虹のアジール ～ある姉妹の惑星移住物語～

惑星動乱

苦渋の決断

　なんと、サイバー憲兵はミラグロスの身柄引き渡しを要求してきた。
「ミラグロスさんの身柄を引き渡せですって？なんたってこんなときに？」
　ヒカリは憤慨してみせた。
　いままさに緊急事態。チョコたちを止めなければならないのに足止めとは。
「おや、お連れのあなた方はご存知ないのですか？ミラグロスさんもあのテロリスト指定されている"善く生きるための会"のメンバーだということを」
　ヒカリとヤミは動揺を表には出さなかった。少なくともミラグロスが悪事に関わっていることはないだろうと確信していた。
　サイバー憲兵はミラグロスの腕をつかもうとした。
「触るな」
　ミラグロスは憲兵の腕を振り払った。しかし理由はなんであれ憲兵への暴力ととらえられかねない身体接触は、法的にはこちらが不利になる可能性がある。それを思い出したミラグロスは、深呼吸して自らの心を冷まそうとした。
「抵抗なさるのですか？お二人さんもミラグロス氏の身柄引き渡しに応じなければ、テロリストの味方と判断されても仕方ありませんね」
　ミラグロスは渋い表情を浮かべた。
　少しの間を置き交渉を試みた。
「よ、よかろう。私の身柄と引き換えにこの二人に憲兵は協力することを約束してほしい。いま、テロリストの親玉がカクタ・タナエの命を狙ってるだろう」
「そんな！ミラグロスさんがいてくれないと、不安だわ」
「ヒカリ！ヤミもだ。行ってくれ。今の私には何もすることができないようだ」
　ミラグロスは両手を上げ、抵抗の意思がないことを示した。
　こうしてミラグロスの身柄は拘束された。テロリスト指定されている団体と関わりがあったことから特別謹慎として、どこかへ拘禁されてしまった。
　後ろ髪を引かれる思いでヤミとヒカリはチョコたちを追う。
　カクタ・タナエはビルの五階の執務室にいるようだ。　
　二人のあとをガマズミもついてきていた。ガマズミは額の第三の目サード・アイでなにかただならぬ力の存在を察知していたのだ。