虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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赤道直下のドタバタ

ムームーにつつまれて

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「せっかくだからお二人さん、ムームーいかがですか」  
 モデスタはムームーなるなにかを勧めてはくるが肝心のムームーを二人は知らない。
「ムームー?」
「ムームー?」
 モデスタは店員にムームーを用意させている。
「せっかくだから私が選んでいいかい?」
 ミラグロスは二人のためにムームーを選んだ。 
 ヒカリにはドルフィンの柄がプリントされたムームー、ヤミには花柄のムームー。
「ムームーとは」 
「ムームーとは南国のドレスのことだったんですね」
 ムームーを着た二人はガラス越しの夏の陽射しにいっそう華やかに見えた
「おお、二人ともきれいじゃないか」
 一通り歩いた四人はアイスクリーム屋に寄った。
 こんなにも地球の街に似た景色が見れるなんて、それはヤミとヒカリには新鮮だった。

「ふー、暑くて貧血になりそー」
 アイスクリーム屋に入るなりヤミがそう言うとヒカリはヤミのおでこにおしぼりをあてがって心配そうに顔を覗きこんだ。
「ありがとう。そうだ。お姉ちゃんこれあげるよ。さっき買ったの」
 ヤミはポケットから直径四センチほどの丸い石を取り出した。それは青く透き通った猫目石のように光る石だった。
「いつの間にこんなの買ったの?光り物が好きだなんてヤミちゃんはまるでカラスみたいね。ありがとう」 
 観察眼の鋭いモデスタは見逃さなかった。
 ヤミのダークマター化した黒い爪を。
「その爪は?マニキュアじゃなさそうね」
「いろいろとありまして…」
 モデスタはそれ以上は詮索しなかった。
 チョコ、ミント、蛾の幼虫、トマトなどさまざまな味のアイスクリームを一口サイズでたくさん注文した。
 ミラグロスはあるゲームを提案した。
 それは、目隠しした状態でアイスクリームを食べその味を当てると言うものだった。
 しかしヤミはアイスクリームの一口めを食べたところで、慣れない冷たさに頭がキンキンして脱落。 
 アイスクリームを食べなれたモデスタもゲームから辞退。
 ミラグロスが目隠しをしたヒカリにスプーンでアイスクリームを食べさせるだけの展開に。 
「ヒカリ、口を開けて」 
 目隠しをしたヒカリはミラグロスに促されるままに口を開いた。そして差し出されたアイスクリームを恐る恐る食べた。
「この味ははじめてかな?」
「甘くて…酸味もある…。でも口のなかですぐ溶けちゃう」
「もっと、ほしいかい?」
「うん、もっと」

 楽しそうなミラグロスとヒカリの様子を観てヤミはなぜだか居心地が悪い感じがしてきた。
 それを察知したモデスタはヤミを隣の公共休憩室に連れ出した。
 
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