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第一章【予知者】覚醒
第2話 借金 5000万ゴル
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新しい特級職の誕生に、村だけでなく国中が賑わった。
特級職の影響というのは、国間の勢力図を変えてしまうほどのことなのだ。
ジョブ学者の研究も過去にないほど熱を帯びた。
時を操るのでは?
神の声を聞くことができるのでは?
世界の真理に触れられる能力なのでは?
情報というのは時として武力よりも重要となる。
【予知者】という名前からその期待が大いに高まっていた。
ニクラスはというと、そんなことはつゆ知らず、珍しいアイテムがたくさんある王宮での生活を満喫していた。
ニクラスはコレクターというよりは、実際に使ってみたい方のマニアで、武器であれば試し切りをさせてもらったりと楽しんだ。
アイテムに関する資料も読み漁った。
能力にいい影響が出るだろうということで、本人が望むままに秘匿とされる本までも読む許可を与えた。
ミオスドニツ王国には王子と姫が1人ずついるのだが、姫とは同い年ということもありすぐに仲良くなった。
王子は距離を置いているようで交流がなかったが、そもそも積極的に交流する立場でもないので、そこまで気にならなかった。
そして、3人とも贅沢にはそこまで興味がなかったが、王宮での生活は想像を超える豪華さであった。
一方で、【予知者】の能力はなかなか発動しなかった。
レベルが足りていないかもしれない、ということで護衛をつけてレベリングも行ったが、なぜかレベルが上がらない。
1ヶ月、2ヶ月、半年経っても、【予知者】の能力は発現しなかった。
そして、1年後…。
「ニクラス、そなたたちを王宮から追放する。」
とうとうニクラス達は追放を言い渡された。
だいぶ前から王宮の人間からはホラ吹きの意味を込めて「よた野郎」と陰口を叩かれていた。
自分たちの意思とは関係なく連れてこられたにも関わらず後ろ指を刺される生活に、ニクラスたちは苦痛を感じていた。
姫であるミーナが変わらず仲良くしていたため、表立って悪態をつく人間がいなかったのがせめてもの救いであった。
「追放にあたって、今まで与えた報奨は没収とする。」
元の生活に戻りたかったロニーたちに異論はなかった。
しかし、続く処罰に言葉を失った。
「国家を欺いた罪は果てしなく大きい。
…が、国王陛下の慈悲により、今回の件にかかった費用を賠償することで罪を償えるものとする。
金額は、
5000万ゴルだ。」
あまりの金額に、呆然とするロニーとイーリス。
ニクラスは自分が原因で大事となってしまい、最初からずっと気が動転している。
「1年間の生活でご、5000万ゴルとは…。
一農民の私たちにはとても払えません…。」
意を決して言葉を発したロニー。
しかし、大臣は冷めた目で睨みつけ、言い放った。
「本来なら処刑されてもおかしくないところを寛大に処置してくださってるのだ。
それに問題があるとでも?
