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第四章 世界中が敵

第170話 【大賢者】

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2日後、辺りが薄暗くなってきた頃に地図に書かれた孤島へ到着した。

孤島といっても、それなりの広さがあるようだ。

「着いたようだけど、その男の人ってどこにいるんだろ?」

「人が住んでる気配はなさそうよね。」

「う~ん。」

ファルクに島をぐるっと回ってもらい、上空から探すロックたち。

「あっ!
 あっち!」

ミラが【気配察知】で誰かを感知したようだ。

少し離れた場所に着陸し、歩いて近づく。


歩いた先の森の中に、小さな小屋があった。

「こんな孤島に1人で住んでるの?」

「一体誰が住んでるのかしらね…。」

小屋に近づき、ドアをノックしようとするロックたち。


「誰だ!」


その時、後ろから突然大声で怒鳴られた。

一斉に振り返る。

そこには、長い髪を束ね、髭を生やした40代か50代くらいの中年男性が立っていた。


「こんなところに何しにきた!?」

「あ、あの、突然すみません。
 ジョセ大臣に紹介されてきました。」

「ジョセ…だと…!?」

「はい。
 この場所に行ってみるよう、地図を貰いまして…。」

「あいつの紹介か…。」

「はい。
 話を聞いていただけますか?」

「…嫌だね。」

「え?」

「嫌だと言ったんだ!
 さっさと帰れ!」

「少しだけでも話を聞いてください!」

「なんで俺が話聞かなきゃなんねえんだよ!
 どうせ自分勝手なロクでもねえ話だろうが!」

「そんなことは…」

「黙れ黙れ!
 人と関わんのが面倒臭えからわざわざこんなとこに住んでんのに、あのクソ大臣、場所をバラしやがって!
 教えなきゃよかったわ!」

「ちょっとくらい話聞いてくれてもいいじゃない!」

ミラがぷりぷり怒って言い返した。

「うるせえ!
 文句があるならさっさと帰れ!」

「そんな言い方しなくてもいいだろ!
 せっかく遠くから訪ねてきたんだぞ!」

ファルクも我慢できなくなったようだ。

「そんなこと頼んでないわ!
 勝手に来といて恩着せがましい!」

男はどんどん不機嫌になる。

「ジョセ大臣は!」

言い合いになりそうな状況を、ロックが大きな声で制す。

男も何事かとロックの方を注視する。

「ジョセ大臣は…、殺されました…。」

「な、なんだと?
 死んだんじゃなく…、殺されたのか?」

「…はい。
 ガウス将軍に…、殺されました。」

「将軍に!?
 一体何が…。」

「話を…聞いていただけますか?」

「…チッ。
 しょうがない。
 …入れ。」

「ありがとうございます…。」

ロックたちは小屋の中に入れてもらえた。


「で、何があったんだ。
 おい先短いあいつがなんで殺されたんだ?」

「はい。
 実は…。」

ロックは今までの経緯を話した。


自分たちが帝国の方針により、保護・育成されるために集められたこと。

将軍により、不遇なスキルを持っている人材は切り捨てられていたこと。

魔族と戦い、仲間が連れ去られたため、魔王城へ乗り込んだこと。

そこで知った事実---魔王を倒しても魔物はいなくならないこと。

魔王を超える存在がいたこと。

魔王城から帰ると殺人の容疑で指名手配されていたこと。

真実を知るために帝国のジョセ大臣に会いに行き、その後不正を暴かれた将軍により大臣が殺されたこと--。


男は黙って話を聞いていたが、しばらく考え込んだあと、口を開いた。

「まああんだけ人にズバズバ物を言うジジイだったから、いつか刺されるぞ、なんて冗談言ってたが、本当にやられるなんてな…。
 気の合う数少ないじいさんだったんだがな。」

「帝国の大臣とそんなに近い間柄なんて…、あなたは一体…。」

「俺か?
 …俺は、…大賢者だ。」


「「「「大賢者…さま!?」」」」
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