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後日談
幻へ
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全身がダークマター化したチョコが町を徘徊するのをヤミは見た。
ヤミはたまらなくなって涙が出た。
「ここも、すぐに見つかるな。私が護衛するから二人は地下シェルターに避難するんだ」
ミラグロスの護衛のもと、ヤミとキュリオは家から五〇〇メートルほどの距離にある地下シェルターに向かった。
わずかな距離とは言え町が混乱して、騒がしいのが聴覚で判断できた。
ミラグロスは押し込めるように、二人を地下シェルターに入らせると、そのまま自分は町へ、チョコたちのもとへ駆けていった。
「ここに馬はいないのか?武器は?」
広場では乱戦が繰り広げられている。
倒れたドラゴン兵からミラグロスはサーベルを借りた。
「貴様らはここから立ち去れ!さもなくば斬るぞ!」
憎悪の兵たちは、生まれながらの戦士であるミラグロスにはまったく歯が立たない。
数分もしないうちに一〇人の兵を降参させてしまう。
「改心させるきっかけを与える、と言えば烏滸がましいが、命だけは奪わないでおこう。さあ、無駄なあがきはやめてこれからは慎ましく生きろ」
詳しい事情はよく知らないものの、かつて自分が関わってしまったテロ組織がまだ活動していたのかと思うと気が重くなるとミラグロスだった。
「これは、はやくモデスタやヒカリたちとも話をつけて決着をつけたいところだな……」
ミラグロスは脳内にヒカリの幻を思い浮かべた。
「私は白馬の王子、ヒカリを迎えに行く。フフ、そんなおとぎ話みたいなのはやはり変かな」
「私だって、もとサイバーパトロール、ガマズミだっているのに。ミラグロスさんったら一人で無茶しちゃって。でも今はカワシマのそばにいて守ってあげるよ、あれ、カワシマ?」 ヤミが地下シェルターの食糧庫からレトルトカレーを見つけて戻ってくるとキュリオ博士の姿はなかった。
「カワシマ?ねえ」
ガマズミがシェルターの出入口をじっと見つめている。
「カワシマったら、勝手に外に出たのね……」
ヤミが外に出ると、ローバーに乗り込むキュリオ博士の姿が、運転席にはにはジャックの姿もあった。
キュリオ博士はヤミの姿を見つけると、窓越しに「隠れていなさい」とジェスチャーで合図した。
ローバーは急発進してヤミの目の前から消えた。
「二人ともバカじゃないの?あの二人が考えることぐらい、わかってるわよ。ノリオかチョコちゃんに仕返しするつもりなんだわ!男のくせにカッコつけちゃって、もう勝手にすればいいんだわ!」
ガマズミがヤミの顔を覗きこんだ。
ヤミはたまらなくなって涙が出た。
「ここも、すぐに見つかるな。私が護衛するから二人は地下シェルターに避難するんだ」
ミラグロスの護衛のもと、ヤミとキュリオは家から五〇〇メートルほどの距離にある地下シェルターに向かった。
わずかな距離とは言え町が混乱して、騒がしいのが聴覚で判断できた。
ミラグロスは押し込めるように、二人を地下シェルターに入らせると、そのまま自分は町へ、チョコたちのもとへ駆けていった。
「ここに馬はいないのか?武器は?」
広場では乱戦が繰り広げられている。
倒れたドラゴン兵からミラグロスはサーベルを借りた。
「貴様らはここから立ち去れ!さもなくば斬るぞ!」
憎悪の兵たちは、生まれながらの戦士であるミラグロスにはまったく歯が立たない。
数分もしないうちに一〇人の兵を降参させてしまう。
「改心させるきっかけを与える、と言えば烏滸がましいが、命だけは奪わないでおこう。さあ、無駄なあがきはやめてこれからは慎ましく生きろ」
詳しい事情はよく知らないものの、かつて自分が関わってしまったテロ組織がまだ活動していたのかと思うと気が重くなるとミラグロスだった。
「これは、はやくモデスタやヒカリたちとも話をつけて決着をつけたいところだな……」
ミラグロスは脳内にヒカリの幻を思い浮かべた。
「私は白馬の王子、ヒカリを迎えに行く。フフ、そんなおとぎ話みたいなのはやはり変かな」
「私だって、もとサイバーパトロール、ガマズミだっているのに。ミラグロスさんったら一人で無茶しちゃって。でも今はカワシマのそばにいて守ってあげるよ、あれ、カワシマ?」 ヤミが地下シェルターの食糧庫からレトルトカレーを見つけて戻ってくるとキュリオ博士の姿はなかった。
「カワシマ?ねえ」
ガマズミがシェルターの出入口をじっと見つめている。
「カワシマったら、勝手に外に出たのね……」
ヤミが外に出ると、ローバーに乗り込むキュリオ博士の姿が、運転席にはにはジャックの姿もあった。
キュリオ博士はヤミの姿を見つけると、窓越しに「隠れていなさい」とジェスチャーで合図した。
ローバーは急発進してヤミの目の前から消えた。
「二人ともバカじゃないの?あの二人が考えることぐらい、わかってるわよ。ノリオかチョコちゃんに仕返しするつもりなんだわ!男のくせにカッコつけちゃって、もう勝手にすればいいんだわ!」
ガマズミがヤミの顔を覗きこんだ。
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