レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

文字の大きさ
上 下
190 / 283
第四章 世界中が敵

第187話 見えた勝ち筋

しおりを挟む
「どうすればいいんだ…。」

打開策が思い浮かばないまま状況は悪化していく。

ファルクは【再生】スキルを持っているためスレイプニルから受けたダメージは回復してきているが、相手にダメージを与えることができていない。

[武技]で範囲攻撃を繰り出しているものの、九色鹿の魔法ですぐに回復されるのだ。


考えているうちに、また1体の分裂体がベヒーモスによって倒された。

(もう分裂体を増やせない…。
 くそっ!
 どうしたら…!!)

「ロック!
 焦るんじゃねえぞ!」

ロックの焦りを感じたファルクが大声で呼びかける。

スキルやステータスはロックが大きく上回っていても、戦いの経験はファルクの方がはるかに多い。

「ファルクさん!
 でも、このままじゃ…!」

「この馬は植物を操る強えスキルを持ってた!
 でもほとんど使ってねえ!」

「え?
 な、なんで…?」

「お前のスキルを奪う能力を【分裂】で防ぐことが優先だからじゃねえのか!?」

「!!
 そ、そうか!」

(あの馬のモンスターは今の今まで、【分裂】しか使ってなかった。
 あのすごい速さで移動するスキルや植物を操るスキルを使わなかったのは…、魔力を使うから…!
 分裂体が生み出せなくなるのは、僕だけじゃない!)


「おおお!!」

「ファルクさん!?」

ファルクが九色鹿に猛攻を仕掛けはじめた。

スレイプニルがそれを防ぐためにスキルを使っている。

さらに、攻撃により九色鹿は【挑発】を使う余裕がなくなった。

「俺がこいつの魔力をさせる!
 分裂体の方は…、頼んだぞ!」

「……!
 わかりました!!」

(キングベヒーモスの相手を分裂体にさせてるうちに、馬の分裂体を…。
 ……いや、僕が抜けたら一気に分裂体はやられる。
 そうすると馬の分裂体を減らす時間を稼げない…。)


ロックは意を決して、キングベヒーモスにあてていた4体の分裂体をスレイプニルの分裂体へと向かわせた。

「ロック!?」

それを見たファルクが焦りの声を出す。

まさかロックが1人でキングベヒーモスの相手をするとは思っていなかったのだ。


「大丈夫です!」


キングベヒーモスの攻撃力と素早さがロックを上回るのは【噛み砕き】の時だけ。

常に動き回り的を絞らせなければ、時間を稼げるはず。

攻撃をもらってしまうと当然大きなダメージを受けるが、それでも分裂体へのダメージから予想すると、2回は耐えられる。

ミラの【光輝の壁】がうまく守ってくれればダメージは半減するが、キングベヒーモスのスピードに合わせるのは困難だろう。

我慢比べのような戦いが始まった。


ロックとファルク以外のメンバーが戦っている場所の戦況は、4体の分裂体が増えたことで大きく優勢に傾いた。

ロックが1人でキングベヒーモスと戦っている姿も当然見えているため、みんな目の前の敵を1秒でも早く倒そうと攻撃の手を限界以上に早めたおかげでもある。

他のモンスターや魔族を庇うように動くため、スレイプニルの分裂体がどんどんその数を減らしていく。

スレイプニル本体が動くと九色鹿がファルクに倒されてしまうため、本体は加勢にいくことができない。

魔力が切れたようで、素早い移動も【柳力花攻】による攻撃もできなくなっている。

九色鹿は他の仲間を回復する余裕はあるのだが、集中して攻撃を受けているのが回復を受け付けないスレイプニルの分裂体のためどうすることもできない。


優勢に進んでいた…、のだが。

ここでバフが切れてしまった。


敵を含めたほとんど全員がバフをかけなおしたが、ロックとファルクだけはミラと離れていたため切れたままとなってしまった。

2人ともステータスが相手を下回った状態での戦いに。

しかし、2人が持ち場を離れてしまうとまた戦況が一気に悪くなってしまう。


それでも戦況はまだ有利だとロックは考えていた。

スレイプニルの分裂体が3分の1ほどになっていたからだ。

このままスレイプニルの分裂体を殲滅し、自分の分裂体をキングベヒーモスと九色鹿・スレイプニル本体に対して配置すれば、押し切れる。

そう考えるロックは、重要なことを忘れていた。


対峙するキングベヒーモスから、圧倒的なプレッシャーがほとばしる。


「…っ!!
 しまった!!!」


キングベヒーモスのスキル【威圧】がロックを襲い、身体の自由を奪った。

最近の戦いでは常に相手のステータスを上回っていたが故の油断。

あまりにも…致命的な油断だった。


「ははっ!
 くたばれ!!」

「ぐあっ……!!」


キングベヒーモスがロックに凶悪な牙で噛み付く。


「ロック!!」

ファルクがキングベヒーモスに斬りかかるが、【深淵の闇】でダメージを飲み込むため意にも介せず、2人から悠々と距離をとる。

そこにスレイプニルも加わった。

ステータス差は大きくないので、ロックの硬直はすぐに解けた。


「大丈夫か!?」

「ええ…。
 ミラが【光輝の壁】で守ってくれたようで…。
 ただ、次もし【光輝の壁】が間に合わなければ、持ち堪えるのは無理そうです…。
 間に合っても、耐えられてあと2発…。」

「まずいな…。」

「一度分裂体にここを任せてみんなと合流しましょう。」

「そうだな。」


だがみすみす獲物を逃がす相手ではなかった。

再び【威圧】を放つ。

その兆候を察し避けようとするロックとファルクだが、ロックは傷が深く、一瞬反応が遅れてしまう。


またもや硬直するロック。


そこに襲い掛かろうとするキングベヒーモス。


「くっ…!」


身体が動かず無防備なロックを噛み砕こうと迫るキングベヒーモス。


その牙はロックではない、大きな生き物に突き刺さった。


フォースドラゴンに変身したファルクだった。


HP・体力・力が1.5倍となるフォースドラゴンに変身したことで、キングベヒーモスの攻撃を耐え切るファルク。

【光輝の壁】も間に合ったようだが、それでも4割ほどのHPを削られた。


「ファルクさん!」

硬直の解けたロックが叫ぶ。

ファルクはロックの声には反応せず、突然現れたドラゴンに驚きを隠せないベヒーモスに噛み付く。


目的はダメージではなく、動きを止めること。


その意図にロックが気付いた。


「【スキルスナッチ】!」

遅れて気付いたスレイプニルだが、魔力が枯渇していたため素早く移動するスキルが使えず間に合わない。



『どのスキルを奪いますか?』
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

処理中です...