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緊張と緩和

巨人、ヘビ、チョコ

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 ヤミは電熱レーザー銃で、ヒカリは連射式ビットエネルギー銃で応戦したが、二メートルの黒い巨人にしてみたら蚊に刺されたようなもので、その歩みは止まらなかった。
 ヒカリは新開発兵器の超小型ドローンを三十機ほど専用のカプセルから解き放った。 
「オーケー!ドローンちゃんたちよ。電磁網をやつの足元に張って足止めよ」
 ドローンたちは連携して電磁波の網を張った。巨人の歩みが少し止まる。 
「そんな小細工では、どうしようもありませんよ!」 
 モデスタが挑発してきた。
 ヤミは心を空にしてそれを聞き流した。そしてコンピュータ付きゴーグルを装着した。
 ゴーグルの内側にはコンピュータが分析した様々なデータが映し出される仕掛けだ。
「弱点サーチ開始!」
 センサーがバグスターのデータを読みとりコンピュータが分析する。これもバグスターに有効な攻撃をするための新開発だ。
「そうはさせるか!」 
 なんと!ヤミの行動を阻止すべく、同僚であるはずのモデスタが石を投げてきたのだ。
「ドローンのドロちゃんたち!電磁バリアーよ!」 
 ヒカリがそう命令するとドローンのドロちゃんたちが連携してバリアーで石を防いでくれた。石は砕けて散った。
「くそ」
 モデスタの歪んだ表情を見てヒカリは慄然とした。
「今の彼女なら、あのネットに書き散らかされた陰謀論を本気で信じていても合点が行くわね……」
 続けざまにヤミが呟く。
「ヘビ……。そう人間は猿だったころからヘビが苦手。ヘビへの恐怖は遺伝子にも刻まれている」
「ヘビ?」
「そう、お姉ちゃん!あの巨人の弱点はヘビよ!」
「ヘビたってどこで調達すればいいの?いや待てよ」
 ヒカリは指をパチンと鳴らした。
「ヘビなんかそうそういるものか!ここは地球じゃないんだぞ」
 モデスタの嘲笑をよそにヒカリは叫んだ。
「ドロちゃん!一列に並んで蛇行運転!目標はあのバグスターよ」 
 三十機の小型ドローンが並んで蛇行する姿は文字通りにヘビに見えた。
「ウワー!コワイ!」
 なんと!人の形をしたバグスターは人語に聞こえる咆哮を発しながらその身を崩壊させていくではないか。ヘビにたいする巨大な恐怖がバグスターのサイバー体を構成する電子的な結合を破壊したのだ。
 しかしヘビが苦手とは。人の形のバグスターには人間の遺伝子情報でも組み込まれていたのだろうか。
「さ、モデちゃん。詳しく話を聞かせてくれない?」
 ヤミとヒカリが声を合わせてそう問いただそうとしたときだった。
 二人が乗ってきたのとは型が違う車が垣根を吹き飛ばしながら走ってきてモデスタのいる場所すれすれで停まった。
 後部座席のウィンドウが下りるとチョコの険しい表情が現れた。
「あなたは?チョコちゃん?」 
 そうチョコもモデスタと同じく二人の同僚だ。ヤミはゴーグルを上げて目を丸くした。 
「モデスタ、計画変更だ。乗れ!」
「はっ、チョコさま!」
 モデスタはかつてのモデスタとは思えない速さで車に乗り込んだ。
 チョコもなにかを焦っている雰囲気だ。
 呆気に取られたヤミとヒカリを余所に車は急発進した。
 そんな二人に連絡が飛び込む。
「ミラグロスだ!二人とも無事か?モデスタはいるか?」
 
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