3 / 73
闇と光の姉妹
ヤミVSバグスター
しおりを挟む
あぶない!
ヤミに距離をつめられたバグスターが牙で威嚇した。
電子麻酔銃という武器を手離してしまったヤミは右腕のシールドを起動させた。そしてダンスのステップを応用して攻撃を素早く交わした。
こんな風にバグスターの威嚇攻撃を数度に渡り回避しながら、ヤミは隙を探った。
電子麻酔銃を取り返すという選択肢はなさそうだ。
ヒカリはいざというときのためにガンホルスターに手を当てながら、その様子を見守る。
「隙あり」
ヤミはバグスターの右側にするりと回り込んだ。そして素早く左手でバグスターの胴体にタッチした。
ヒカリは「うまくいっておくれ」と内心で願掛けしていた。
タッチされた瞬間、バグスターはぎざぎざの牙をむきだしにした大顎を半開きにしながら振り向こうとしたが、燃料切れの戦車みたくすぐ動きが鈍くなった。
びかびかっとフラッシュしながらエネルギーはバグスターからヤミのダークマター手に吸収された。
エネルギーがヤミのダークマター手に吸収されていくときの感覚はほぼ無感覚に近かった。あの災害のときと同様、ヤミは自分の左腕で起こっていることを他人事のようにながめた。
ヒカリはと言えば目の前の超常現象に目をぱちくりさせていた。
エネルギーを吸収されたバグスターの体はみるみるうちに小さくなる。
目からは凶暴さが失われ、きゅうと鳴き出した。第三の目は開いたままたが、なぜか攻撃的な様子はない。
「ヤミちゃんのダークマター手にバグスターのエネルギーを吸収するチカラがあったなんて……。しかしダークマターについて人類は知らないことだらけ……。ヤミちゃんのためにもダークマター研究がしたいところだわ」
科学者でもあるヒカリは表情を強張らせる。ダークマター手がヤミに与える影響は誰にもわからない。妹のヤミがダークマター手になってしまったことをヒカリは誰よりも気にかけているのである。
そんな気持ちを知ってか知らずかヤミはすっかり大人しくなったバグスターを指差してはしゃぎだした。
「ちっちゃいバグスター!かわいい!」
ヤミはさっきまで暴れていたその怪獣のミニチュアを抱き上げた。"ちっちゃいバグスター"は抵抗する様子もなく、きゅうと鳴いている。
「その子には、いちおう用意してきた捕獲用のカゴに入っていてもらいましょう。人目についたら混乱を招くかもしれないから」
「そうだお姉ちゃん、本部に帰るまえにピッツァでも食べていこうよ。だいぶ時間余ってるよ」
そうだね、とヒカリは答えた。
そして二人はバンに乗り込んだ。
「こんな地球から離れた惑星にバグスターが出るなんてね。ネットワークもつながってないのに…」
バグスターはかつて人工知的サイバー生命体の実験中に産み出された副産物で、大抵は害獣として電子的に処理されていた。
地球から脱出して惑星ナキにたどり着いた人々は、バグスターが発生しないコンピュータネットワークを開発したはずだった。
ヤミに距離をつめられたバグスターが牙で威嚇した。
電子麻酔銃という武器を手離してしまったヤミは右腕のシールドを起動させた。そしてダンスのステップを応用して攻撃を素早く交わした。
こんな風にバグスターの威嚇攻撃を数度に渡り回避しながら、ヤミは隙を探った。
電子麻酔銃を取り返すという選択肢はなさそうだ。
ヒカリはいざというときのためにガンホルスターに手を当てながら、その様子を見守る。
「隙あり」
ヤミはバグスターの右側にするりと回り込んだ。そして素早く左手でバグスターの胴体にタッチした。
ヒカリは「うまくいっておくれ」と内心で願掛けしていた。
タッチされた瞬間、バグスターはぎざぎざの牙をむきだしにした大顎を半開きにしながら振り向こうとしたが、燃料切れの戦車みたくすぐ動きが鈍くなった。
びかびかっとフラッシュしながらエネルギーはバグスターからヤミのダークマター手に吸収された。
エネルギーがヤミのダークマター手に吸収されていくときの感覚はほぼ無感覚に近かった。あの災害のときと同様、ヤミは自分の左腕で起こっていることを他人事のようにながめた。
ヒカリはと言えば目の前の超常現象に目をぱちくりさせていた。
エネルギーを吸収されたバグスターの体はみるみるうちに小さくなる。
目からは凶暴さが失われ、きゅうと鳴き出した。第三の目は開いたままたが、なぜか攻撃的な様子はない。
「ヤミちゃんのダークマター手にバグスターのエネルギーを吸収するチカラがあったなんて……。しかしダークマターについて人類は知らないことだらけ……。ヤミちゃんのためにもダークマター研究がしたいところだわ」
科学者でもあるヒカリは表情を強張らせる。ダークマター手がヤミに与える影響は誰にもわからない。妹のヤミがダークマター手になってしまったことをヒカリは誰よりも気にかけているのである。
そんな気持ちを知ってか知らずかヤミはすっかり大人しくなったバグスターを指差してはしゃぎだした。
「ちっちゃいバグスター!かわいい!」
ヤミはさっきまで暴れていたその怪獣のミニチュアを抱き上げた。"ちっちゃいバグスター"は抵抗する様子もなく、きゅうと鳴いている。
「その子には、いちおう用意してきた捕獲用のカゴに入っていてもらいましょう。人目についたら混乱を招くかもしれないから」
「そうだお姉ちゃん、本部に帰るまえにピッツァでも食べていこうよ。だいぶ時間余ってるよ」
そうだね、とヒカリは答えた。
そして二人はバンに乗り込んだ。
「こんな地球から離れた惑星にバグスターが出るなんてね。ネットワークもつながってないのに…」
バグスターはかつて人工知的サイバー生命体の実験中に産み出された副産物で、大抵は害獣として電子的に処理されていた。
地球から脱出して惑星ナキにたどり着いた人々は、バグスターが発生しないコンピュータネットワークを開発したはずだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
アパートはセルロース
ペペロン鯨
SF
突如アパートを追い出され、奇妙な家に迷い込む「フィル」。そこで出会った不思議なロボット「C」は、彼女を『博士』と呼ぶが……?
