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第三章 魔王の真実

第117話 アルカトル防衛戦③

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「A級モンスターがきたよ!」

ミラをはじめ【気配察知】を持つ冒険者たちが、A級モンスターの気配を捉えた。

上空を数体のモンスターが滑空してくる。

ライオンと鷲の合成獣、A級モンスター グリフォンだ。


「グリフォンだー!!
 優先して倒せーー!!」

グリフォンは【光輝の壁】【上級特殊魔法】のスキルを持っており、ミラと同様に味方の戦力、主に防御面を大幅にUPする。

ダートでも同様であったが、敵を倒す速度が落ちると数で劣る冒険者側はどんどん劣勢となる。

優先して倒したいところだが、空を飛んでいるために攻撃手段が限られる上、【光輝の壁】によってダメージは半減。


ロック・ティナ・ミラとリッチェルの4人は本陣を離れ、A級モンスターの迎撃に移行した。

“遊撃部隊” の出番である。

リッチェルは別のA級冒険者にチームの指揮を委任している。

まずはロックの分裂体を数体自分たちの周りに配置し、安全を図る。


ティナは弓の[武技]でグリフォンを狙い撃つ。

ミラのバフがかかった状態で単体攻撃の[武技]を使うことで、A級モンスターでも2発の矢で倒すことができる。

…計算上は。

相手も直撃を避けたり、何より【光輝の壁】があることでダメージが半減し、倒し切ることは難しい。

倒すよりも、相手の行動の阻害を目的としてティナは攻撃を仕掛ける。


ミラは【気配察知】でA級モンスターを警戒しながら、適宜バフやシールド、回復を行う。

複数の敵に効果のある【上級特殊魔法】の状態異常魔法[ダークネス]も使い、敵の戦力を削ぐ役割も果たしている。

他の状態異常魔法は単体にしか効果がないので、今回のような大規模の戦いでは使い所が難しい。


【神の恩寵】をコピーしたリッチェルはロックたちのMPを回復しつつ、ティナとミラを守りながら戦っている。


ロックは分裂体でモンスターを攻撃をしているが、ロック自身、本体の役割は、スキルを奪うこと。

ティナには離れたところにいるグリフォンを狙ってもらい、近くにいるグリフォンが【光輝の壁 】や【上級特殊魔法】を使うために近づいてきたところで【スキルスナッチ】を発動させている。

グリフォンの持っているスキルを渡すことになっているA級冒険者たちはロックたちの近くに陣取っており、スキルを奪ったら順次渡していった。

スキルを奪ったグリフォンは他の冒険者に任せ、次のスキルを奪える位置に移動していく。


モンスター側にとってグリフォン数体では戦況をよくするどころか、相手に強力なスキルをプレゼントしてしまっている状況だ。

数体ずつ来てくれるのであれば、犠牲者を出さずに乗り切れそうである。


が、現実は甘くない。


先程の数倍のグリフォンが空から迫ってくる。

「A級モンスターの気配がたくさん!
 何十体かいっぺんにくるよ!」

そして、陸からも。


ゾシメズの山道のモンスターたちはBランクだけでなくAランクも変化球的なスキル構成をしている。

アモンというモンスターはダートでも苦戦した、スキルを封じる【人を呪わば穴二つ】を持っている。

とはいえ、レベルが自分より低い相手にしか効力がないスキルなので、S級冒険者はもちろん、A級冒険者でもレベル60~62くらいの者しかスキルを封じられたことはないらしい。

しかし、それ以外のスキルが強力で苦戦を強いられるそうだ。



++++++++++++

【深淵の闇 ★★★★】・・あらゆるダメージを飲み込む。そのダメージを闇球に変化して攻撃できる。HPの2倍以上のダメージを蓄積すると、HPが1になりしばらく硬直する。

++++++++++++



スキルを封じて身動きが取れなくなっても、全てのダメージを吸収し、黒い球状の魔力弾、”闇球” を放って攻撃してくる。

短時間で集中して吸収量以上のダメージを与えねばならず、闇球の放出に間に合わなければ手痛いダメージをくらってしまう。


ロックたちはグリフォンへの対処をしながら、アモンを探していた。

リッチェルが身を引きちぎられる想いで【ラッキースケベ】と入れ替えることを選んだスキルが、【深淵の闇】だったのだ。

このスキルはダメージ蓄積量の見極めが非常に重要で、もともと持っている【見切り】との相性がいいとリッチェルは判断した。

【見切り】も入れ替えることを考えたが、スキルにも熟練度があり、全てを変えてしまうことはかえって戦力を落としかねない。

【見切り】に慣れているリッチェルは、このスキルがなくなることで一時的にかもしれないが通常よりも攻撃を読めなくなってしまう可能性がある。


「<スキルスナッチ>!」


アモンとの遭遇に時間はかからなかった。

ロックは【深淵の闇】を奪い、リッチェルの方を向く。

今から【ラッキースケベ】を失わせないといけない、そう思うとスキルを与えることをためらってしまう。

(いつか…、【ラッキースケベ】を持つモンスターを見つけて、きっと元に戻しますね…。)

(…信じているよ…。)

声に出さずとも、奇跡的に気持ちが通じ合った2人。

実にくだらない。




『どのスキルを誰に与えますか?』


「【深淵の闇】…。」


『【深淵の闇】スキルを に与えます。』




『【深淵の闇】スキルを受け取りました。どのスキルと入れ替えますか?』


「…【ラッキースケベ】。」


『【ラッキースケベ】スキルはなくなりますが、よろしいですか?』


「…。」


『【ラッキースケベ】スキルはなくなりますが、よろしいですか?』


「…ああ…。」


『【ラッキースケベ】スキルと【深淵の闇】スキルを入れ替えました。』



こうして…、リッチェルは大事なスキルを失った。
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