お主達の食事、住んでいた部屋の使用料、1人ずつつけていた専属のメイド、衣服、迎えに行った時の旅賃、お前の村への報奨、しめて5000万だ。」
結局どうすることもできず、王宮を追放された。
城中の人間から犯罪者を見るような目で見られながら。
ミーナ姫だけは涙を浮かべてニクラスを見ていたが、ニクラスがそれに気づく余裕はなかった。
城をでた3人は、そのままミオスドニツ王国の首都に住むことにした。
元いた村に帰りたかったが、自分たちの農地はすでになくなっている。
あったとしても自分たちが食べる分を作って生きていく程度の農地だったので、借金を返すことができない。
そもそも、村まで帰るお金もない。
首都で働き、返済することにしたのだ。
だが、国の期待を裏切った「よた野郎」のレッテルを貼られた3人に働く場所はなかった。
働くには身元の確認が必要で、そうするとどうしても王宮を追放された事実が露見してしまう。
不動産屋でも身元確認が必要で住む場所も借りれないため、街の外れにある貧民街の、さらに外れにシートを張って家にした。
いつの間にか噂が広まったため貧民街ですら後ろ指を刺されてしまい、なんとか雨風をしのぐだけの住処しか確保できなかったのだ。
ニクラスに非はないとはいえ、彼のジョブが原因で窮地に陥ってしまったにもかかわらず、ロニーとイーリスは相変わらず優しく接してくれた。
愚痴一つこぼす事なく、今後どうするかを一生懸命考えた。
愚痴をこぼせばニクラスを傷つけることになるから。
結局雇ってくれるところはなく、ロニーとイーリスは冒険者になることにした。
冒険者は誰でもなることができ、身元確認もない。
しかし、ジョブを持っていない【ノービス】の2人には厳しい仕事だ。
冒険者はギルドで依頼を受けて、成功したらその報酬を受け取ることができる。
護衛、モンスター退治、薬草などの採集、雑用など色々な依頼があるが、モンスターや盗賊と戦うことのできない【ノービス】が受けられるのは採集依頼か雑用。
雑用は追放されたことがわかると依頼者とトラブルになるかもしれないので、採集依頼でお金を稼ぐ日々。
採集とはいえ、モンスターに遭遇する可能性もあり、危険を伴う。
街から程近い場所しかいけないので、1日の報酬は2人で1000~1500ゴルほど。
1ヶ月に返済できるのはどんなに切り詰めても1万ゴルだった。
返済の条件は年利5%に返済期間30年。
1ヶ月の返済額は27万ゴル弱ある。
減らすどころか、返済額がどんどん増えてしまっていた。
ニクラスも一緒に採集をすると何度も訴えたのだが、【予知者】はノービスよりも能力が低い。
ニクラスのステータスはジョブが覚醒した日から少しも増えていなかった。
我が子を危険に晒したくない親心で、連れて行かなかったのだ。
そして、追放されて約4ヶ月後。
この日、ニクラスはある覚悟をしていた。
特級職の影響というのは、国間の勢力図を変えてしまうほどのことなのだ。
ジョブ学者の研究も過去にないほど熱を帯びた。
時を操るのでは?
神の声を聞くことができるのでは?
世界の真理に触れられる能力なのでは?
情報というのは時として武力よりも重要となる。
【予知者】という名前からその期待が大いに高まっていた。
ニクラスはというと、そんなことはつゆ知らず、珍しいアイテムがたくさんある王宮での生活を満喫していた。
ニクラスはコレクターというよりは、実際に使ってみたい方のマニアで、武器であれば試し切りをさせてもらったりと楽しんだ。
アイテムに関する資料も読み漁った。
能力にいい影響が出るだろうということで、本人が望むままに秘匿とされる本までも読む許可を与えた。
ミオスドニツ王国には王子と姫が1人ずついるのだが、姫とは同い年ということもありすぐに仲良くなった。
王子は距離を置いているようで交流がなかったが、そもそも積極的に交流する立場でもないので、そこまで気にならなかった。
そして、3人とも贅沢にはそこまで興味がなかったが、王宮での生活は想像を超える豪華さであった。
一方で、【予知者】の能力はなかなか発動しなかった。
レベルが足りていないかもしれない、ということで護衛をつけてレベリングも行ったが、なぜかレベルが上がらない。
1ヶ月、2ヶ月、半年経っても、【予知者】の能力は発現しなかった。
そして、1年後…。
「ニクラス、そなたたちを王宮から追放する。」
とうとうニクラス達は追放を言い渡された。
だいぶ前から王宮の人間からはホラ吹きの意味を込めて「よた野郎」と陰口を叩かれていた。
自分たちの意思とは関係なく連れてこられたにも関わらず後ろ指を刺される生活に、ニクラスたちは苦痛を感じていた。
姫であるミーナが変わらず仲良くしていたため、表立って悪態をつく人間がいなかったのがせめてもの救いであった。
「追放にあたって、今まで与えた報奨は没収とする。」
元の生活に戻りたかったロニーたちに異論はなかった。
しかし、続く処罰に言葉を失った。
「国家を欺いた罪は果てしなく大きい。
…が、国王陛下の慈悲により、今回の件にかかった費用を賠償することで罪を償えるものとする。
金額は、
5000万ゴルだ。」
あまりの金額に、呆然とするロニーとイーリス。
ニクラスは自分が原因で大事となってしまい、最初からずっと気が動転している。
「1年間の生活でご、5000万ゴルとは…。
一農民の私たちにはとても払えません…。」
意を決して言葉を発したロニー。
しかし、大臣は冷めた目で睨みつけ、言い放った。
「本来なら処刑されてもおかしくないところを寛大に処置してくださってるのだ。
それに問題があるとでも?