貧乏くじ少女と、様子のおかしいロボットの、交流と恋愛模様?を描く
SFスローラブ
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞
橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
ゴミ惑星のクズ
1111
SF
捨てられた人類が住むゴミ惑星「クローム」で、男たちは生存のため、そして名声のために「アーマーリング」と呼ばれる競技に命を懸けていた。
主人公 クズ はかつてその競技で頂点を目指したが、大敗を喫して地位を失い、今はゴミ漁りで細々と生計を立てる日々を送っていた。
ある日、廃棄されたゴミ山を漁っていたクズは、一人の少女を発見する。彼女は イヴ と名乗り、ネオヒューマンとして設計された存在だった。機械と完全に同化し、自らの身体を強化する能力を持つ彼女は、廃棄された理由も知らぬままこの惑星に捨てられたのだという。
自分の目的を果たすため、イヴはクズに協力を求める。かつての栄光を失ったクズは、彼女の頼みに最初は興味を示さなかった。しかし、イヴが持つ驚異的な能力と、彼女の決意に触れるうちに、彼は再びアーマーリングの舞台に立つことを決意する。
恋するジャガーノート
まふゆとら
SF
【全話挿絵つき!巨大怪獣バトル×怪獣擬人化ラブコメ!】
遊園地のヒーローショーでスーツアクターをしている主人公・ハヤトが拾ったのは、小さな怪獣・クロだった。
クロは自分を助けてくれたハヤトと心を通わせるが、ふとしたきっかけで力を暴走させ、巨大怪獣・ヴァニラスへと変貌してしまう。
対怪獣防衛組織JAGD(ヤクト)から攻撃を受けるヴァニラス=クロを救うため、奔走するハヤト。
道中で事故に遭って死にかけた彼を、母の形見のペンダントから現れた自称・妖精のシルフィが救う。
『ハヤト、力が欲しい? クロを救える、力が』
シルフィの言葉に頷いたハヤトは、彼女の協力を得てクロを救う事に成功するが、
光となって解けた怪獣の体は、なぜか美少女の姿に変わってしまい……?
ヒーローに憧れる記憶のない怪獣・クロ、超古代から蘇った不良怪獣・カノン、地球へ逃れてきた伝説の不死蝶・ティータ──
三人(体)の怪獣娘とハヤトによる、ドタバタな日常と手に汗握る戦いの日々が幕を開ける!
「pixivFANBOX」(https://mafuyutora.fanbox.cc/)と「Fantia」(fantia.jp/mafuyu_tora)では、会員登録不要で電子書籍のように読めるスタイル(縦書き)で公開しています!有料コースでは怪獣紹介ミニコーナーも!ぜひご覧ください!
※登場する怪獣・キャラクターは全てオリジナルです。
※全編挿絵付き。画像・文章の無断転載は禁止です。
宇宙のどこかでカラスがカア ~ゆるゆる運送屋の日常~
春池 カイト
SF
一部SF、一部ファンタジー、一部おとぎ話
ともかく太陽系が舞台の、宇宙ドワーフと宇宙ヤタガラスの相棒の、
個人運送業の日常をゆるーく描きます。
基本は一話ごとで区切りがつく短編の集まりをイメージしているので、
途中からでも呼んでください。(ただし時系列は順番に流れています)
カクヨムからの転載です。
向こうでは1話を短編コンテスト応募用に分けているので、タイトルは『月の向こうでカラスがカア』と
『ゆきてかえりしカラスがカア』となっています。参考までに。
シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
不動の焔
桜坂詠恋
ホラー
山中で発見された、内臓を食い破られた三体の遺体。 それが全ての始まりだった。
「警視庁刑事局捜査課特殊事件対策室」主任、高瀬が捜査に乗り出す中、東京の街にも伝説の鬼が現れ、その爪が、高瀬を執拗に追っていた女新聞記者・水野遠子へも向けられる。
しかし、それらは世界の破滅への序章に過ぎなかった。
今ある世界を打ち壊し、正義の名の下、新世界を作り上げようとする謎の男。
過去に過ちを犯し、死をもってそれを償う事も叶わず、赦しを請いながら生き続ける、闇の魂を持つ刑事・高瀬。
高瀬に命を救われ、彼を救いたいと願う光の魂を持つ高校生、大神千里。
千里は、男の企みを阻止する事が出来るのか。高瀬を、現世を救うことが出来るのか。
本当の敵は誰の心にもあり、そして、誰にも見えない
──手を伸ばせ。今度はオレが、その手を掴むから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる