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第四章 世界中が敵
第187話 見えた勝ち筋
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「どうすればいいんだ…。」
打開策が思い浮かばないまま状況は悪化していく。
ファルクは【再生】スキルを持っているためスレイプニルから受けたダメージは回復してきているが、相手にダメージを与えることができていない。
[武技]で範囲攻撃を繰り出しているものの、九色鹿の魔法ですぐに回復されるのだ。
考えているうちに、また1体の分裂体がベヒーモスによって倒された。
(もう分裂体を増やせない…。
くそっ!
どうしたら…!!)
「ロック!
焦るんじゃねえぞ!」
ロックの焦りを感じたファルクが大声で呼びかける。
スキルやステータスはロックが大きく上回っていても、戦いの経験はファルクの方がはるかに多い。
「ファルクさん!
でも、このままじゃ…!」
「この馬は植物を操る強えスキルを持ってた!
でもほとんど使ってねえ!」
「え?
な、なんで…?」
「お前のスキルを奪う能力を【分裂】で防ぐことが優先だからじゃねえのか!?」
「!!
そ、そうか!」
(あの馬のモンスターは今の今まで、【分裂】しか使ってなかった。
あのすごい速さで移動するスキルや植物を操るスキルを使わなかったのは…、魔力を使うから…!
分裂体が生み出せなくなるのは、僕だけじゃない!)
「おおお!!」
「ファルクさん!?」
ファルクが九色鹿に猛攻を仕掛けはじめた。
スレイプニルがそれを防ぐためにスキルを使っている。
さらに、攻撃により九色鹿は【挑発】を使う余裕がなくなった。
「俺がこいつの魔力をさせる!
分裂体の方は…、頼んだぞ!」
「……!
わかりました!!」
(キングベヒーモスの相手を分裂体にさせてるうちに、馬の分裂体を…。
……いや、僕が抜けたら一気に分裂体はやられる。
そうすると馬の分裂体を減らす時間を稼げない…。)
ロックは意を決して、キングベヒーモスにあてていた4体の分裂体をスレイプニルの分裂体へと向かわせた。
「ロック!?」
それを見たファルクが焦りの声を出す。
まさかロックが1人でキングベヒーモスの相手をするとは思っていなかったのだ。
「大丈夫です!」
キングベヒーモスの攻撃力と素早さがロックを上回るのは【噛み砕き】の時だけ。
常に動き回り的を絞らせなければ、時間を稼げるはず。
攻撃をもらってしまうと当然大きなダメージを受けるが、それでも分裂体へのダメージから予想すると、2回は耐えられる。
ミラの【光輝の壁】がうまく守ってくれればダメージは半減するが、キングベヒーモスのスピードに合わせるのは困難だろう。
我慢比べのような戦いが始まった。
ロックとファルク以外のメンバーが戦っている場所の戦況は、4体の分裂体が増えたことで大きく優勢に傾いた。
ロックが1人でキングベヒーモスと戦っている姿も当然見えているため、みんな目の前の敵を1秒でも早く倒そうと攻撃の手を限界以上に早めたおかげでもある。
他のモンスターや魔族を庇うように動くため、スレイプニルの分裂体がどんどんその数を減らしていく。
スレイプニル本体が動くと九色鹿がファルクに倒されてしまうため、本体は加勢にいくことができない。
魔力が切れたようで、素早い移動も【柳力花攻】による攻撃もできなくなっている。
九色鹿は他の仲間を回復する余裕はあるのだが、集中して攻撃を受けているのが回復を受け付けないスレイプニルの分裂体のためどうすることもできない。
優勢に進んでいた…、のだが。
ここでバフが切れてしまった。
敵を含めたほとんど全員がバフをかけなおしたが、ロックとファルクだけはミラと離れていたため切れたままとなってしまった。
2人ともステータスが相手を下回った状態での戦いに。
しかし、2人が持ち場を離れてしまうとまた戦況が一気に悪くなってしまう。
それでも戦況はまだ有利だとロックは考えていた。
スレイプニルの分裂体が3分の1ほどになっていたからだ。
このままスレイプニルの分裂体を殲滅し、自分の分裂体をキングベヒーモスと九色鹿・スレイプニル本体に対して配置すれば、押し切れる。
そう考えるロックは、重要なことを忘れていた。
対峙するキングベヒーモスから、圧倒的なプレッシャーがほとばしる。
「…っ!!
