虹のアジール ~ある姉妹の惑星移住物語~

千田 陽斗(せんだ はると)

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闇と光の姉妹

ねずみ花火を追いかけて②

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 公園に逃げてきた二十人ほどの人々は怖れおののいた。体長が一メートルほどの"燃えるねずみ"がこちらへ向かってきたのだ。
 ピピー。
 ヒカリの右腕のブレスレット型の端末がねずみの生体反応をとらえた。自動起動したサーモレーダー機能がねずみの体温を計測した。
「華氏四五一度?紙が燃える温度じゃない!」
「あいつもバグスターなの?」
「わからないけど、ここは防ぐしかない」 ヤミとヒカリは、ねずみの前に立ちはだかった。
「ヤミちゃん、ダブルバリアよ」
「オーケー」
 ねずみは時速にして四〇キロほどの速さで二人に向かって突進してきた。
 二人がブレスレットを使って発生させた二つの光子バリアは重なり倍の強度になった。
 そこにねずみは頭から飛び込む。その衝撃はバリア越しに伝わってくる。熱も。
 ねずみは反動でかなり遠くまで弾きとんだ。その距離は二十メートルほどだろうか、建造物の陰にその姿は消えた。

 この中継ポイントに駐在するセキュリティ要員とねずみをさがしたがその姿は見つからなかった。
「あれ、なんか焦げてる?」 
 とある建物を調査中、ヒカリは通信ケーブルの一部に異変を発見した。 
 このときヤミは一旦ローバーに戻り留守番中の小さいほうのバグスターの面倒を見ていた。
 ヒカリの頭に直感的なひらめきが浮かんだ。
「このケーブルを伝って、あのねずみはどこかに消えたのかも。やはりあの子もバグスター?」 
 ヒカリは本部のエマに連絡をとった。ネットワーク回線のどこかに異常な渋滞トラフィックがないか、調べられるだけ調べてもらうことにした。
 ネットワーク回線のどこかに不自然になトラフィックが見つかれば、そこにサイバー体であるバグスターがふたたび現れる可能性が高い。
 
 ヤミが小さいほうのバグスターに"ガマズミ"と名付けて、そのままガマズミと一緒に昼寝をしていたころ、ヒカリはエマの情報に従い港に向かった。
 港の方面に異変あり、個人が使うコンピュータ端末に異常な情報量が流れ込んでいるのを、エマがネットワーク回線監視システムで発見した。
 港付近では、海が見えるオープンテラスで一人の男がコンピュータ端末を操作していた。
 そのコンピュータ端末は急に発熱しだした。
「熱い」 
 その男は熱したフライパンのようになった端末から慌てて身をはなした。
「大丈夫ですか?」
 やはりねずみのバグスターがデータ体となってここまでケーブルを伝い移動してきたらしい。そして端末から実体化して姿をまた現すつもりだ。
 ヒカリはレーザー銃を構えながら駆けつけた。
「逃げて」 
 左腕で男の身体を強引に端末から引き離すようにしながら、ヒカリはディスプレイより姿を現そうとするねずみバグスターのを見た。
 バリアを張る余裕もなく、半分ほど実体化したバグスターにレーザー銃打ち込む。
 複数の炸裂音が重なり、コンピュータ端末は跡形もなく消し飛ぶ。実体化しかけたバグスターはデータ体に戻りケーブルを点滅させながら敗走した。
 ヒカリは男と共に、軽く爆風に飛ばされ数メートル離れた防風壁のあたりまで飛ばされた。
「痛いな、なにが起こったんだ?」
「怪我はありませんか?」
 二人はほぼ同時に立ち上がる。
「そちらこそお怪我はありませんか?」
 男がよろけて壁に手をつくと、ちょうどヒカリに覆い被さるような格好になってしまった。
「か、壁ドン?」 
「おっと失礼」 
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