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第四章 世界中が敵
第213話 砦の占拠
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サンジャータの城がある首都は、周りを高い山々に囲まれている。
その連山はモンスターも生息できないほど険しい。
そんなサンジャータの首都へ行くには2つの道がある。
南東にある港へ続く街道と、北のエスに続く街道だ。
港は海にはびこるモンスターにより十数年使うことができなくなったため、現在使われているのは北の街道だけだ。
そこには砦があり、古くはエスとの攻防に、現在は魔族からの侵攻を食い止めるために使われている。
話し合いから数日後、ロックたちはその砦を占拠していた。
砦は当然警戒されており、弓使いや魔法使いを中心としたA級冒険者である兵士が約20名、B級以下が200名ほど配置されていた。
ファルクが龍化出来ることを警戒して、対空部隊を強化していた。
さらに『相手をなるべく傷つけない』前提としているロックたち。
本来ならかなり困難な状況ではあるが、ドラゴンに変身できるファルクと【神速】を持つハンナにかかれば砦に降り立つことは容易であった。
こんなにあっさり侵入されることを予想していなかったサンジャータ兵士たち。
混乱した敵を相手をロックたちが制圧するのはそう難しいことではなかった。
ミラが【気配察知】で指揮官であろう強い気配を優先的に探し、指揮系統を乱していった。
砦にいる兵士たちでは【守護神の加護】を持つミラにわずかのダメージも与えることはできなかった。
状態異常魔法を使いながら、兵士たちを傷つけることなく無力化していく。
兵士たちもエスを攻めることに迷いがあったのだろう。
「私たちが争いを止める!
信じてくれ!」
そう訴え続けるハンナはサンジャータ国民からも人気があり、その言葉に剣を納める兵士も少なくなかった。
魔族の侵攻に対しての共同戦線で命を助けられた兵士たちだ。
さらに、自分たちを傷つけないようにと立ち回るロックの行動も、彼らの心情に少なからず影響を与えた。
こうして重要拠点である砦を制圧することができた。
「ここを抑えられたのはでかいね。
サンジャータ国王も空を飛べるとはいえ、乗せられるのは数人。
軍本隊にこの砦さえ突破されなければ、無益な衝突は避けられる。」
「エスの方はランさん、スーさんたちに任せてきましたけど、大丈夫ですよね?」
エスとサンジャータは人口規模に約3倍の差がある。
戦力もそれに比例している。
A級冒険者の数でいえば、エスが約30人に対し、サンジャータが約90人。
今回はロックたちとハンナだけで砦を占拠していて、他の戦力はエスの首都に残してきている。
万が一サンジャータ国王が直接首都に攻めた場合に対応するためだ。
「サンジャータ国王が助っ人を連れてきても、ここは必ず通過するはず。
その際に【気配察知】で大きな戦力を察知できたら、ファルクが追いかけてくれるんだよね?
それなら問題ないよ。
それにランやスーも今やS級だし、スキルも強化してもらった。
あいつらだけでも、サンジャータの主戦力に引けは取らないよ。」
「まあ俺らがここで決着をつけることになるさ。
問題は助っ人だな。
わざわざ連れてくるからにはS級だろう。
数人しか連れて来れないのにA級を連れてくるとは思えないからな。」
「S級冒険者相手に傷つけないように戦えるかどうか…、ね。」
「そうだね。
でもまずは、本隊をどうにかしないとね。
…きたよ!」
砦のはるか向こうから砂埃を巻き上げながら大軍が押し寄せてきた。
「S級の気配は…2つ!
一番前を走ってるよ!」
【気配察知】の範囲を広げたミラがS級の気配を察知する。
「先陣切ってやってきたか。
あの2人らしいね。」
同じS級同士で何度も一緒に戦ったハンナは、当然その2人のことを知っていた。
「2人を説得できれば簡単なんだが…、愚王だとわかっていても寝返るような奴らじゃない。
望みは薄いだろうね…。」
「ハンナさん、大丈夫ですか?」
「ああ、無理だとは思うけど、話して筋は通したい。」
「気をつけてくださいね。」
「…ありがとう。」
「全軍、止まれ~!」
砦に近づいてきたサンジャータ軍は、矢が届く範囲のギリギリ手前で進軍を止めた。
「…ん?
誰か出てきたぞ。」
砦から1人で出てきたのは、ハンナ。
「ロヴェル!
デイジー!
話がしたい!!」
大声で相手のS級であるロヴェルとデイジーに呼びかけるハンナ。
ロヴェルは将軍、デイジーは副将軍だ。
「…ハンナさん?
ハンナさんが出てきたってことは砦は…。
…どうします?
ロヴェルさん。」
「まさかこんな短時間であの砦を占拠されるとはな…。
まあ、あのハンナが小細工できるとは思えん。
それに、1人できてくれるなら無駄な戦いをせずに済むかもしれない。
…全軍!