お主達の食事、住んでいた部屋の使用料、1人ずつつけていた専属のメイド、衣服、迎えに行った時の旅賃、お前の村への報奨、しめて5000万だ。」
結局どうすることもできず、王宮を追放された。
城中の人間から犯罪者を見るような目で見られながら。
ミーナ姫だけは涙を浮かべてニクラスを見ていたが、ニクラスがそれに気づく余裕はなかった。
城をでた3人は、そのままミオスドニツ王国の首都に住むことにした。
元いた村に帰りたかったが、自分たちの農地はすでになくなっている。
あったとしても自分たちが食べる分を作って生きていく程度の農地だったので、借金を返すことができない。
そもそも、村まで帰るお金もない。
首都で働き、返済することにしたのだ。
だが、国の期待を裏切った「よた野郎」のレッテルを貼られた3人に働く場所はなかった。
働くには身元の確認が必要で、そうするとどうしても王宮を追放された事実が露見してしまう。
不動産屋でも身元確認が必要で住む場所も借りれないため、街の外れにある貧民街の、さらに外れにシートを張って家にした。
いつの間にか噂が広まったため貧民街ですら後ろ指を刺されてしまい、なんとか雨風をしのぐだけの住処しか確保できなかったのだ。
ニクラスに非はないとはいえ、彼のジョブが原因で窮地に陥ってしまったにもかかわらず、ロニーとイーリスは相変わらず優しく接してくれた。
愚痴一つこぼす事なく、今後どうするかを一生懸命考えた。
愚痴をこぼせばニクラスを傷つけることになるから。
結局雇ってくれるところはなく、ロニーとイーリスは冒険者になることにした。
冒険者は誰でもなることができ、身元確認もない。
しかし、ジョブを持っていない【ノービス】の2人には厳しい仕事だ。
冒険者はギルドで依頼を受けて、成功したらその報酬を受け取ることができる。
護衛、モンスター退治、薬草などの採集、雑用など色々な依頼があるが、モンスターや盗賊と戦うことのできない【ノービス】が受けられるのは採集依頼か雑用。
雑用は追放されたことがわかると依頼者とトラブルになるかもしれないので、採集依頼でお金を稼ぐ日々。
採集とはいえ、モンスターに遭遇する可能性もあり、危険を伴う。
街から程近い場所しかいけないので、1日の報酬は2人で1000~1500ゴルほど。
1ヶ月に返済できるのはどんなに切り詰めても1万ゴルだった。
返済の条件は年利5%に返済期間30年。
1ヶ月の返済額は27万ゴル弱ある。
減らすどころか、返済額がどんどん増えてしまっていた。
ニクラスも一緒に採集をすると何度も訴えたのだが、【予知者】はノービスよりも能力が低い。
ニクラスのステータスはジョブが覚醒した日から少しも増えていなかった。
我が子を危険に晒したくない親心で、連れて行かなかったのだ。
そして、追放されて約4ヶ月後。
この日、ニクラスはある覚悟をしていた。
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