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第五章 最後の決戦
第250話 脳筋
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「うちのギルマスが、魔王の親玉だとぉぉおおお!?
俺様の憧れの人を侮辱する気かぁぁああ!?」
魔王が現れてギルマスになってからは一線を退いたが、それまでは人望が厚く、実力も世界トップレベルの冒険者だったフィデルア。
セレスタンのように憧れている冒険者は多い。
「…親玉だと決まったわけではないが、その可能性は高い。
状況から考えても、無関係ではあるまい。」
「ブレスレット壊したくれえで、証拠になるかぁぁああ!!
どうせお前ら操られてんだろうがぁぁああ!!」
「しかし、セレスタン。
そいつらはダートやこのアルカトルを救ってくれたんだ。
彼らがいなければ大きな被害が出ていただろう。
それは事実だ。」
「皇帝やうちのギルマスだってそうだぁぁああ!!
国や世界を救った英雄だろうがぁぁあああ!!!」
耳が痛くなるくらいの大声。
セアラとアメリアは耳を塞いでいる。
「もう話すことはねぇええ!!」
セレスタンは怒鳴り散らしながら、部屋を出て行ってしまった。
「…これは難航しそうね…。」
「時間はそんなにない。
なんとかわかってもらうしかないな。
ロヴェルさん、説得している間に、アメリア・セアラとクローディアを迎えに行ってもらえないか?」
「構いませんが、S級冒険者がそんなに簡単に国を空けられますか?」
「緊急事態だからな。
やれんことはない。
…まあ、胃が痛くなるから本当はやりたくないが…。」
世界一モンスターの侵攻が激しいアルカトルのギルマスは、防衛戦に関してある程度の権力を持っている。
ロヴェルが【龍化】すればフォーレンまでは1日の距離。
その期間なら無理を言えばなんとかなるとのことだった。
「頼んだぞ。
帰ってくるまでにはセレスタンもなんとかしてみせる。」
次の日、ロヴェル・アメリア・セアラはフォーレンへ向かって飛び立った。
ギルマスとアッサールはセレスタンの元へ。
「なんだぁあ?」
「話を聞いてくれ、セレスタン。
お前の力が必要なんだ。」
「俺様がうちのギルマスを裏切ることはねえぇ!
絶対にな!!」
「…わかった。
確かに、まだフィデルアが魔王側だと完全に決まったわけじゃない。」
「完全にも何も、そんなわきゃねぇんだよぉお!」
「俺もあいつのことはよく知ってる。
あの正義感に溢れたフィデルアが魔王と手を組むなんて、信じられない。
だが、この国を救ってくれたロックたちのことを疑うこともできないんだ。
あいつらも、フィデルアぐらい、いや、それ以上に強い正義感を持っている。
一緒に真実を、見極めて欲しい。」
「…指名手配された殺人犯を信じろってかぁ?」
「指名手配したのはギルドと軍だが、軍のトップである将軍が不正で投獄されたのは知ってるだろう?
不正が発覚したのも、彼らのおかげだ。
腐敗した軍の指名手配に正当性があるかどうかは疑わしいと思わんか?」
「まあ将軍は大したやつじゃなかったからなぁ。
だが、ギルマスは違うぅ!!」
「そもそも、彼らが私利私欲のために何かしようというのなら、我々に助けを求める必要なんかないんだ。
それくらい彼ら…、彼のスキルは強い。
それでも助けを求めてるのは、自分たちのためじゃなく、この世界のために何かしたいからだ。
それはいくら強くても、叶わないことだからな。」
「ふんっ!
どうだかなぁあ!?
タイマンなら俺が…勝つぅぅっ!!
「…無理だな。」
そこでアッサールが口を開いた。
「あぁん?!
アッサール、なんだってぇええ!?」
「…無理だと言ったんだ。
お前では絶対に勝てん。」
「なんだとぉぉおおお!?
舐めたこと言ってんじゃねえぞぉおお!!」
「…スキルを奪われては、勝負にならんだろう?」
「…まあ、それははっきり言って反則だなぁ。
だがぁ!
そいつのスキルでも奪えないのがあるんだろぉお!?」
「…ユニークスキルか。」
「他のスキルを奪われてもぉ!!
俺様の【拳神】スキルで倒せねえやつはいねえぇええ!!」
セレスタンは格闘術の最高位スキル、【拳神】のユニークスキルを保持している。
脳筋ならではの言動とは裏腹に、その技術は洗練されていて美しくすらある。
接近戦で彼に勝てる相手はいなかった。
…今までは。
「セレスタン、ロックたちは一緒に戦う仲間にも力を与えてくれた。
…世界を守るためにだ。
私利私欲のために動くなら、力を奪っても、与えることはない。
それも、信じられないほど大きな力をな。
今のお前ではロックはおろか、アッサールにも歯が立たんと思うぞ。」
「はぁ!?
確かにこいつは強えが、敵味方見境なく襲う【バーサーカー】があったからだろぉお!?
それすら無くなったやつに、俺様が負けるわけねえだろぉがぁぁ!!」
「…やるか?
俺が勝ったら、少し落ち着いて話を聞け。
やかましくてかなわん。」
「本気で俺様とやんのかぁ?
