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惑星動乱

月と黒い羽

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「真の計画の実現のため、光を奪い闇を操るのだ!」 
 とつぜん二人の眼前に現れたノリオは神経質そのものと言った叫び声でチョコに合図をした。
「チョコよ、聞いていたぞ。その女を母のようだとか言ったな。お前の母はそんなに優しかったのか」
 チョコは、ウッと表情を曇らせた。
「ちがう。私の母は私を自分の思い通りにしようとしただけ。遊びもお菓子も禁止され、ひたすら勉強させられた!よくも!」
 チョコは立ち上がり黒曜石のナイフを振り回した。ヒカリはしゃがんだり跳んだりしてナイフを避けようとしたが、その左腕を鋭利な刃物が襲う。
 出血しよろめくヒカリの首をチョコが掴む。もがいてその手を外して体勢を整えようとする。
「ま、待ってよ」
 ノリオがチョコの背中に向かって叫ぶ。
「お前の"エサ"はここに置いていくぞ。私は自慢のクローリー号で月に帰りさらに準備しよう。首尾よくやれよ、チョコ」 
 ノリオは、真っ黒な塊を雑な手つきで放ると、その気弱そうな見た目に似合わない趣味が悪い乗り物に乗り込んで逃走した。
「ガ、ガー!」
「ま、まさかダークマター?」
 チョコは気が触れたように黒い塊を貪る。全身が黒ずんだ感じになって目は理性の色を失っていった。
「ダークマターエネルギーとルサンチマンの共振??」 
 戦くヒカリの耳に声が聞こえてきた。
「ヒカリー!大丈夫か?」
「ジャック!」 
 ヒカリのまさかのピンチに駆けつけたのはジャックだった。ジャックはバイクに乗ってきた。
「ジャック、あんたバカね、本命がほかにいるくせに私なんか助けにきたの?白馬の王子かよ」
「君がなかなか帰らないからみんな探してたんだよ。あんがい夢見がちな聡明な美女よ。俺は白馬の王子に見えるかい?」
「ギャ、ギャギャー!」
 ダークマター化したチョコはダークビームを撃ってきた。
「や、やべぇ!」 
 ジャックはエネルギー盾を張りヒカリを庇った。ビームは直撃しなかったが二人とも衝撃で吹き飛ばされた。
 空のドラム缶がジャックの頭に当たる。
 ジャックは意識が薄らいできた。霞む視界には悪魔が映っていた。
「やめろ、ヒカリにだけは触るな……」
「チョコちゃん……。こんなの悲しすぎるわ……」
 チョコはジャックの頭を殴って完全に気絶させた。
 そしてヒカリを庇うその身体を引き剥がすとヒカリの胸ぐらをつかみ頭部を引き寄せる。
 無慈悲なナイフはヒカリの頸動脈を鮮やかにも切り裂き、輝く命は深紅の飛沫ともに散った。
 
 チョコは、気を失ったジャックにはほとんど興味を示さず、その身体を軽く蹴飛ばしてあとは放置した。
 返り血を存分に浴びたチョコの身体はダークマターエネルギーによる急激な変異がはじまった。その背中には真っ黒な羽根が生えた。
 黒い悪魔か?堕天使か?チョコは月をめざし天高く舞い上がっていった。


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