しまった!!!」
キングベヒーモスのスキル【威圧】がロックを襲い、身体の自由を奪った。
最近の戦いでは常に相手のステータスを上回っていたが故の油断。
あまりにも…致命的な油断だった。
「ははっ!
くたばれ!!」
「ぐあっ……!!」
キングベヒーモスがロックに凶悪な牙で噛み付く。
「ロック!!」
ファルクがキングベヒーモスに斬りかかるが、【深淵の闇】でダメージを飲み込むため意にも介せず、2人から悠々と距離をとる。
そこにスレイプニルも加わった。
ステータス差は大きくないので、ロックの硬直はすぐに解けた。
「大丈夫か!?」
「ええ…。
ミラが【光輝の壁】で守ってくれたようで…。
ただ、次もし【光輝の壁】が間に合わなければ、持ち堪えるのは無理そうです…。
間に合っても、耐えられてあと2発…。」
「まずいな…。」
「一度分裂体にここを任せてみんなと合流しましょう。」
「そうだな。」
だがみすみす獲物を逃がす相手ではなかった。
再び【威圧】を放つ。
その兆候を察し避けようとするロックとファルクだが、ロックは傷が深く、一瞬反応が遅れてしまう。
またもや硬直するロック。
そこに襲い掛かろうとするキングベヒーモス。
「くっ…!」
身体が動かず無防備なロックを噛み砕こうと迫るキングベヒーモス。
その牙はロックではない、大きな生き物に突き刺さった。
フォースドラゴンに変身したファルクだった。
HP・体力・力が1.5倍となるフォースドラゴンに変身したことで、キングベヒーモスの攻撃を耐え切るファルク。
【光輝の壁】も間に合ったようだが、それでも4割ほどのHPを削られた。
「ファルクさん!」
硬直の解けたロックが叫ぶ。
ファルクはロックの声には反応せず、突然現れたドラゴンに驚きを隠せないベヒーモスに噛み付く。
目的はダメージではなく、動きを止めること。
その意図にロックが気付いた。
「【スキルスナッチ】!」
遅れて気付いたスレイプニルだが、魔力が枯渇していたため素早く移動するスキルが使えず間に合わない。
『どのスキルを奪いますか?』
打開策が思い浮かばないまま状況は悪化していく。
ファルクは【再生】スキルを持っているためスレイプニルから受けたダメージは回復してきているが、相手にダメージを与えることができていない。
[武技]で範囲攻撃を繰り出しているものの、九色鹿の魔法ですぐに回復されるのだ。
考えているうちに、また1体の分裂体がベヒーモスによって倒された。
(もう分裂体を増やせない…。
くそっ!
どうしたら…!!)
「ロック!
焦るんじゃねえぞ!」
ロックの焦りを感じたファルクが大声で呼びかける。
スキルやステータスはロックが大きく上回っていても、戦いの経験はファルクの方がはるかに多い。
「ファルクさん!
でも、このままじゃ…!」
「この馬は植物を操る強えスキルを持ってた!
でもほとんど使ってねえ!」
「え?
な、なんで…?」
「お前のスキルを奪う能力を【分裂】で防ぐことが優先だからじゃねえのか!?」
「!!
そ、そうか!」
(あの馬のモンスターは今の今まで、【分裂】しか使ってなかった。
あのすごい速さで移動するスキルや植物を操るスキルを使わなかったのは…、魔力を使うから…!
分裂体が生み出せなくなるのは、僕だけじゃない!)
「おおお!!」
「ファルクさん!?」
ファルクが九色鹿に猛攻を仕掛けはじめた。
スレイプニルがそれを防ぐためにスキルを使っている。
さらに、攻撃により九色鹿は【挑発】を使う余裕がなくなった。
「俺がこいつの魔力をさせる!
分裂体の方は…、頼んだぞ!」
「……!
