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第三章 魔王の真実

第115話 アルカトル防衛戦①

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「…きたか。」

アルカトルの街にモンスター襲来を知らせる警鐘が鳴り響く。

準備をしていた冒険者たちが配置へついていく。

わかっていたとはいえ、かつてない敵の戦力に、冒険者たちは動揺を隠せない。


想定されるモンスターは
 ・Aランク 120~180匹
 ・B・Cランク 1200~1800匹

対して冒険者の戦力は
 ・Sランク 4人
 ・Aランク 約100人
 ・Bランク 約1000人


数の上では圧倒的に不利ではあるが、基本的にはダートと同じように全方向から侵攻してくることはできない。

侵攻してくるのはモンスター生息域の方角からであり、そのルートはスキルにより防衛しやすいように地形を変化させてある。

とはいえ、モンスターを完全に防ぐような大きな変化はできないので、もともとある地形を活かしながら変化させている。

モンスターの中にも同じスキルを持つ種はいるが、それだけの地形変化でも多くの魔力を持つ物がかなりの時間をかける必要があるため、侵攻中に崩されることはない。

また、ダートのように上に登って戦えるような岩山はないが、要塞の上から遠距離攻撃を行えるようになっている。


要塞があるとはいえモンスターが街を襲うことを優先して攻めてきていたら、突破されてしまうだろう。

しかし、魔族たちの目的は冒険者を攫うこと。

要塞を突破してまで街へ行こうとするモンスターは多くない。

いかに死者を出さずに、モンスターを倒すか。

それが冒険者たちに課せられた戦いである。


しかし、それは非常に困難な戦い。

そして、無情にもモンスターたちが近づいてくる。

牛と蜘蛛の交わった風貌の牛鬼や、ライオンとサソリが混じっているパズズなど。

B級モンスターが中心に先陣を切って冒険者たちに迫ってきた。


「みんなーーーー!!!
 死ぬんじゃねえぞーーー!!!」

グリゴリーが自分のチームを鼓舞している。

他のチームもそれぞれのやり方で、モンスターと戦う覚悟を決める。


ただ、アッサールのチームだけは様子が違った。

アッサールがただ1人、モンスターの群れへ突っ込んでいく。

アッサールのチームのリーダーを実質的に務めるのは、別のA級冒険者だ。


これがアッサールがいる時の第一手。

バーサーカーで敵味方問わず攻撃してしまうアッサールは、単身特攻をする。

そして、アッサールがある程度離れてから弓や魔法部隊が攻撃を開始するのだ。


(アッサールさん…!)

スキルの入れ替えを拒んだアッサールに対して複雑な気持ちを抱えるロック。

今回は【分裂】スキルを持つロックがいるため、ロックの分裂体も特攻した。


「うおおおおーーーーー!!!」

モンスターを倒しながらある程度進んだところで【バーサーカー】を発動するアッサール。

バフは効果を発揮しないらしいが、それでもステータスが約1.8倍になっている彼は、斧の[武技]でモンスターを蹴散らしていく。

レベルが80を超えるアッサールは、B級モンスターなら一撃で倒してしまう。

ダメージを受けても【再生】がそれ以上の勢いで回復していく。

ギルマスは心配していたが、B級モンスター相手なら1人でなんとかしてしまいそうだ。

[武技]の範囲攻撃により、彼の周りのモンスターはどんどん数を減らしている。


ロックも負けていない。

バーサーカー状態のアッサールほどではないが、基本ステータス値が限界突破しているロック。

分裂体はバフによりアップした魔力により、15体にも及ぶ。

スキルや武技を発動できず、バフも効果がない代わりに、デバフや状態異常にもかからない。

ダート同様、範囲内の仲間のMPを回復させるスキル【神の恩寵】を持っている冒険者がおり、その近くにいるためMP切れの心配もない。

かなり強力なので、モンスターのスキルを奪ったら【分裂】を残し、【剣聖】と入れ替える予定だ。

ロックの分裂体は二撃で1体のペースでモンスターを倒していく。


アッサールやロックの分裂体をすり抜けて接近してくるモンスターたちに向けて、弓での攻撃が開始された。


その中にはリッチェルの姿も。

【弓聖】をコピーし、[武技]でダメージを与えていく。

なんでもそつなくこなすことができ、今まで多くのスキルをコピーしてきたリッチェルは、大体の武器を扱うことができ、攻撃魔法も使うことができる。

彼のユニークスキル【スキルコピー】には突出した強さはないが、戦術の幅を広げることができるのだ。


矢の雨が降り、確実にモンスターの数を減らしていく。

ただ、空を飛んでくるモンスターにも対応するため、攻撃が分散してしまう。

とてもじゃないが、数の暴力を止めることはできない。


さらに近づいてきたら、攻撃魔法の出番だ。

しかし、【ミラーシールド】を持つモンスターもいるため、タイミングが大事だ。


「[極炎鳥]。」


大きな鳥の形をした炎が、モンスターに向かって飛翔していく。

S級冒険者セアラの魔法だ。

攻撃魔法は使い手のイメージとスキルのすり合わせで発動する。

彼女の魔法は生き物を象っているものが多い。


「「「ぐぅぁぁあぁああ!!!」」」


1発の魔法で数十体のモンスターたちが絶命していく。

魔力の差が大きいと、【ミラーシールド】でも跳ね返すことはできない。

杖術などによる増加も魔力の差としてみられるため、セアラの魔法を跳ね返せる敵はほとんどいない。

そのため、セアラは【ミラーシールド】を使えるモンスター、ハンババを中心に攻撃をしている。


弓で攻撃していたリッチェルは【上級攻撃魔法】をコピーし、魔法攻撃に切り替えている。


合成獣たちに遠距離攻撃する者はいないが、もう少し近づくと状態異常のスキルを使ってくる。

その距離はもう、目前。

冒険者たちは回復役を含んだ数人のパーティ単位で迎え撃つ。



冒険者本隊とモンスターの衝突が、始まる。
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