虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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惑星動乱

権力のタワー 一

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 ヤミとヒカリは自治機構ビルに乗り込んだ。
 警備員やサイバーパトロール、憲兵ら三十名ほどが二階でチョコたちを足止めしているらしい。
 三階より上に通じる階段やエスカレーターはロックアウト状態にしていて、易々とは突破されないと言う。
「奴ら三人と二階で揉み合いになってます。中心人物のチョコが宙に浮く靴を履いていて手こずっているみたいです」
 ヤミたちをサポートする憲兵の一人であるヌマヅがそう報告した。
「宙に浮く靴?面白そう」
「ヤミちゃん、そうじゃなくて……」
 憲兵のヌマヅは表情ひとつ変えずに補足説明をした。
「その宙に浮く靴とやらは、地上から数センチぐらい身体を浮かせることができて、すいすい移動できるので攻撃も当たらないし捕まえるのも容易でないとのこと」
「すいすい?」
「そう、すいすいであります。またグフタムとネオンと言う名の二人が実行部隊と思われ、こちらもやたらめったら強いとのこと」
「やたらめったら?」
 ヒカリは、ちょっと待てよと二人のやり取りを中断させた。
「ねえ、いま上でバトルしてるのは誰々なの?」
「え?お姉ちゃん、どういうこと?」
「だから、上にいるのは誰?チョコちゃんと?あとは?」
 深刻な様子のヒカリの質問にヌマヅが即答する。
「上にいるのは、チョコ、グフタム、ネオン。この三人でありますが……」
「そう三人!もう一人は?」
 ヤミはヒカリの質問の意図を掴むや否やある名前を叫んだ。
「モデスタ!モデちゃんはいったいどこに?」
 モデスタは戦闘ではなくこのビルのセキュリティシステムをどこかでハッキングしているのではないか? 
 誰からともなく、そんな仮説が立ち上がる。
 ヒカリが一階の事務室に駆け込み、手近なパソコンのキーボードを叩く。
「ローカルネットワークは繋がってるわ。こっからモデちゃんの居場所を逆探知するわ」
 ヒカリが事務室に走ると同時にヤミもまた三階へ走っていた。
「廊下に無駄な間接照明がたくさんだわ」
 照明に照らされたヤミの影にはガマズミが隠れて一緒に移動していた。
 二階ではバリケードを張った階段の手前にあるホールで攻防が繰り広げられていた。
「三人相手にこの人数で翻弄されるなんて……」 
 すでに、こちら側は半数が倒されていて、さらにそのうちの二名は絶命していた。
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