レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第二章 美少女とはじめる、むっつりスケベの冒険

第45話 欠落した蜘蛛④

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「よくやった。
 ブリッド!」


盗賊のボスがそう言い放ち、渡されたものを握って何かを念じ始めた。

魔法かと警戒したロック。




そのロックの体が、動かなくなった。


…いや、動くが、ものすごく遅い。

まるでスローモーションだ。


「ロック!?」

駆け寄ろうとするティナを盗賊が数人がかりで抑える。

「ティ、ティナ…。」

ロックは声を出すこともままならない。


ブリッドが今までとは違う、下劣な笑みを浮かべて話し出した。

「わかってるんだよ。
 お前らのチーム、強いのはロックだけで、ティナは平均的なD級冒険者だってな。
 俺の【気配察知】は強さが分かるからな。」

「ロックに何をしたの!?」

「昨夜テントを俺と同じのにしたろ?
 誰がわざわざ野郎と一緒にしたいと思う?」

「なんのこと?!」

「これさ。」

盗賊のボスが手を開き、握っていたものを見せつけた。


しかし…、見えない。


「見えないか?
 そうかもしれんな。


 これは、髪の毛だよ。」

「髪の毛?」

「わしのスキルは【呪怨】。
 相手の体の一部を媒体に呪いをかけるスキルだ。
 ロックとやらの髪の毛を使って、”素早さを1”にしている。」

「じゃあもしかして、盗賊の人たちの身体の一部がないのは…。」

「そう。
 「欠落した蜘蛛」のために働き、情報を漏らそうとしたら死ぬよう呪いをかけている。
 それだけ強い呪いをかけるには、髪の毛なんかじゃ力が弱くてな。
 …この呪いも短時間しか持たん。

 指や耳、眼なんかを媒体にしている。」

「眼?
 じゃあもしかして…!?」

「その通り。」

ブリッドが眼帯を取り外した。

「この眼はマークとの冒険中に失ったわけじゃない。
 あの時の傷なんて、下級回復魔法で治る程度の軽い傷だった。

 「欠落した蜘蛛」に入るために差し出したんだ。」

「なんでこんなことを!?」

「お金は欲しいが、ロックは手強そう。
 それなら呪いをかけて、さらにティナ、君を人質にとり、アジトにいるみんなで集中攻撃しようという作戦だよ。」

「マークさんは仲間じゃなかったの!?」

「あ~、あいつか。
 あいつは昔馴染みだったんだが、★1の将来のないスキルだけでね。
 俺は2つ持ちの上、1つ目が★3だったからあいつと違って将来有望。
 優越感に浸りたくてパーティを組んでやったんだよ。

 ただ、弱いくせに人望だけはあるやつでね。
 イライラしたよ。
 
 しかも、俺の2つ目のスキルが覚醒した時。
 2つ目のスキルは【脱兎】っていうスキルだったんだ。
 逃げ足が速くなるっていう使えないスキルさ。
 
 俺はあいつにそれを知られたくなかった。
 見下されたくなかった。
 だから、パーティを一方的に解散したんだ。
 
 その後すぐ、このボスに声をかけられた。
 【脱兎】は戦闘以外の移動手段としては優秀なスキルだ。
 馬車で2日かかるところを2時間で往復できる。
 それと【気配察知】の能力を買われて参入したってわけさ。」

「あなたがスパイだったんですね…。」

「そうだよ。
 楽してお金手に入るし、冒険者どもはおだてればすぐに情報をくれる。
 みんなが手の上で踊ってるというのは優越感を感じられて、最高だよ!」


スパッ。


「ぐっ…。」

ブリッドがおもむろにロックに近づき、切りつけた。

「ロック!!
 ブリッドさん、やめて!!」

「なんでこんなにベラベラしゃべったと思う?


 死んだ人間は喋れないからだよ。

 もっともティナ、君は呪いをかけて、「欠落した蜘蛛」のおもちゃになってもらう予定だけどね。」

「ゲヘヘ。」

ブリッドをはじめ、盗賊たちがいやらしい顔で、薄汚く笑う。

(何言ってるんだ!!
 ティナをいやらしい顔で見ていいのは僕だけだ…!!)

「ふざ…けるな!
 絶…対、ゆる…さない!」

「ふふん。
 素早さが1だと話すことすらままならないのに、どうするつもりだ?

 この美しさに、抜群のスタイル。
 みんな喜ぶだろうな~。
 この大きな胸も大勢の男たちに弄ばれるんだよ!」 

「うっ…。」

話しながらティナの方に近づいていたブリッドが、ティナの豊満な胸を鷲掴みする。


「!!!
 ブリ…ッド!!
 やめ…ろ!!!」

「やめてください…、だろ?
 どっちにしてもその願いは聞けないがな。

 俺はスパイという立場上ブレスレットの色を黒くするわけにはいかない。
 残念だが、君をいたぶる役目は他のメンバーたちに譲るよ。
 
 君がいかに強くても、動けない身体で、この人数、しかもC級冒険者だったメンバーも何人かいる状況ではどうしようもないだろう?

 ねえ、ボス。」

「ああ、S級冒険者だろうがどうしようもないだろう。
 
 お喋りはおしまいにしよう。
 呪いの時間もあと少しだ。


 やれ!
 
 お前たち!!」


「やめて!!
 
 ロック…!!!」

悲痛に叫ぶティナをロックは強い眼差しで見つめる。

ティナは唇をぎゅっと噛み締め、そして顔を背ける。


「死ねえぇぇぇええ!」


ロックを取り囲む盗賊たちから、一斉攻撃が放たれた。
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