俺様とタイマンして無事で済むかどうか、わかるだろぉお!?」
「…今の俺は、お前の知る俺ではない。
気を抜けば…、死ぬかもしれんぞ。」
「アッサール、いいのか?」
「…ああ。」
「よしぃ…。
半殺しにしてやるよぉぉおお!!」
俺様の憧れの人を侮辱する気かぁぁああ!?」
魔王が現れてギルマスになってからは一線を退いたが、それまでは人望が厚く、実力も世界トップレベルの冒険者だったフィデルア。
セレスタンのように憧れている冒険者は多い。
「…親玉だと決まったわけではないが、その可能性は高い。
状況から考えても、無関係ではあるまい。」
「ブレスレット壊したくれえで、証拠になるかぁぁああ!!
どうせお前ら操られてんだろうがぁぁああ!!」
「しかし、セレスタン。
そいつらはダートやこのアルカトルを救ってくれたんだ。
彼らがいなければ大きな被害が出ていただろう。
それは事実だ。」
「皇帝やうちのギルマスだってそうだぁぁああ!!
国や世界を救った英雄だろうがぁぁあああ!!!」
耳が痛くなるくらいの大声。
セアラとアメリアは耳を塞いでいる。
「もう話すことはねぇええ!!」
セレスタンは怒鳴り散らしながら、部屋を出て行ってしまった。
「…これは難航しそうね…。」
「時間はそんなにない。
なんとかわかってもらうしかないな。
ロヴェルさん、説得している間に、アメリア・セアラとクローディアを迎えに行ってもらえないか?」
「構いませんが、S級冒険者がそんなに簡単に国を空けられますか?」
「緊急事態だからな。
やれんことはない。
…まあ、胃が痛くなるから本当はやりたくないが…。」
世界一モンスターの侵攻が激しいアルカトルのギルマスは、防衛戦に関してある程度の権力を持っている。
ロヴェルが【龍化】すればフォーレンまでは1日の距離。
その期間なら無理を言えばなんとかなるとのことだった。
「頼んだぞ。
帰ってくるまでにはセレスタンもなんとかしてみせる。」
次の日、ロヴェル・アメリア・セアラはフォーレンへ向かって飛び立った。
ギルマスとアッサールはセレスタンの元へ。
「なんだぁあ?」
「話を聞いてくれ、セレスタン。
お前の力が必要なんだ。」
「俺様がうちのギルマスを裏切ることはねえぇ!
絶対にな!!」
「…わかった。
確かに、まだフィデルアが魔王側だと完全に決まったわけじゃない。」
「完全にも何も、そんなわきゃねぇんだよぉお!」
「俺もあいつのことはよく知ってる。
あの正義感に溢れたフィデルアが魔王と手を組むなんて、信じられない。
だが、この国を救ってくれたロックたちのことを疑うこともできないんだ。
あいつらも、フィデルアぐらい、いや、それ以上に強い正義感を持っている。
一緒に真実を、見極めて欲しい。」
「…指名手配された殺人犯を信じろってかぁ?」
「指名手配したのはギルドと軍だが、軍のトップである将軍が不正で投獄されたのは知ってるだろう?
不正が発覚したのも、彼らのおかげだ。
腐敗した軍の指名手配に正当性があるかどうかは疑わしいと思わんか?」
「まあ将軍は大したやつじゃなかったからなぁ。
だが、ギルマスは違うぅ!!」
「そもそも、彼らが私利私欲のために何かしようというのなら、我々に助けを求める必要なんかないんだ。
それくらい彼ら…、彼のスキルは強い。
それでも助けを求めてるのは、自分たちのためじゃなく、この世界のために何かしたいからだ。
それはいくら強くても、叶わないことだからな。」
「ふんっ!
どうだかなぁあ!?
タイマンなら俺が…勝つぅぅっ!!
「…無理だな。」
そこでアッサールが口を開いた。
「あぁん?!
アッサール、なんだってぇええ!?」
「…無理だと言ったんだ。
お前では絶対に勝てん。」
「なんだとぉぉおおお!?
舐めたこと言ってんじゃねえぞぉおお!!」
「…スキルを奪われては、勝負にならんだろう?」
「…まあ、それははっきり言って反則だなぁ。
だがぁ!
そいつのスキルでも奪えないのがあるんだろぉお!?」
「…ユニークスキルか。」
「他のスキルを奪われてもぉ!!
俺様の【拳神】スキルで倒せねえやつはいねえぇええ!!」
セレスタンは格闘術の最高位スキル、【拳神】のユニークスキルを保持している。
脳筋ならではの言動とは裏腹に、その技術は洗練されていて美しくすらある。
接近戦で彼に勝てる相手はいなかった。
…今までは。
「セレスタン、ロックたちは一緒に戦う仲間にも力を与えてくれた。
…世界を守るためにだ。
私利私欲のために動くなら、力を奪っても、与えることはない。
それも、信じられないほど大きな力をな。
今のお前ではロックはおろか、アッサールにも歯が立たんと思うぞ。」
「はぁ!?
確かにこいつは強えが、敵味方見境なく襲う【バーサーカー】があったからだろぉお!?
それすら無くなったやつに、俺様が負けるわけねえだろぉがぁぁ!!」
「…やるか?
俺が勝ったら、少し落ち着いて話を聞け。
やかましくてかなわん。」
「本気で俺様とやんのかぁ?
俺様とタイマンして無事で済むかどうか、わかるだろぉお!?」
「…今の俺は、お前の知る俺ではない。
気を抜けば…、死ぬかもしれんぞ。」
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半殺しにしてやるよぉぉおお!!」
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