わかりました!!」
(キングベヒーモスの相手を分裂体にさせてるうちに、馬の分裂体を…。
……いや、僕が抜けたら一気に分裂体はやられる。
そうすると馬の分裂体を減らす時間を稼げない…。)
ロックは意を決して、キングベヒーモスにあてていた4体の分裂体をスレイプニルの分裂体へと向かわせた。
「ロック!?」
それを見たファルクが焦りの声を出す。
まさかロックが1人でキングベヒーモスの相手をするとは思っていなかったのだ。
「大丈夫です!」
キングベヒーモスの攻撃力と素早さがロックを上回るのは【噛み砕き】の時だけ。
常に動き回り的を絞らせなければ、時間を稼げるはず。
攻撃をもらってしまうと当然大きなダメージを受けるが、それでも分裂体へのダメージから予想すると、2回は耐えられる。
ミラの【光輝の壁】がうまく守ってくれればダメージは半減するが、キングベヒーモスのスピードに合わせるのは困難だろう。
我慢比べのような戦いが始まった。
ロックとファルク以外のメンバーが戦っている場所の戦況は、4体の分裂体が増えたことで大きく優勢に傾いた。
ロックが1人でキングベヒーモスと戦っている姿も当然見えているため、みんな目の前の敵を1秒でも早く倒そうと攻撃の手を限界以上に早めたおかげでもある。
他のモンスターや魔族を庇うように動くため、スレイプニルの分裂体がどんどんその数を減らしていく。
スレイプニル本体が動くと九色鹿がファルクに倒されてしまうため、本体は加勢にいくことができない。
魔力が切れたようで、素早い移動も【柳力花攻】による攻撃もできなくなっている。
九色鹿は他の仲間を回復する余裕はあるのだが、集中して攻撃を受けているのが回復を受け付けないスレイプニルの分裂体のためどうすることもできない。
優勢に進んでいた…、のだが。
ここでバフが切れてしまった。
敵を含めたほとんど全員がバフをかけなおしたが、ロックとファルクだけはミラと離れていたため切れたままとなってしまった。
2人ともステータスが相手を下回った状態での戦いに。
しかし、2人が持ち場を離れてしまうとまた戦況が一気に悪くなってしまう。
それでも戦況はまだ有利だとロックは考えていた。
スレイプニルの分裂体が3分の1ほどになっていたからだ。
このままスレイプニルの分裂体を殲滅し、自分の分裂体をキングベヒーモスと九色鹿・スレイプニル本体に対して配置すれば、押し切れる。
そう考えるロックは、重要なことを忘れていた。
対峙するキングベヒーモスから、圧倒的なプレッシャーがほとばしる。
「…っ!!
しまった!!!」
キングベヒーモスのスキル【威圧】がロックを襲い、身体の自由を奪った。
最近の戦いでは常に相手のステータスを上回っていたが故の油断。
あまりにも…致命的な油断だった。
「ははっ!
くたばれ!!」
「ぐあっ……!!」
キングベヒーモスがロックに凶悪な牙で噛み付く。
「ロック!!」
ファルクがキングベヒーモスに斬りかかるが、【深淵の闇】でダメージを飲み込むため意にも介せず、2人から悠々と距離をとる。
そこにスレイプニルも加わった。
ステータス差は大きくないので、ロックの硬直はすぐに解けた。
「大丈夫か!?」
「ええ…。
ミラが【光輝の壁】で守ってくれたようで…。
ただ、次もし【光輝の壁】が間に合わなければ、持ち堪えるのは無理そうです…。
間に合っても、耐えられてあと2発…。」
「まずいな…。」
「一度分裂体にここを任せてみんなと合流しましょう。」
「そうだな。」
だがみすみす獲物を逃がす相手ではなかった。
再び【威圧】を放つ。
その兆候を察し避けようとするロックとファルクだが、ロックは傷が深く、一瞬反応が遅れてしまう。
またもや硬直するロック。
そこに襲い掛かろうとするキングベヒーモス。
「くっ…!」
身体が動かず無防備なロックを噛み砕こうと迫るキングベヒーモス。
その牙はロックではない、大きな生き物に突き刺さった。
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ファルクはロックの声には反応せず、突然現れたドラゴンに驚きを隠せないベヒーモスに噛み付く。
目的はダメージではなく、動きを止めること。
その意図にロックが気付いた。
「【スキルスナッチ】!」
遅れて気付いたスレイプニルだが、魔力が枯渇していたため素早く移動するスキルが使えず間に合わない。
『どのスキルを奪いますか?』
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