レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

文字の大きさ
上 下
269 / 283
第五章 最後の決戦

第265話 大勢は…決した?

しおりを挟む
ユニークスキル【槍神】を託して、デルベルトは逝った。

初めからそのつもりだったのだろう。


ロックはファルクの元に移動する。

「グァ!?」

1箇所にまとまるのは危険なのに、なぜきた!?とばかりにロックを睨むファルク。

魔王からの攻撃魔法が2人を狙う。


「【スキルギフト】。」

魔王の魔法に耐えながら、【槍神】をファルクへ渡すロック。

そして、すぐにその場を離れる。


スキルを受け取り、ファルクは【豪龍化】を解いた。


「逝ったのか…。」

槍を握りしめ、一瞬下を向いたファルク。

だがすぐに前を向く。


「ありがたく、使わせてもらうぜ…!」


ユニークスキル【槍神】による[武技]を放つファルク。

それは、魔王の魔法の一部をかき消した。

相手の魔法と近い威力を誇り、さらにユニークスキルでの[武技]だけが成しえる現象だ。

【剣神】を持つデイジーも試してみたが、攻撃力が足りなかったようで、同じことはできなかった。


【神速】を持つハンナ・デイジーとイライサの戦いは、なかなか決着がつかなかった。

お互い【神速】で攻撃を避けるため、決定的な一撃を当てることができないのだ。

ハンナは2人分の移動でMP消費が大きいが、【神の恩寵】でなんとか使い続けられている。

イライサはデイジーの剣を一撃でも貰えば致命傷なので、必死で避け続けている。

当然、魔王への援護はできなくなった。


魔王vsロック・ファルク。

そして、ティナとミラが後方から2人を支援する。

ティナの【光輝の壁】や回復魔法、ミラの[シールド]が途切れれば、ロックとファルクはいつ死んでもおかしくない。

戦況は好転してきているが、それでもギリギリの戦いであった。


「…ロック。」

戦いの中、ハンナの【神速】でデイジーがロックの側にやってきた。

ハンナはすぐにイライサの対応に戻った。

「デイジーさん!
 ここは危険ですよ!?
 どうしました!?」

「…【剣神】、使って。」

「え!?」

「…ロックなら、これで魔王に対抗できる。」

「でも、このスキルは…。」

【剣神】はデイジーの師匠である前サンジャータ国王から受け継いだものなのだ。

「…構わない。
 …勝って。」

「…ありがとうございます…。」

ロックは【剣神】を受け取り、持っていた【剣聖】を渡した。

デイジーはニコッと笑うと、ハンナの元へと戻っていった。

「これが…【剣神】…。
 これなら…!」

自身に襲いかかる魔王の業火にむけ、[武技]を放つロック。

その[武技]は炎を切り裂いた。

全てを相殺することはできなかったが、【光輝の壁】の効果もあり、ダメージをほとんど無効化することができた。

ファルクは少なからずダメージを受けているが、【再生】の効果もあるので、十分に戦える。


「ぐっ…!
 人間風情が…!!」

魔王が完全に押され始めた。

ティナとミラの援護がなければ魔王に勝機はあるが、ロックとファルクを無視して彼女たちを倒すことは不可能。

他の魔族やモンスターの手助けも望めない。


「だが…、お前たちに我は倒せん!
 我が死ねば、お前たちの大事な恋人や仲間も死ぬぞ!?」


魔王はロックたちがイーザやリッチェルを切り捨てられないことを知っていた。

ユニークスキルは相手を倒せば手に入るが、魔王を倒してスキルを奪った時、魔族たちがどうなるかはわからない。

だが、それに賭けるしか道はない。


「それで自分の安全を確保したつもりか?
 甘えんだよ。」

ファルクの[武技]が魔王の肩をえぐった。


「ぐあっ…!!」


その隙をつき、ロックの剣も魔王の脇腹を切り裂いた。


「ぐ…お…っ……。」


ステータスUP系のスキルには、全て時間制限がある。

魔王の使った【魔神化】も例外ではない。

MPを半分消費した上に、20分間しか効果を発揮しない。


「え、MPが回復しない…!?」


魔王側にいた【神の恩寵】の使い手は2人。

1人はロックによりそのスキルを奪われた。

冒険者側は戦いながら、まだ【神の恩寵】の使い手がいることを感じていた。

戦いながらその使い手を見定め、アッサールが仕留めたのがつい先ほどであった。


そのタイミングで魔王の【魔神化】はタイムリミットを迎えた。

攻撃魔法でMPを消費していた魔王は、もう【魔神化】を発動することができない。

こうなれば、もう魔王になす術はない。


「魔王様っ!!」


魔王の危機に、イライサたちS級魔族たちが無理をして助けに入る。


だがそれは悪手であった。

ただでさえS級冒険者の相手で手一杯。

その状態でロックの目の前に姿を晒してしまえば、【スキルスナッチ】を防ぐことはできないからだ。

イライサの【神速】を始め、数人の強力なスキルがロックにより奪われる。

魔族たちもその危険性はわかっていた。

それでも魔王を助けるために動いたのだ。

しかし、リスクを冒した特攻も、S級冒険者たちやロックの分裂体により、何の成果もあげられなかった。


ロックたちはダメおしにクローディアに頼み、【吸魔】で魔王のMPを吸い尽くした。


「ぐっ…。
 だが、我を殺せばお前らの大事な仲間は…」

「黙れ。」

ファルクが魔王の喉元に槍を突きつける。

しかし、ロックたちは魔王を倒していいかどうか、最後の決断ができなかった。

スキルを奪っても殺してしまえば、魔族も一緒に死ぬ可能性は少なくない。


それでも、やるしかない。

ロックが剣を持つ手に力を込めた。


その時。



「やめるんだっ!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...