれは無いよ。
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