ここで待機せよ!」
ロヴェルとデイジーの2人はハンナの方へと馬を進め、話し合いに応じた。
その連山はモンスターも生息できないほど険しい。
そんなサンジャータの首都へ行くには2つの道がある。
南東にある港へ続く街道と、北のエスに続く街道だ。
港は海にはびこるモンスターにより十数年使うことができなくなったため、現在使われているのは北の街道だけだ。
そこには砦があり、古くはエスとの攻防に、現在は魔族からの侵攻を食い止めるために使われている。
話し合いから数日後、ロックたちはその砦を占拠していた。
砦は当然警戒されており、弓使いや魔法使いを中心としたA級冒険者である兵士が約20名、B級以下が200名ほど配置されていた。
ファルクが龍化出来ることを警戒して、対空部隊を強化していた。
さらに『相手をなるべく傷つけない』前提としているロックたち。
本来ならかなり困難な状況ではあるが、ドラゴンに変身できるファルクと【神速】を持つハンナにかかれば砦に降り立つことは容易であった。
こんなにあっさり侵入されることを予想していなかったサンジャータ兵士たち。
混乱した敵を相手をロックたちが制圧するのはそう難しいことではなかった。
ミラが【気配察知】で指揮官であろう強い気配を優先的に探し、指揮系統を乱していった。
砦にいる兵士たちでは【守護神の加護】を持つミラにわずかのダメージも与えることはできなかった。
状態異常魔法を使いながら、兵士たちを傷つけることなく無力化していく。
兵士たちもエスを攻めることに迷いがあったのだろう。
「私たちが争いを止める!
信じてくれ!」
そう訴え続けるハンナはサンジャータ国民からも人気があり、その言葉に剣を納める兵士も少なくなかった。
魔族の侵攻に対しての共同戦線で命を助けられた兵士たちだ。
さらに、自分たちを傷つけないようにと立ち回るロックの行動も、彼らの心情に少なからず影響を与えた。
こうして重要拠点である砦を制圧することができた。
「ここを抑えられたのはでかいね。
サンジャータ国王も空を飛べるとはいえ、乗せられるのは数人。
軍本隊にこの砦さえ突破されなければ、無益な衝突は避けられる。」
「エスの方はランさん、スーさんたちに任せてきましたけど、大丈夫ですよね?」
エスとサンジャータは人口規模に約3倍の差がある。
戦力もそれに比例している。
A級冒険者の数でいえば、エスが約30人に対し、サンジャータが約90人。
今回はロックたちとハンナだけで砦を占拠していて、他の戦力はエスの首都に残してきている。
万が一サンジャータ国王が直接首都に攻めた場合に対応するためだ。
「サンジャータ国王が助っ人を連れてきても、ここは必ず通過するはず。
その際に【気配察知】で大きな戦力を察知できたら、ファルクが追いかけてくれるんだよね?
それなら問題ないよ。
それにランやスーも今やS級だし、スキルも強化してもらった。
あいつらだけでも、サンジャータの主戦力に引けは取らないよ。」
「まあ俺らがここで決着をつけることになるさ。
問題は助っ人だな。
わざわざ連れてくるからにはS級だろう。
数人しか連れて来れないのにA級を連れてくるとは思えないからな。」
「S級冒険者相手に傷つけないように戦えるかどうか…、ね。」
「そうだね。
でもまずは、本隊をどうにかしないとね。
…きたよ!」
砦のはるか向こうから砂埃を巻き上げながら大軍が押し寄せてきた。
「S級の気配は…2つ!
一番前を走ってるよ!」
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「先陣切ってやってきたか。
あの2人らしいね。」
同じS級同士で何度も一緒に戦ったハンナは、当然その2人のことを知っていた。
「2人を説得できれば簡単なんだが…、愚王だとわかっていても寝返るような奴らじゃない。
望みは薄いだろうね…。」
「ハンナさん、大丈夫ですか?」
「ああ、無理だとは思うけど、話して筋は通したい。」
「気をつけてくださいね。」
「…ありがとう。」
「全軍、止まれ~!」
砦に近づいてきたサンジャータ軍は、矢が届く範囲のギリギリ手前で進軍を止めた。
「…ん?
誰か出てきたぞ。」
砦から1人で出てきたのは、ハンナ。
「ロヴェル!
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話がしたい!!」
大声で相手のS級であるロヴェルとデイジーに呼びかけるハンナ。
ロヴェルは将軍、デイジーは副将軍だ。
「…ハンナさん?
ハンナさんが出てきたってことは砦は…。
…どうします?
ロヴェルさん。」
「まさかこんな短時間であの砦を占拠されるとはな…。
まあ、あのハンナが小細工できるとは思えん。
それに、1人できてくれるなら無駄な戦いをせずに済むかもしれない。
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