虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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闇と光の姉妹

ジャック・オー・ランタンと言う男

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 男の名前は"ジャック・オー・ランタン"と言った。
 彼のコンピュータ端末はバグスターの代わりに爆破されてしまったが、これは中古品であり、大したデータも入ってないと言うことだった。
「レディー、君に命を救われたよ。なにかおごらせてくれないか」
「別にいいですけど」 
 ジャック・オー・ランタンは冗談めかした。
「おれはこれでもレジスタンスのつもりなんだ。たった一人の」
 いったい彼は何に抵抗しているのか。そこまでは語らなかった。
 ふたつのアイスティーのグラスはつめたい汗をかいている。
 ジャックの話を右耳で聞きながら、ヒカリはアイスティーの味について分析していた。ヒカリは科学オタクなので未知のものを分析してしまうのだ。デュフフ。
「これは苦味と甘味と酸味のハーモニー?」
 ヒカリは思わずジャックの話に関係のないことをつぶやいてしまう。
 その誤配された独り言の便箋をジャックは無邪気にも開封した。
「ハーモニー?ハーモニーねえ。最近の地球は人類の間で不協和音が鳴り響いてあるよ。相互不信と言う名の」
「そ、そうねえ。おほほほ」
「まったく後世の歴史家から見たらなんて滑稽な時代かと思うぜ。せっかくの宇宙への渡航も禁止。民間人の宇宙旅行は危険だから禁止だと?ばか言うなよ。地球の利権屋が宇宙資源を独占したいだけだろう」
 そしてジャックは去った。その華奢な後ろ姿を、所作をヒカリはなぜか目を離せなかった。視界から消えるまで。
 
 
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